犬に生まれ変わった魔王は勇者を倒したい

ビーグル犬のポン太

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勇者に騙された男

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アンネローゼは俺たちに協力してくれると言い、爺が待つ牢獄へ。

もう夜だ。

冒険者たちは、カテリーナ王女の勇敢さと強さを讃える歌を歌いながら、酒場で待ってますといって、わざと俺たちから離れてくれた。

アンネローゼへの人望は高く、彼女が聖女として優秀だったから、彼女の頼みを彼らがきいて、知らないフリをしてくれるのだろうと思う。

アンネローゼは牢獄に、解錠しようとすればするほど施錠が強まる呪いをかけていたという。

「逆転の発想です」

頭いい。

こうして、髭のびほうだいのエド君が俺の前に立つ。

「本当に……魔王なのか?」

ここで俺達を待つ爺が、これまでのことを説明していたので話が早い。

「元魔王のビーグル犬ロイだ。忘れてないぞ、お前のド卑怯な行いを!」
「すまない……」

彼はそういうと、俺の前に土下座した。

「まさか……あんなことになるなんて知らなかったんだ……でも、まう引き戻せなかった。俺もお前を倒せば褒美がもらえる。母さんを楽させてあげられるからと自分に言いきかせて……」

爺とカテリーナが俺をみる。

そこには、この青年にも事情があったのだからという同情が込められている。

だがな。

それは殺された俺の仲間には通じない。

俺も魔王だ。

正々堂々たる戦いで敗れたならば、恨みはしない。

しかし、事情があれどもお前は俺の仲間を騙して人質にして、毒を使い、人質を盾にして俺を殺したやつらに協力したのだ!

「せめて楽に殺してやる」
「待って、ロイ」

カテリーナ、二の仲間といえども説得には応じんぞ。

「彼を殺すのはいつでもできるわ」

爺がぎょっとして王女をみた。

聖女も目を見開いている。

王女は言う。

「カレン・フォルトネラーの嘘をあばく証人として彼は必要よ」

一理ある。

「では、カレン・フォルトネラーの嘘をあばいた後は、好きにしていいか?」

俺はカテリーナを見る。

彼女はエドワードに言う。

「あなたはどうして卑怯な方法で魔王を倒したの?」
「……したくてしたわけじゃない。大迷宮に突入した時、俺は一人だった。苦労して魔王の間へと到達したところで、ぞろぞろたカレンの仲間がやってきて、魔族も捕まえていて……突入したんだ。俺は最初からあの時まで一人だった」
「あなたは関与してないのね?」
「しかし、俺が彼らを引き入れたのは事実だ」

爺が俺をみる。

「犬ころ、彼には老いた母がいる。なんとか穏便に……」
「爺、俺の仲間たちは殺された。これ以上、俺は何を言えばいいか?」
「……すまぬ」
「だが、お前たちの希望もわからんでもない。俺も立場が逆なら同じことを思うだろう。魔王、お前は復活してるんだからいいじゃないか、こいつを許してくれと……」

一同が俺を見る。

「こいつを殺したところで死んだ同胞は戻らないんだぞ、とも言うかもしれない。しかしだな、そんなものは俺には関係ないのだ」

俺はエドワードを睨んだ。

可愛いビーグル犬でも、恐い顔をするぞ?

「とにかく、カテリーナが勇者の嘘をあばくのは邪魔しないが、その後は引き渡せ」

爺も王女も、反論しなかった。

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