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52 和解
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特別対策課の部屋まで音も立てずに戻ると、俺の鍵はドアノブに差さっていなかった。おいおい、オイ、オイ、オイ、オイ、俺の鍵ィ、おいぃぃ。
歌川さんが鍵が差さっていることに気が付いて預かったに違いない。まったく余計なことをしてくれたな。
俺は溜め息と共に特別対策課のドアをノックした。暫くしてドアが開き、歌川さんが顔を出した。
「鍵を取りに戻っていらしたんですか? 」
彼女はいつものパンツスーツ姿に着替えていた。彼女は相変わらず無表情な顔で鍵を渡してくれた。
「そうです、ありがとうございます。さっき忘れちゃって、エヘヘ」
さっきの彼女の下着姿が脳裏に蘇り恥ずかしくなった。鍵を受け取り直ぐに立ち去ろうとした俺に意外にも彼女が声を掛けた。
「会長との仕事が始まるまでまだ時間はありますね。せっかくですから中でコーヒーでもいかがですか? 」
逃げ道を塞がれる形での彼女の誘いに、俺は渋々ながら部屋の中に入った。
特別対策課の部屋には真ん中にデスクが二つ向かい合わせに設置されている。俺は資料などが置かれていない方のデスクのイスに腰掛けた。
コーヒーを待つ間、気まずさから俺はどうでもいい質問をした。
「歌川さんも随分早く出勤するんですね」
「ええ」
彼女は素っ気なく答えた。自分から誘ったのだからもう少し会話を楽しむ振りでもしたらどうだろうか?
「私も会長から昨日の夜、新しい部屋の事を伺いまして、荷物の整理と準備の為に早めに出社しました」
俺の思いが伝わったのか、彼女は説明を付け足し理由を説明してくれた。
石田会長が俺に一番乗りだと叫んでいたのは一体何だったんだろう。
気まずい沈黙が流れる中、周りを見渡すと、壁には資料棚、眺めの良い大きな窓、それから隣の部屋には更衣室が………!!!! 更衣室がある! なんと更衣室がある! 俺は更衣室が有る事に驚きの表情で歌川さんを見たが彼女は澄ました顔で俺と彼女自身にコーヒーを注いでいる。
「どうも、ありがとうございます」
俺は熱いコーヒーを一口飲み更衣室の事をどう切り出そうか考えたが、済んだことをグダグダ話すのは止めておいた。本当は彼女がブチ切れるかも知れないと思ったからだ。
先ほどの件から俺の彼女に対する見方は180度変わった。ハッキリ言って彼女はかなりの変人だろう。何をしでかしてもおかしくはない、ただならぬ雰囲気を纏っている。俺が今まで出逢った事のないタイプの人間だ。
まあ彼女の下着姿を見れてラッキーだったとは思うのだけれども。
彼女は俺の向かいに座り優雅にコーヒーを飲む。大きな部屋の中心に二つのデスクがポツンとあるこの状態。二人きりで真向かいに座るといよいよ気まずくなってきた。
俺は彼女をチラチラ見るが彼女の人形のように綺麗な顔は少しも表情を変えることなく、いつものようにゆっくりとコーヒーを味わっている。
「ハァ、やっぱり変でしたよね? さっきのこと」
歌川さんは俯き溜め息を吐いた。
「さっきのって? 」
俺が聞き返すと彼女は言い淀んだ。
「ついさっき、ここで、私が」
心なしか少し恥ずかしそうに見える。
「下着姿で部屋にいたことですか? そうですね更衣室で着替えるべきでしたね」
俺はちょうどさっき思ったことを吐き出せた。
彼女は一瞬顔を上げたがまた俯いて小さな声で話す。
「いえ、そうではなく、ええ、そうなんですが」
彼女にしては言葉が上手く話せないようでモジモジしている。
「ああ、ひょっとして下着姿なのに偉そうにしていたことですか? 」
俺は彼女の代わりに答えた。
「え、偉そうって………。はい、そうですね」
彼女は項垂《うなだ》れた。俺は項垂れる歌川さんをみて少し楽しくなった。
「ハハ、やっぱり自分でも変だと思っていたんですか? ええ、とても変でしたよ、ハハハ」
俺は笑いを堪えずに言った。今度は俺が優雅にコーヒーを飲む番だ。
「偉そうにしていたわけではないのですが、あんなところを見られてしまい、どうして良いのか分からなくなってしまって」
「そうだったんですか? 歌川さんは全然動揺しているようには見えませんでしたけど」
「恥ずかしがっては負けたようで、堂々としていたらやり過ごせるかと思って」
「ええ、やり過ごせましたね。それで、恥ずかしくはなかったんですか? 」
「恥ずかしかったです、とても」
彼女は今さら顔を真っ赤にして俯いている。
負けず嫌いで恥ずかしさを捻じ伏せるなんてこの人、流石に常軌を逸している。やはり彼女は常人では考えられない行動をとる人だ。
彼女は恥ずかしさで顔を真っ赤にして目を瞑った。
「だって古川くんがずっと必死で見ていたから」
「ちょ、ええ!? 俺? 俺は………ずっと、見て、い、たかな? いたね。うん。ごめんなさい。すいません」
俺は素直に認めて歌川さんを見ると、彼女はまだ恥ずかしそうな顔で俺の言葉をまっている。
「えっと、申し訳ございませんでした。すみません、あんまりにも………いえ」
俺は危うく言いかけて言葉を飲み込んだ。
「あんまりにも……なんですか? 」
「あんまりにも、あなたが綺麗で……」
仕方なしに正直に話したが今の言動、これじゃただのスケベ親父じゃないか、俺は。
このままでは彼女に気味悪がられてしまうだろう。
「えっ? ええっ!? コホンッ………………そうですか。じゃあ、仕方ありませんね、フフフ」
彼女は一瞬驚いたが、咳払いして呼吸を整えると優しく笑った。案外歌川さんの反応は穏やかだったことに驚いた。
彼女が俺に優しく微笑むことなど一生ないことだろうと思っていたから驚きと嬉しさで一杯になった。
俺の正直な気持ちが真っ直ぐ伝わったのだろうか? やはり彼女は良い意味で普通の人とズレている。
今、彼女は和やかな柔らかい雰囲気になっている。俺は、今しかないと思い、すかさず許しを乞うた。
「あの、許してくれますか? 」
「許すも何も、私がこの部屋で着替えていたのが悪いのですから」
彼女は笑顔で話す。俺も笑顔で返した。
俺はコーヒーを飲み終えるととても明るい気持ちで会長室へ向かった。歌川さんと少し仲良くなれた気がしたからだ。
そして彼女の変わった性格を知り少し苦手意識がなくなったからだ。彼女は中々面白い性格だということが分かって気が楽になった。
歌川さんが鍵が差さっていることに気が付いて預かったに違いない。まったく余計なことをしてくれたな。
俺は溜め息と共に特別対策課のドアをノックした。暫くしてドアが開き、歌川さんが顔を出した。
「鍵を取りに戻っていらしたんですか? 」
彼女はいつものパンツスーツ姿に着替えていた。彼女は相変わらず無表情な顔で鍵を渡してくれた。
「そうです、ありがとうございます。さっき忘れちゃって、エヘヘ」
さっきの彼女の下着姿が脳裏に蘇り恥ずかしくなった。鍵を受け取り直ぐに立ち去ろうとした俺に意外にも彼女が声を掛けた。
「会長との仕事が始まるまでまだ時間はありますね。せっかくですから中でコーヒーでもいかがですか? 」
逃げ道を塞がれる形での彼女の誘いに、俺は渋々ながら部屋の中に入った。
特別対策課の部屋には真ん中にデスクが二つ向かい合わせに設置されている。俺は資料などが置かれていない方のデスクのイスに腰掛けた。
コーヒーを待つ間、気まずさから俺はどうでもいい質問をした。
「歌川さんも随分早く出勤するんですね」
「ええ」
彼女は素っ気なく答えた。自分から誘ったのだからもう少し会話を楽しむ振りでもしたらどうだろうか?
「私も会長から昨日の夜、新しい部屋の事を伺いまして、荷物の整理と準備の為に早めに出社しました」
俺の思いが伝わったのか、彼女は説明を付け足し理由を説明してくれた。
石田会長が俺に一番乗りだと叫んでいたのは一体何だったんだろう。
気まずい沈黙が流れる中、周りを見渡すと、壁には資料棚、眺めの良い大きな窓、それから隣の部屋には更衣室が………!!!! 更衣室がある! なんと更衣室がある! 俺は更衣室が有る事に驚きの表情で歌川さんを見たが彼女は澄ました顔で俺と彼女自身にコーヒーを注いでいる。
「どうも、ありがとうございます」
俺は熱いコーヒーを一口飲み更衣室の事をどう切り出そうか考えたが、済んだことをグダグダ話すのは止めておいた。本当は彼女がブチ切れるかも知れないと思ったからだ。
先ほどの件から俺の彼女に対する見方は180度変わった。ハッキリ言って彼女はかなりの変人だろう。何をしでかしてもおかしくはない、ただならぬ雰囲気を纏っている。俺が今まで出逢った事のないタイプの人間だ。
まあ彼女の下着姿を見れてラッキーだったとは思うのだけれども。
彼女は俺の向かいに座り優雅にコーヒーを飲む。大きな部屋の中心に二つのデスクがポツンとあるこの状態。二人きりで真向かいに座るといよいよ気まずくなってきた。
俺は彼女をチラチラ見るが彼女の人形のように綺麗な顔は少しも表情を変えることなく、いつものようにゆっくりとコーヒーを味わっている。
「ハァ、やっぱり変でしたよね? さっきのこと」
歌川さんは俯き溜め息を吐いた。
「さっきのって? 」
俺が聞き返すと彼女は言い淀んだ。
「ついさっき、ここで、私が」
心なしか少し恥ずかしそうに見える。
「下着姿で部屋にいたことですか? そうですね更衣室で着替えるべきでしたね」
俺はちょうどさっき思ったことを吐き出せた。
彼女は一瞬顔を上げたがまた俯いて小さな声で話す。
「いえ、そうではなく、ええ、そうなんですが」
彼女にしては言葉が上手く話せないようでモジモジしている。
「ああ、ひょっとして下着姿なのに偉そうにしていたことですか? 」
俺は彼女の代わりに答えた。
「え、偉そうって………。はい、そうですね」
彼女は項垂《うなだ》れた。俺は項垂れる歌川さんをみて少し楽しくなった。
「ハハ、やっぱり自分でも変だと思っていたんですか? ええ、とても変でしたよ、ハハハ」
俺は笑いを堪えずに言った。今度は俺が優雅にコーヒーを飲む番だ。
「偉そうにしていたわけではないのですが、あんなところを見られてしまい、どうして良いのか分からなくなってしまって」
「そうだったんですか? 歌川さんは全然動揺しているようには見えませんでしたけど」
「恥ずかしがっては負けたようで、堂々としていたらやり過ごせるかと思って」
「ええ、やり過ごせましたね。それで、恥ずかしくはなかったんですか? 」
「恥ずかしかったです、とても」
彼女は今さら顔を真っ赤にして俯いている。
負けず嫌いで恥ずかしさを捻じ伏せるなんてこの人、流石に常軌を逸している。やはり彼女は常人では考えられない行動をとる人だ。
彼女は恥ずかしさで顔を真っ赤にして目を瞑った。
「だって古川くんがずっと必死で見ていたから」
「ちょ、ええ!? 俺? 俺は………ずっと、見て、い、たかな? いたね。うん。ごめんなさい。すいません」
俺は素直に認めて歌川さんを見ると、彼女はまだ恥ずかしそうな顔で俺の言葉をまっている。
「えっと、申し訳ございませんでした。すみません、あんまりにも………いえ」
俺は危うく言いかけて言葉を飲み込んだ。
「あんまりにも……なんですか? 」
「あんまりにも、あなたが綺麗で……」
仕方なしに正直に話したが今の言動、これじゃただのスケベ親父じゃないか、俺は。
このままでは彼女に気味悪がられてしまうだろう。
「えっ? ええっ!? コホンッ………………そうですか。じゃあ、仕方ありませんね、フフフ」
彼女は一瞬驚いたが、咳払いして呼吸を整えると優しく笑った。案外歌川さんの反応は穏やかだったことに驚いた。
彼女が俺に優しく微笑むことなど一生ないことだろうと思っていたから驚きと嬉しさで一杯になった。
俺の正直な気持ちが真っ直ぐ伝わったのだろうか? やはり彼女は良い意味で普通の人とズレている。
今、彼女は和やかな柔らかい雰囲気になっている。俺は、今しかないと思い、すかさず許しを乞うた。
「あの、許してくれますか? 」
「許すも何も、私がこの部屋で着替えていたのが悪いのですから」
彼女は笑顔で話す。俺も笑顔で返した。
俺はコーヒーを飲み終えるととても明るい気持ちで会長室へ向かった。歌川さんと少し仲良くなれた気がしたからだ。
そして彼女の変わった性格を知り少し苦手意識がなくなったからだ。彼女は中々面白い性格だということが分かって気が楽になった。
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