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お嬢と侍女

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エドワードを保護して山を降りると、ツアー客達が集合場所として使う大迷宮入口広場に、南ゴート会社の社員たちが来ていたらしく、なにやら混乱していた。

冒険者たちが叫んでいる。

「危険だから撤退したんだ!」
「怪我人が多く出たんだ! 死者はまだ迷宮の中だぞ! 遺体の回収もできていないんだ!」
「そんなに入れというなら、お前らが入れ!」
「装備を見直してから再度挑むべきだ! 事前情報と違いすぎたぞ!」

俺達の前に、アンネローゼが進み出て冒険者たちをなだめながら、南ゴート会社の社員に近づく。

「アンネローゼです。皆の言う通り、体勢を立て直してからでないと危険です。装備を見直してから、明日、再度はいりますから」

そうか。

彼女たちは仕事だから、許可なく大迷宮から出てはいかん契約なのかな?

「時間がもったいないだろう! だいたいお前らの宿泊だけでもいくらかかってると思う!? 払った金の分だけは働け!」

アンネローゼが社員と冒険者の間に入りながら、俺たちに目配せを送ってきた。

今のうちに行けという意味らしい。

たしかに。

こちとら、エド君をつれているからな。

カテリーナを先頭にこそこそと大迷宮から街へと急ぐ。

途中、勇者ランドストリートという大通りを通過していると、花火がドンドンとあがっているのが見えた。

そして、ランドから外へと出てきた客たちが拍手しながら帰路についている。

丸一日たったのか……

「ロイ!」

お嬢の声。

みると、勇者ランドのグッズを両手に抱えたお嬢とクレアがいるではないか。

勇者ランドのマスコットキャラクターである猫の着ぐるみが、ランド入口で皆を見送っていた。

「きゃぁ! マックスが手をふってる!」
「お嬢様! ふりましょう! 手をふりましょう!」

着ぐるみのどこがいいんだ?

「レイチェ、あの着ぐるみはマックスというんか?」

爺の問いに、お嬢が勢いよく振り替える。その両目は冷たく光り、頬はピクついている。

どうした?

「マックスは生きてるの!? お祖父様! 変なこと言わないで!」

着ぐるみが?

生きている?

「そうですよ、ご隠居様! マックスは生きてるんです」

クレアだ。

カテリーナが微笑む。

「そうだね? マックスも二人が来てくれて嬉しかっただろうね」

お嬢がうすら笑う。

「来た? 違います。帰ってきたんです」

もうついていかれん。

てか、お嬢は勇者ランドを好きだったのか!?

ゆ……ゆるせん!

俺を倒した勇者だぞ?

いや、そう嘘をついた女の一族が……ええい! ややこしい!

とにかく、着ぐるみを生きているとかいうおかしな状態は直してやろう。

現実直視キグルミハアツイゾ

お嬢はピクりとして立ち止まる。

「お……お嬢様?」
「クレア、これあげる」
「お嬢様!?」
「ロイ、ホテルに帰ろうねー」

抱き上げられた。

よしよし、直ったみたいだな。

世話のかかるお嬢だ。 
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