53 / 79
53 いざ研修
しおりを挟む
会長室に着き石田会長に挨拶をした。会長はソファから立ち上がると笑顔を見せた。
「おお、どうじゃった、新しい部屋は? 」
会長が屈託なく笑う。俺は「なーにが一番乗りだ! あんたのせいで死ぬところだったよ」と言いたかったが、言えなかった。
「既に歌川さんがいらっしゃったので、コーヒーをいれてもらい、一緒に飲んできました、ハハハ」
俺は心配している会長に何とか無事でやっている様子を教えた。
「仲良くやっとるみたいじゃな、良かったよ、ワハハ」
会長は嬉しそうだ。
俺は「それもあんたの、おっちょこちょいのお陰だよ」と心の中で呟いた。
「では早速仕事を始めようと言いたいのじゃが、必要書類はもろうたが雇用契約書、就業規則、誓約書がまだじゃったな」
会長は書類を秘書の一之瀬さんから受け取り俺に渡した。
俺も書類に何も書いていないのが気になってはいたのだが中々言う機会も無かった。それに社員バッジと社員証に名刺まで貰っていたのだからあまり気にしていなかったのだが。と言うかあまり分かっていなかったのだが。
書類に目を通し急いで書き込んでいる間、会長と一之瀬さんが談笑している。俺は字が汚く見られないか、所々漢字が思い出せないのが気になりながらも集中して書こうとしたが、一点ある事に気が付きペンを持つ手が止まった。
俺の手が止まったのに気が付いた会長が説明をした。
「そこに書かれてある内容は壁画が見つかるまでの、臨時雇用と言う形になっておる。ま、契約社員みたいなものじゃな」
会長は振り返り一之瀬さんを見た。彼女は一度、会長に頷いてから俺に説明した。
「ええ壁画が見つかるまでの臨時社員と書かれておりますが、発見した後にもう一度、雇用関係の見直しであってあくまで解雇という形ではありません」
一之瀬さんは馬鹿な俺に丁寧に分かりやすく答えてくれた。
発見できなければずっと雇ってもらえるのだろうか? やはり薄々分かってはいた事だが、あくまで解雇ではないと言いながらも見直しって事はクビもあるって事だ。
俺が書類を書き終えると直ぐに一之瀬さんが受け取り部屋を出て行った。会長は出て行く彼女に「頼んだよ」と言い俺に話し始めた。
「では、まずは特別対策課の本来の仕事内容を教えよう」
「本来のですか? 」
俺は聞き返しながら会長室の壁にプリントされた壁画の写真を見た。
会長曰く、特別対策課は丘から盗み出された壁画を取り戻すために作られた部署だが、壁画を探す以外に他の部署のトラブルや問題を速やかに解決することを目的とした部署であり直接の上司は会長のみというかなりの特殊な部署なのである。
会長からの直属なので他の部署から干渉を受けずに、行動が出来るのが強みだそうだ。実際今のところは壁画探索の業務しかないのだけれども。
「これからもどんどん新人を配属する予定じゃ。今もこれからも絶賛活動中じゃ。期待しとるよ! 」
ハッキリと契約社員だと言われたこの俺にいったいどんな期待をしているのだろうか。そう思いながらも俺は会長に元気よく返事をした。
しばらくすると一之瀬さんが部屋に戻って来た。俺と彼女は今から秘書室へ行き秘書としての研修をすることになった。会長は違う秘書を伴って出掛けるようだ。
秘書室警備課なら分かるが、今は特別対策課の臨時雇いの俺に秘書の勉強は必要なのだろうか?
俺は一応、壁画が見つかるまでの契約になっているのだから。壁画が見つかった暁には秘書として雇ってくれると言うのなら話は別なのだが。
秘書室には数人の女性社員と一人の男性社員がいた。秘書課の女性社員たちと警備課の男性社員だろう。一之瀬さんは臨時の俺を彼らに正社員のように紹介した。女性社員たちも男性社員もみな感じが良い人たちだった。
秘書室を一通り案内された後、他の部屋に移り俺一人だけの為の研修が始まった。期待されているのか、されていないのか最早分からなくなってくる。
研修内容は初めに会社の歴史それから会社の概要そして最後に秘書としての仕事と心構えだ。特別対策課としての研修は無いようだ。
美人の一之瀬さんに教わるなど緊張してしまい内容が頭に入るのだろうかという俺の心配は的中した。
但し邪魔になったのは一之瀬さんの美貌ではなく歌川さんだった。
一之瀬さんに会社の歴史を教えてもらっている最中も気を緩めると歌川さんの下着姿が、均整のとれた身体が、しなやかな肢体が脳裏に鮮明に浮かび上がる。天女のようだったなあと。
「古川さん、大丈夫ですか? 」
一之瀬さんが心配そうに俺を覗き込む。
「ええ、すいません、大丈夫です」
俺は慌てて悩ましい歌川さんの下着姿を頭から振り払った。このままでは寝ても覚めても歌川さんの身体が俺の脳に映し出される。さっき会長と話していた時は大丈夫だったのに。
俺はどうにかこうにか昼休み迄、歌川さんの映像を消す事に格闘しながら何とか耐え忍んだ。
昼休みになり一之瀬さんは他の秘書課の人たちと社員食堂へ行った。一応、俺のことも誘ってくれたが、断って特別対策課の部屋へと向かった。
「おお、どうじゃった、新しい部屋は? 」
会長が屈託なく笑う。俺は「なーにが一番乗りだ! あんたのせいで死ぬところだったよ」と言いたかったが、言えなかった。
「既に歌川さんがいらっしゃったので、コーヒーをいれてもらい、一緒に飲んできました、ハハハ」
俺は心配している会長に何とか無事でやっている様子を教えた。
「仲良くやっとるみたいじゃな、良かったよ、ワハハ」
会長は嬉しそうだ。
俺は「それもあんたの、おっちょこちょいのお陰だよ」と心の中で呟いた。
「では早速仕事を始めようと言いたいのじゃが、必要書類はもろうたが雇用契約書、就業規則、誓約書がまだじゃったな」
会長は書類を秘書の一之瀬さんから受け取り俺に渡した。
俺も書類に何も書いていないのが気になってはいたのだが中々言う機会も無かった。それに社員バッジと社員証に名刺まで貰っていたのだからあまり気にしていなかったのだが。と言うかあまり分かっていなかったのだが。
書類に目を通し急いで書き込んでいる間、会長と一之瀬さんが談笑している。俺は字が汚く見られないか、所々漢字が思い出せないのが気になりながらも集中して書こうとしたが、一点ある事に気が付きペンを持つ手が止まった。
俺の手が止まったのに気が付いた会長が説明をした。
「そこに書かれてある内容は壁画が見つかるまでの、臨時雇用と言う形になっておる。ま、契約社員みたいなものじゃな」
会長は振り返り一之瀬さんを見た。彼女は一度、会長に頷いてから俺に説明した。
「ええ壁画が見つかるまでの臨時社員と書かれておりますが、発見した後にもう一度、雇用関係の見直しであってあくまで解雇という形ではありません」
一之瀬さんは馬鹿な俺に丁寧に分かりやすく答えてくれた。
発見できなければずっと雇ってもらえるのだろうか? やはり薄々分かってはいた事だが、あくまで解雇ではないと言いながらも見直しって事はクビもあるって事だ。
俺が書類を書き終えると直ぐに一之瀬さんが受け取り部屋を出て行った。会長は出て行く彼女に「頼んだよ」と言い俺に話し始めた。
「では、まずは特別対策課の本来の仕事内容を教えよう」
「本来のですか? 」
俺は聞き返しながら会長室の壁にプリントされた壁画の写真を見た。
会長曰く、特別対策課は丘から盗み出された壁画を取り戻すために作られた部署だが、壁画を探す以外に他の部署のトラブルや問題を速やかに解決することを目的とした部署であり直接の上司は会長のみというかなりの特殊な部署なのである。
会長からの直属なので他の部署から干渉を受けずに、行動が出来るのが強みだそうだ。実際今のところは壁画探索の業務しかないのだけれども。
「これからもどんどん新人を配属する予定じゃ。今もこれからも絶賛活動中じゃ。期待しとるよ! 」
ハッキリと契約社員だと言われたこの俺にいったいどんな期待をしているのだろうか。そう思いながらも俺は会長に元気よく返事をした。
しばらくすると一之瀬さんが部屋に戻って来た。俺と彼女は今から秘書室へ行き秘書としての研修をすることになった。会長は違う秘書を伴って出掛けるようだ。
秘書室警備課なら分かるが、今は特別対策課の臨時雇いの俺に秘書の勉強は必要なのだろうか?
俺は一応、壁画が見つかるまでの契約になっているのだから。壁画が見つかった暁には秘書として雇ってくれると言うのなら話は別なのだが。
秘書室には数人の女性社員と一人の男性社員がいた。秘書課の女性社員たちと警備課の男性社員だろう。一之瀬さんは臨時の俺を彼らに正社員のように紹介した。女性社員たちも男性社員もみな感じが良い人たちだった。
秘書室を一通り案内された後、他の部屋に移り俺一人だけの為の研修が始まった。期待されているのか、されていないのか最早分からなくなってくる。
研修内容は初めに会社の歴史それから会社の概要そして最後に秘書としての仕事と心構えだ。特別対策課としての研修は無いようだ。
美人の一之瀬さんに教わるなど緊張してしまい内容が頭に入るのだろうかという俺の心配は的中した。
但し邪魔になったのは一之瀬さんの美貌ではなく歌川さんだった。
一之瀬さんに会社の歴史を教えてもらっている最中も気を緩めると歌川さんの下着姿が、均整のとれた身体が、しなやかな肢体が脳裏に鮮明に浮かび上がる。天女のようだったなあと。
「古川さん、大丈夫ですか? 」
一之瀬さんが心配そうに俺を覗き込む。
「ええ、すいません、大丈夫です」
俺は慌てて悩ましい歌川さんの下着姿を頭から振り払った。このままでは寝ても覚めても歌川さんの身体が俺の脳に映し出される。さっき会長と話していた時は大丈夫だったのに。
俺はどうにかこうにか昼休み迄、歌川さんの映像を消す事に格闘しながら何とか耐え忍んだ。
昼休みになり一之瀬さんは他の秘書課の人たちと社員食堂へ行った。一応、俺のことも誘ってくれたが、断って特別対策課の部屋へと向かった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
僕《わたし》は誰でしょう
紫音みけ🐾新刊2月中旬発売!
青春
※第7回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。
【あらすじ】
交通事故の後遺症で記憶喪失になってしまった女子高生・比良坂すずは、自分が女であることに違和感を抱く。
「自分はもともと男ではなかったか?」
事故後から男性寄りの思考になり、周囲とのギャップに悩む彼女は、次第に身に覚えのないはずの記憶を思い出し始める。まるで別人のものとしか思えないその記憶は、一体どこから来たのだろうか。
見知らぬ思い出をめぐる青春SF。
※表紙イラスト=ミカスケ様
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる