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第一章
勇者は残念でならない
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「あれ、知り合いなの?」
「はい!こちらは王国魔法騎士団七将軍の一人、ナナナイさまです!
「何それ!かっこいい!」
「はいっ! この国の最強の魔法使い、それが七将軍です! かっこいいですっ!」
「ちょ、ちょっとロゼ、そんな事わざわざ言わなくても…」
七将軍。うーん、かっこいいぞ。
そういうの大好きだぞ。
しかもその一人がこんな可愛い女の子。
ゲームやラノベではそういった肩書をもつ女の子がたくさん出てくるので珍しくもないが、こうして目の前にいると感激せずにはいられないぜ。
さらに2人とも俺の生涯で出会った事のないほど素敵な髪型なのだ。
こんなに素晴らしいショートカットに出会えるなんてなぁ。異世界様々である。
しかし。
改めてナナナイの服装を見ると、やはり魔法使いよりかは剣士と言われた方がしっくりくるよな。そしてエロい。
せっかく理想的なショートカットなんだし、これで職業が女剣士だったらなぁと思うと残念でならない。
「ナナナイ?キミ、女剣士の方が向いてそうじゃない?」
「…なによ、どういう意味かしら?」
胸元で腕を組んで俺を睨むナナナイだが、その仕草も可愛いだけである。
なんつーか、可愛い子ってズルいよな。ありがとうございます。
「いやぁ、深い意味はないんだけど、魔法使いには見えないなぁって思ってさ。さっきの剣さばきも凄かったし剣士の方が似合いそうじゃん」
「人を見た目で判断しないで欲しいわね。それに魔法使いが剣を武器として使ってはいけないとでも言うの?果実を剥くのにナイフを使うな、薪を割るのに斧を使うな、全部魔法でやれとでも!?」
魔法使いに見えないと言ったことがよほど気に障ったのか、ナナナイはムキになったように言葉を重ねてきた。
そんなに怒る事かねぇ?
「まったく…ロゼ、この失礼な人は誰なの?…はっ!」
ナナナイは何かに気が付いたように身構えた。
「まさかあなた…武麗座の手の者じゃ…!」
「え?武麗座?なにそれ?」
「答えて!じゃないと…」
ナナナイの右手には剣が握られていた。
いつ抜いたのだろうか。まったく気が付かなかった。
「ちょ、なに?なんなのこれ?怖いんだけど!」
「な、ナナナイさま落ち着いてください!勇者さまは勇者さまですよ!」
「そ、そうだぜ!勇者だぜ俺が!」
「…勇者さま?どういう事?」
ナナナイはロゼの「勇者さま」発言に眉をひそめた。
そういや俺は名乗っていなかったな。
「あ、そうでした!ナナナイさま、紹介しますね!こちら勇者カツトさまです!私達が待ち望んでいた勇者さまですっ!」
「この失礼な人が勇者だというの!?」
俺を見て後ずさるナナナイ。
その声には露骨に不満が込められている。
「はい! 先ほど私の召喚に応じて来てくれたんですよ! …ええと、どこからいらしたんでしょう?」
「そうだな、キミらにとっての異世界、かな」
「異世界! カッコいいです!」
「ははは、そうだろう!」
「異世界から勇者さまを召喚…!私なんかがそんな大それた事をしてしまって…良かったのでしょうか…」
「大丈夫さ! ロゼ、キミは最高だ…特にその髪型! いかしてるぜ!!」
「勇者さま…照れちゃいますぅ」
「ちょっと待って。ロゼ、あなたが召喚を? まさか…!」
「…はい、ナナナイ様。姫様がこれを私に…」
明るかったロゼの表情が急に曇った。
なんだ?姫様?
…まぁ聞くまでもない。この国を助けて欲しいって事はお姫様にも何かあったんだろう。
ロゼがローブの袖をまくると左手首に金色の腕輪がはめられていた。
細かい装飾が施された腕輪は、ロゼのボロボロの格好には似合わない輝きを放っている。
「これは…"聖なる腕輪"!」
「"聖なる腕輪"?あ、それって召喚アイテム?」
「さすが勇者さま!良く分かりましたね!はい、この"聖なる腕輪"を使って勇者さまをお呼びしたんですよ!」
「そんな…じゃあ本当にこんな人が勇者なの!?」
ロゼには笑顔が戻ったが、今度がナナナイが思い詰めたような表情になった。
「いや、えっと、ナナナイさん? キミの方がさっきから失礼だよね!? こんな人、こんな人って」
「あ…ごめんなさい、つい思った事を言ってしまって…そうよね、あなたみたいな人でも1つくらいは良い所、あるわよね」
「謝る気ないな…」
俺がさらに文句を言おうとしたその時、ナナナイが微かに体を震わせた。
「これは…!」
「え?なに?どうしたの?」
「ナナナイさま?」
「…叫び声が聞こえたわ。誰かが襲われている!」
言うが早いか、ナナナイは駆けだした。
「え、おい!ちょっと待てよ!」
「待ってください、ナナナイさまっ!」
慌ててナナナイの後を追う俺とロゼ。
「待てって! どこに行くんだよ!」
「言ったでしょう? 誰かが襲われているって!」
「わ、私達の仲間でしょうかっ?」
「分からないわ…とにかく急ぐわよ!」
「はい!こちらは王国魔法騎士団七将軍の一人、ナナナイさまです!
「何それ!かっこいい!」
「はいっ! この国の最強の魔法使い、それが七将軍です! かっこいいですっ!」
「ちょ、ちょっとロゼ、そんな事わざわざ言わなくても…」
七将軍。うーん、かっこいいぞ。
そういうの大好きだぞ。
しかもその一人がこんな可愛い女の子。
ゲームやラノベではそういった肩書をもつ女の子がたくさん出てくるので珍しくもないが、こうして目の前にいると感激せずにはいられないぜ。
さらに2人とも俺の生涯で出会った事のないほど素敵な髪型なのだ。
こんなに素晴らしいショートカットに出会えるなんてなぁ。異世界様々である。
しかし。
改めてナナナイの服装を見ると、やはり魔法使いよりかは剣士と言われた方がしっくりくるよな。そしてエロい。
せっかく理想的なショートカットなんだし、これで職業が女剣士だったらなぁと思うと残念でならない。
「ナナナイ?キミ、女剣士の方が向いてそうじゃない?」
「…なによ、どういう意味かしら?」
胸元で腕を組んで俺を睨むナナナイだが、その仕草も可愛いだけである。
なんつーか、可愛い子ってズルいよな。ありがとうございます。
「いやぁ、深い意味はないんだけど、魔法使いには見えないなぁって思ってさ。さっきの剣さばきも凄かったし剣士の方が似合いそうじゃん」
「人を見た目で判断しないで欲しいわね。それに魔法使いが剣を武器として使ってはいけないとでも言うの?果実を剥くのにナイフを使うな、薪を割るのに斧を使うな、全部魔法でやれとでも!?」
魔法使いに見えないと言ったことがよほど気に障ったのか、ナナナイはムキになったように言葉を重ねてきた。
そんなに怒る事かねぇ?
「まったく…ロゼ、この失礼な人は誰なの?…はっ!」
ナナナイは何かに気が付いたように身構えた。
「まさかあなた…武麗座の手の者じゃ…!」
「え?武麗座?なにそれ?」
「答えて!じゃないと…」
ナナナイの右手には剣が握られていた。
いつ抜いたのだろうか。まったく気が付かなかった。
「ちょ、なに?なんなのこれ?怖いんだけど!」
「な、ナナナイさま落ち着いてください!勇者さまは勇者さまですよ!」
「そ、そうだぜ!勇者だぜ俺が!」
「…勇者さま?どういう事?」
ナナナイはロゼの「勇者さま」発言に眉をひそめた。
そういや俺は名乗っていなかったな。
「あ、そうでした!ナナナイさま、紹介しますね!こちら勇者カツトさまです!私達が待ち望んでいた勇者さまですっ!」
「この失礼な人が勇者だというの!?」
俺を見て後ずさるナナナイ。
その声には露骨に不満が込められている。
「はい! 先ほど私の召喚に応じて来てくれたんですよ! …ええと、どこからいらしたんでしょう?」
「そうだな、キミらにとっての異世界、かな」
「異世界! カッコいいです!」
「ははは、そうだろう!」
「異世界から勇者さまを召喚…!私なんかがそんな大それた事をしてしまって…良かったのでしょうか…」
「大丈夫さ! ロゼ、キミは最高だ…特にその髪型! いかしてるぜ!!」
「勇者さま…照れちゃいますぅ」
「ちょっと待って。ロゼ、あなたが召喚を? まさか…!」
「…はい、ナナナイ様。姫様がこれを私に…」
明るかったロゼの表情が急に曇った。
なんだ?姫様?
…まぁ聞くまでもない。この国を助けて欲しいって事はお姫様にも何かあったんだろう。
ロゼがローブの袖をまくると左手首に金色の腕輪がはめられていた。
細かい装飾が施された腕輪は、ロゼのボロボロの格好には似合わない輝きを放っている。
「これは…"聖なる腕輪"!」
「"聖なる腕輪"?あ、それって召喚アイテム?」
「さすが勇者さま!良く分かりましたね!はい、この"聖なる腕輪"を使って勇者さまをお呼びしたんですよ!」
「そんな…じゃあ本当にこんな人が勇者なの!?」
ロゼには笑顔が戻ったが、今度がナナナイが思い詰めたような表情になった。
「いや、えっと、ナナナイさん? キミの方がさっきから失礼だよね!? こんな人、こんな人って」
「あ…ごめんなさい、つい思った事を言ってしまって…そうよね、あなたみたいな人でも1つくらいは良い所、あるわよね」
「謝る気ないな…」
俺がさらに文句を言おうとしたその時、ナナナイが微かに体を震わせた。
「これは…!」
「え?なに?どうしたの?」
「ナナナイさま?」
「…叫び声が聞こえたわ。誰かが襲われている!」
言うが早いか、ナナナイは駆けだした。
「え、おい!ちょっと待てよ!」
「待ってください、ナナナイさまっ!」
慌ててナナナイの後を追う俺とロゼ。
「待てって! どこに行くんだよ!」
「言ったでしょう? 誰かが襲われているって!」
「わ、私達の仲間でしょうかっ?」
「分からないわ…とにかく急ぐわよ!」
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