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王女と聖女

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聖女の治療をしないと。

俺は治癒の力は使えない。カテリーナも使えない。聖女のアンネローゼは使えるが、疲労困憊で魔力はすっからかんだという。

魔力を回復させる方法はひとつだけ。

休むこと。

たが折れた右脚のままでは休めないだろう。

カテリーナが聖女を背負う。

すまんね……今の俺に力仕事は無理なんよ……。

悪い。

「救援に来てくれている人たちに預ければ……」

カテリーナは四層から三層に続く階段をのぼる。

そこで、アンネローゼが気づいた。

「ありがとう。あなたは?」

聖女の問いに、カテリーナが答えた。

「わたしはカテリーナ。この子はロイ」
「ありがとう、カテリーナ、ロイ。わたしはアンネローゼ」
「南ゴート会社に雇われて?」
「ええ。ディアス教国では南ゴート会社との合同事業が進んでいて、大司教様からの指示でこの仕事に参加したの」
「未捜索エリアに宝物庫があるからって?」
「ええ、それと牢獄の強化。大罪人がいると聞いて」

エドワードは大罪人にされているんだな。

「実は……その大罪人を出してほしいの。彼は罠にはまった人で、悪い人ではないわ」
「……それはできない。南ゴート会社に逆らうことになる。知らないかもしれないけど、あの会社は勇者がいるフォルトネラー一族の会社なの。逆らったら反社会的だと烙印を押される」
「フォルトネラー一族はよく知っているわ。わたしはあそこにうんざりとしているのよ」

カテリーナの言葉に、アンネローゼは不思議そうだ。

「フォルトネラー一族を知ってる? あなたは?」
「わたしはインペリアルブール王国王女カテリーナ。勇者カレン・フォルトネラーの嘘をあばくためにこの島に来たの」
「お! ……おろしてください!」
「いいのよ、怪我してるのだから」
「申し訳ございません……」
「カレン・フォルトネラーはわたしの兄の妻になろうと画策しているわ……いずれ王国を自らのものにしたいのね。フォルトネラー家はもともと武器商人の家、裕福であれども王家と関係をもつのはふさわしくないとされてきた……しかしカレンは勇者として世界を救った……家格がこれで一気にあがったわ」

抗議したい。

俺は世界を脅かしたりしてないぞ! 戦いを挑まれたり、仲間を攻撃されたから戦っていただけだぞ!

「で、この犬ロイは、魔王の生まれ変わり」

言いやがった!

「王女殿下、それを信じろと言われましたも」
「あなたでも勝てない悪魔たちを前に、わたしが一人であそこまで行けるわけないでしょ? それに、悪魔王が最後、あなたを解放したのはロイのおかげよ」
「……」
「ロイ、喋ってあげて」
「元魔王のビーグル犬のロイだ」
「しゃべった……」

聖女が驚いている。

「彼いわく、彼と戦ったのはカレンではなく、牢獄にいれられている男……エドワードなのよ」
「本当なの?」

聖女の問いに、うなずく。

「顔をみて確かめた。俺を卑怯な手で倒したのはエドワードだ」
「卑怯な?」
「話すのも悔しいが……」

俺は、あの戦いで起きたことをそのまま教えてやる。

女二人は、俺のために怒っていた。

「卑怯な! 許せない! エドワードを助けるのやめようかしら」

姫さん、二の仲間にしてやろう!

「そのような手で魔王を倒したなど、恥を知るということを覚えるべきだわ」

聖女、お前は三の仲間だ!

「俺は手出しできない。だから守る一方だったが、強力な毒で魔力が弱まったしまって……」

そうか。

そのような状態で、しかも瀕死だったから、転生魔法は失敗したんだ。

三層から二層へとあがったところで、冒険者達が集まっていた。

「皆で一気に突破だ!」
「たすけにいこう!」

助けてきたっちゅーの!

カテリーナに背負われたアンネローゼが、まだ遠い彼らに声をかける。

「みなさん! わたしは無事です! インペリアルブール王国のカテリーナ殿下が助けてくださいました!」

「おおおお!!」
「無事だ!」
「殿下!?」
「インペリアルブールの!?」
「カテリーナ姫!?」

歓喜と驚きの渦へと、カテリーナはゆっくりと進んでいく。

俺にも……こうして無事を喜んでくれる仲間達がいたんだ。

俺にも……こうして讃えてくれる仲間達がいた!

許さん。

エドワード……爺の手前、すぐには殺せんが必ず仕返しをしてやる。

「誰か! 治癒師はいませんか!?」

カテリーナの声に、一人の青年が手をあげた。

聖女の怪我、これで治るな。
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