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聖なる女

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俺たちは地下都市の中で戦っている冒険者たちを助けまくった。

結構な人数が冒険していたようだ。

「助かった」
「半数はやられて……」
「南ゴート会社に雇われて奥の捜索をしてたんだ」
「宝物庫を探せと言われていたんだ」

宝物庫なら二層の隠し通路を通過しないと入れない。

隠し通路は、本当に隠しているうえに封印していたから、場所がばれなかった。でも、悪魔たちとの境界は、ここからはダメだよとわかりやすく印をして封印をかけたからすぐにばれて……封印をとくプロが解いてしまったと。

「聖女がいるんでしょう? どこに?」
「まだ下です」
「下?」

カテリーナが驚く。

冒険者の一人が言う。

「足を怪我して走れないから、俺たちに助けを呼んでくれと」
「髪の色は? 特徴は?」
「髪は金、目は緑、肌色は褐色、身長は貴女よりも高い」

なんか聖女のイメージではないな。

戦士って感じだ。

俺たちは城の奥へと進み、四層へと降りる階段をくだる。

その先に境界があるが、話を聞いた限り、聖女と護衛はさらに奥にいるようだ。

動けない聖女は魔法で護衛たちを助け、護衛たちは聖女を守り……助けがくるまでの時間稼ぎを徹底していると……。

二層を崩落させてすまんね!

四層はドワーフたちの墓地だ。

墓標がずらりとならぶ空間は、至るところに横穴が延びている。

「アンネローゼぇ!」

カテリーナが叫ぶ。

ガササササ! と音があちこちからして、悪魔たちが接近してきた。

俺が犬の姿だから、お前らは俺だと気づいておらんな?

本気だす。

火炎鞭フレイムウィップ

たちまち現れたら炎の鞭を一閃し、接近してきた悪魔たちを片っ端からなぎ払った。

耳障りな断末魔の連鎖に、耳がいい今の俺は不機嫌になる。

がるるるる……。

「ロイ! さすが!」

あ! 生き延びたやつがいるぞ! と警告するより早く、カテリーナが薙刀でばっさりとやっつけた。

「アンネローゼ! アンネローゼぇ!」

カテリーナは構わず叫ぶ。

それは、悪魔たちがこちらに引き付けられたなら、その分だけ聖女達が楽になるからだろう。

「アンネローゼぇ! アン――」
「この女、アンネローゼか?」

しわがれた声。

俺は聞き覚えがあった。

闇に溶け込んでいた真っ黒い存在は、カラスの羽根にも似た羽毛で作られたマントで身体を隠す悪魔の王だ。

ガルゴズ……。

やつは足元を指さす。

そこには、金髪の女が倒れていた。

「アンネローゼ!? 生きてる!?」
「うう……逃げて」

生きている。

だが、そこで力尽きたらしく聖女は気絶した。

「逃がさんよ。馬鹿どもがギルベールの封印を解いて入ってきやがって……こいつらは連れ帰って鍋で煮て喰う」

悪魔王の姿があらわとなる。

頭は曲がりくねった角が額に四本。目はなく鼻もなく、裂けた口には鮫のような歯がひっしりと。大男のような体格だが、メインは魔法戦だ。

俺はカテリーナの前に出た。

「ひさしぶり」
「? ……ギルベール! ギルか!?」
「犬になっちゃった……」
「転生魔法だな? お前、それ失敗だ。成功してたら龍のままだったのに」

ガーン!

失敗してたんか!

「ギル、こいつはお前の連れか?」

ガルゴズはカテリーナを指さす。

「そうだ」
「珍しいな、人間とつるむなんて……まあいい。お前の連れなら解放してやるが、代わりになにかよこせ。お前とは戦いたくないからな」

俺もお前とは戦いたくない。

代わりのもの……。

女二人に代わるもの……。

「宝物庫の場所を教える。好きなものを二つ持っていけ」

俺の条件に、ガルゴズはうなずく。

「わかった。なんでもいいんだな?」
「何を選ぶかは任せる。お前のことだ。選択は間違えないと信用している」
「交渉成立だ」

カテリーナが慎重に言葉を発した。

「彼女と一緒にいた人たちは?」

ガルゴズは聖女をこちらに蹴り転がすと答えた。

「もう喰った。この女は手強かった……手間取ってたらお前らが来て喰いそびれたよ」

間に合ってよかったと思いたいがね……。




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