21 / 79
22 桜並木の攻防2
しおりを挟む
蹲る男の後頭部目掛けて天国の拳を振り下ろそうとしたその時、里香さんの悲鳴がした。慌ててその方向を見ると大男が彼女の腕を掴んでいる。それは喫茶店で見た黒タンクトップのスキンヘッド大男だった。
まだ、矛は一回、盾は三回残っている、俺は全力疾走で里香さんのもとへ戻るとそのままの勢いで男に殴りかかろうとしたが、そいつは慌てて彼女を盾にした。
「参った、参った、降参だ。強いねえ、君。このまま俺達を見逃してくれたら彼女には何もしないからさ」
男はヘラヘラ笑いながら里香さんの腕を掴んだままで言った。人質にされた里香さんに怯えた表情はなく、案外冷静な顔でこちらを見ているので、俺も慌てふためかずにいられた。
「兎に角、彼女を放してくれ」
「向こうの二人が逃げ終わってからだ」
大男が倒れた二人組の方を見ながら俺に言った。今なら普通にこいつを一発殴る事も出来そうだが、万が一、里香さんが怪我をするような事態になる事を避けるために我慢した。
二人組の方を見ると、長髪の一人が小刻みに震えながらも、気絶している金髪の男をなんとか起き上がらせようとしているのが判った。
あいつらを待っていたら、日が暮れてしまう。
「おい、あんたも一緒に助けてやった方が良いんじゃないのか? 俺がやっておいて言うのもなんだけど、あのプルプル震えてる奴相当苦しそうだぞ」
俺が大男に言うと、里香さんが吹き出して笑った。
この状況の中、笑えるなんて度胸があるなと感心した瞬間、大男は彼女を俺に目掛けて突き飛ばして逃げた。
彼女を両手で受け止めた後、一度ギュッと抱きしめようか迷ったが、拒絶されると二度と立ち直れそうにないので、止めておいた。
「怪我は無さそうだね。しかしあの状況でもよく落ち着いていられたね」
「ハルくんが冷静だったから、絶対助けてくれると思って。フフ、あれ? ホッとしたら急に怖くなって」
里香さんは震えてしゃがみ込んだ。しゃがみこんだ彼女のつむじを見ていると、あの男を地獄で一発殴りたい衝動に駆られた。
俺の足なら今からでも余裕であの男に追いつく事が出来るだろう。が、里香さんをこのままおいて行くわけにもいかない。それに里香さんのアパートに戻る方向で、やっと気絶から目を覚まし痛みに悶えている金髪とまだ痛みに苦しんでいる長髪がいる。
男達のもとに行き免許証を取り上げた。次に、男達の携帯を取り上げ電話番号を確認して返した。
その間、男達は怯えた眼をしてうめき声も出さずに完全無抵抗を貫いた。余程地獄が身に沁みたのだろう。
結局、彼らの狙いは判らなかったが里香さんを守る事は出来た。それに大男たちから免許証と携帯番号を奪う事にも成功した。
橋を渡り、里香さんのアパートに帰り着くと、最後に念願の彼女と携帯番号を交換した。
長かった、本当に長い道のりだった。やっと、遂に里香さんの携帯番号を手に入れた俺は感無量になった。
「何かあったら電話してよ。直ぐに駆けつけるよ。二十四時間、年中無休だから、ハハハ」
俺は少しおどけて言った。
「何も無かっても、掛けたりして、フフ」
彼女が悪戯っぽく笑った。
瞬間、俺の中にビッグバンが起こった。彼女の笑顔は冷静に見つめるには可愛い過ぎた。危うくその勢いで抱きしめて告白しそうになったが、何とか理性を取り戻し踏みとどまった。ストーカー退治に来たのに痴漢で捕まっている場合ではない。
明日、大学に行く時間に遅れないよう、迎えに来る事を約束して、名残惜しいが笑顔で別れた。
まだ、矛は一回、盾は三回残っている、俺は全力疾走で里香さんのもとへ戻るとそのままの勢いで男に殴りかかろうとしたが、そいつは慌てて彼女を盾にした。
「参った、参った、降参だ。強いねえ、君。このまま俺達を見逃してくれたら彼女には何もしないからさ」
男はヘラヘラ笑いながら里香さんの腕を掴んだままで言った。人質にされた里香さんに怯えた表情はなく、案外冷静な顔でこちらを見ているので、俺も慌てふためかずにいられた。
「兎に角、彼女を放してくれ」
「向こうの二人が逃げ終わってからだ」
大男が倒れた二人組の方を見ながら俺に言った。今なら普通にこいつを一発殴る事も出来そうだが、万が一、里香さんが怪我をするような事態になる事を避けるために我慢した。
二人組の方を見ると、長髪の一人が小刻みに震えながらも、気絶している金髪の男をなんとか起き上がらせようとしているのが判った。
あいつらを待っていたら、日が暮れてしまう。
「おい、あんたも一緒に助けてやった方が良いんじゃないのか? 俺がやっておいて言うのもなんだけど、あのプルプル震えてる奴相当苦しそうだぞ」
俺が大男に言うと、里香さんが吹き出して笑った。
この状況の中、笑えるなんて度胸があるなと感心した瞬間、大男は彼女を俺に目掛けて突き飛ばして逃げた。
彼女を両手で受け止めた後、一度ギュッと抱きしめようか迷ったが、拒絶されると二度と立ち直れそうにないので、止めておいた。
「怪我は無さそうだね。しかしあの状況でもよく落ち着いていられたね」
「ハルくんが冷静だったから、絶対助けてくれると思って。フフ、あれ? ホッとしたら急に怖くなって」
里香さんは震えてしゃがみ込んだ。しゃがみこんだ彼女のつむじを見ていると、あの男を地獄で一発殴りたい衝動に駆られた。
俺の足なら今からでも余裕であの男に追いつく事が出来るだろう。が、里香さんをこのままおいて行くわけにもいかない。それに里香さんのアパートに戻る方向で、やっと気絶から目を覚まし痛みに悶えている金髪とまだ痛みに苦しんでいる長髪がいる。
男達のもとに行き免許証を取り上げた。次に、男達の携帯を取り上げ電話番号を確認して返した。
その間、男達は怯えた眼をしてうめき声も出さずに完全無抵抗を貫いた。余程地獄が身に沁みたのだろう。
結局、彼らの狙いは判らなかったが里香さんを守る事は出来た。それに大男たちから免許証と携帯番号を奪う事にも成功した。
橋を渡り、里香さんのアパートに帰り着くと、最後に念願の彼女と携帯番号を交換した。
長かった、本当に長い道のりだった。やっと、遂に里香さんの携帯番号を手に入れた俺は感無量になった。
「何かあったら電話してよ。直ぐに駆けつけるよ。二十四時間、年中無休だから、ハハハ」
俺は少しおどけて言った。
「何も無かっても、掛けたりして、フフ」
彼女が悪戯っぽく笑った。
瞬間、俺の中にビッグバンが起こった。彼女の笑顔は冷静に見つめるには可愛い過ぎた。危うくその勢いで抱きしめて告白しそうになったが、何とか理性を取り戻し踏みとどまった。ストーカー退治に来たのに痴漢で捕まっている場合ではない。
明日、大学に行く時間に遅れないよう、迎えに来る事を約束して、名残惜しいが笑顔で別れた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
神木さんちのお兄ちゃん!
雪桜 あやめ
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます!
神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。
美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者!
だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。
幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?!
そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。
だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった!
これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。
果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか?
これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。
***
イラストは、全て自作です。
カクヨムにて、先行連載中。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる