25 / 49
巣立ちは大事件
しおりを挟む
ジョシュアは執務室にいる父と兄を訪ねていた。
「本気か?」
アレクセイがジョシュアに確認する。
「本気です。」
「マリコが泣くな。」
ふー、と息を吐きながらギルバートは片手を顎に持っていく。
「僕は自分が出来る事をしたい。」
ジョシュアはもうすぐ16歳になる。知性も剣も人並み外れて優れている。
アレクセイのように王家の記憶はないが、王子として十分な素質を持ち、努力した。
「父上達が旅行で海の王国の王にお会いされたとお聞きした時から、世界にはいろんな国がある、僕にしか出来ない事を考えてました。
兄上も父上も国の執務があるので、長く国を離れられない、僕なら世界を回って情報を届ける事ができる。」
その夜、マリコとシンシアを集めてジョシュアの話がされた。
「まだ15歳よ、早すぎる。危ない事があっても対処する経験がないわ。」
マリコは竜が旅する知識は知っていても我が子となると心配でたまらない。
「ジョシュアお兄様、危険ではないのですか?」
「危険かは行ってみないとわからない。」
シンシアがアレクセイに身を寄せながらジョシュアを心配している。
「父上、僕もジョシュアと一緒に行こうと思ってます。」
アレクセイの言葉に飛び上がったのはシンシアだ。
「いや、離れるのいや。」
涙をポロポロ流しながらアレクセイに縋りついて懇願している。
シンシアのジョシュアとアレクセイの扱いの違いが凄い。
マリコは息子二人が手元を離れるのは、ただただ寂しい。
「竜が空への滑空を好むのは自然の摂理だ。
普通よりは早い巣立ちだが、番を捜して長く旅をする竜もいる。」
ぎゃーーーー!と叫んだのはシンシア。
「絶対に付いて行く、お兄様の番なんて探さないで!!」
もう異常としか思えない。
我がままに育てた、とマリコは思う。
王家に初めての姫と言う事で家族だけでなく、周りの全てがシンシアに甘いのだ。
自分の思い通りになると思っている。
「シンシア、普通100歳ぐらいから旅をする。僕達はとても早いんだ。
番を探したりしないよ。まだ何千年も生きるんだ、慌てる必要などないさ。
僕に魅了をかけようとしたらダメだよ、そんなことしなくともシンシアが好きだからね。」
アレクセイが泣き縋るシンシアを抱きしめながら、落ち着かせている。
「父上の仕事を本格的に手伝い始めたら、きっと時間も余裕も無くなるでしょう。
今なら僕も竜として空を旅することができる。」
「私も長い時を番を求め旅をした、許可しよう。」
ギルバートの言葉は予想通りだったが、マリコと違いシンシアは諦めがつかない。
「行く!行く!絶対に行く!」
興奮しているシンシアは魔法の制御が狂ってきている。
「まずいな、耐性の弱い者から影響がでるだろう。」
ギルバートとアレクセイが顔を見合わせる。
魅了の魔法に耐性を持っているものなど、いないだろう。シンシア以外誰も使えない魔法なのだから。
「シンシア。」
アレクセイがシンシアの頬にキスして宥めている。
「必ずシンシアの所に帰るから、落ち着いて。」
シンシアの魅了の魔法が漏れ出ている。
「シンシア、手伝うから手を出して。」
アレクセイが手をだすとその手のひらにシンシアが手を乗せた。
アレクセイはシンシアの手を握りしめ、シンシアに魔力を流す。
「ごめんなさい、お兄様。こんな不安定では連れて行ってもらえないのは分かってる。
でも付いて行きたい!」
アレクセイがニヤリと微笑むのをギルバートは見逃さなかった。
ギルバートとアレクセイが見つめ合う、二人とも目は笑っていない。
それに気づいたのはジョシュアだ、鳥肌がたっている。
「ちょっと、ストップ、父上も兄上もどうしたんだ!」
眼を逸らしたのはギルバートだ。
「先程の魔力漏れで、シンシアの魅了にかかった者がいるかもしれない。
シンシアがしばらくこの地にいないと魅了も抜けるだろう。」
これでいいんだろうアレクセイ、とギルバートが言う。
「父上、ありがとうございます。」
「何にだね?」
「全てにです。」
きゃーーー!と言いながらシンシアがギルバートに抱きついてきた。
「お父様、ありがとうございます。ちゃんとお兄様達の言う事をききますから!」
娘に抱きつかれ、ギルバートの表情が弛む、デロデロになっている。
ベリベリと音がしそうな程の勢いでシンシアがギルバートから引き離される。
引き離したのはアレクセイだ、アレクセイはシンシアを抱き上げると、母親をポイと父親に渡した。
「母上が先程から僕達3人がいなくなる事ですねています。僕には手に負えません。」
マリコにとってシンシアまで一緒に行くとは予想もしなかったのだろう、半分放心状態である。
この後、マリコの何故、どうして、と怒涛の攻撃が繰り出される前にギルバートに渡して、アレクセイは逃げにまわったのだ。
「ジョシュア、シンシアおいで。あちらで計画を立てよう。」
アレクセイが二人を連れて部屋を出た後、我に返ったマリコの声が響く。
「どうしてシンシアまで行っちゃうの!!!
どうして許したのーーーー!!
ギルバ-トーーー!!!」
「本気か?」
アレクセイがジョシュアに確認する。
「本気です。」
「マリコが泣くな。」
ふー、と息を吐きながらギルバートは片手を顎に持っていく。
「僕は自分が出来る事をしたい。」
ジョシュアはもうすぐ16歳になる。知性も剣も人並み外れて優れている。
アレクセイのように王家の記憶はないが、王子として十分な素質を持ち、努力した。
「父上達が旅行で海の王国の王にお会いされたとお聞きした時から、世界にはいろんな国がある、僕にしか出来ない事を考えてました。
兄上も父上も国の執務があるので、長く国を離れられない、僕なら世界を回って情報を届ける事ができる。」
その夜、マリコとシンシアを集めてジョシュアの話がされた。
「まだ15歳よ、早すぎる。危ない事があっても対処する経験がないわ。」
マリコは竜が旅する知識は知っていても我が子となると心配でたまらない。
「ジョシュアお兄様、危険ではないのですか?」
「危険かは行ってみないとわからない。」
シンシアがアレクセイに身を寄せながらジョシュアを心配している。
「父上、僕もジョシュアと一緒に行こうと思ってます。」
アレクセイの言葉に飛び上がったのはシンシアだ。
「いや、離れるのいや。」
涙をポロポロ流しながらアレクセイに縋りついて懇願している。
シンシアのジョシュアとアレクセイの扱いの違いが凄い。
マリコは息子二人が手元を離れるのは、ただただ寂しい。
「竜が空への滑空を好むのは自然の摂理だ。
普通よりは早い巣立ちだが、番を捜して長く旅をする竜もいる。」
ぎゃーーーー!と叫んだのはシンシア。
「絶対に付いて行く、お兄様の番なんて探さないで!!」
もう異常としか思えない。
我がままに育てた、とマリコは思う。
王家に初めての姫と言う事で家族だけでなく、周りの全てがシンシアに甘いのだ。
自分の思い通りになると思っている。
「シンシア、普通100歳ぐらいから旅をする。僕達はとても早いんだ。
番を探したりしないよ。まだ何千年も生きるんだ、慌てる必要などないさ。
僕に魅了をかけようとしたらダメだよ、そんなことしなくともシンシアが好きだからね。」
アレクセイが泣き縋るシンシアを抱きしめながら、落ち着かせている。
「父上の仕事を本格的に手伝い始めたら、きっと時間も余裕も無くなるでしょう。
今なら僕も竜として空を旅することができる。」
「私も長い時を番を求め旅をした、許可しよう。」
ギルバートの言葉は予想通りだったが、マリコと違いシンシアは諦めがつかない。
「行く!行く!絶対に行く!」
興奮しているシンシアは魔法の制御が狂ってきている。
「まずいな、耐性の弱い者から影響がでるだろう。」
ギルバートとアレクセイが顔を見合わせる。
魅了の魔法に耐性を持っているものなど、いないだろう。シンシア以外誰も使えない魔法なのだから。
「シンシア。」
アレクセイがシンシアの頬にキスして宥めている。
「必ずシンシアの所に帰るから、落ち着いて。」
シンシアの魅了の魔法が漏れ出ている。
「シンシア、手伝うから手を出して。」
アレクセイが手をだすとその手のひらにシンシアが手を乗せた。
アレクセイはシンシアの手を握りしめ、シンシアに魔力を流す。
「ごめんなさい、お兄様。こんな不安定では連れて行ってもらえないのは分かってる。
でも付いて行きたい!」
アレクセイがニヤリと微笑むのをギルバートは見逃さなかった。
ギルバートとアレクセイが見つめ合う、二人とも目は笑っていない。
それに気づいたのはジョシュアだ、鳥肌がたっている。
「ちょっと、ストップ、父上も兄上もどうしたんだ!」
眼を逸らしたのはギルバートだ。
「先程の魔力漏れで、シンシアの魅了にかかった者がいるかもしれない。
シンシアがしばらくこの地にいないと魅了も抜けるだろう。」
これでいいんだろうアレクセイ、とギルバートが言う。
「父上、ありがとうございます。」
「何にだね?」
「全てにです。」
きゃーーー!と言いながらシンシアがギルバートに抱きついてきた。
「お父様、ありがとうございます。ちゃんとお兄様達の言う事をききますから!」
娘に抱きつかれ、ギルバートの表情が弛む、デロデロになっている。
ベリベリと音がしそうな程の勢いでシンシアがギルバートから引き離される。
引き離したのはアレクセイだ、アレクセイはシンシアを抱き上げると、母親をポイと父親に渡した。
「母上が先程から僕達3人がいなくなる事ですねています。僕には手に負えません。」
マリコにとってシンシアまで一緒に行くとは予想もしなかったのだろう、半分放心状態である。
この後、マリコの何故、どうして、と怒涛の攻撃が繰り出される前にギルバートに渡して、アレクセイは逃げにまわったのだ。
「ジョシュア、シンシアおいで。あちらで計画を立てよう。」
アレクセイが二人を連れて部屋を出た後、我に返ったマリコの声が響く。
「どうしてシンシアまで行っちゃうの!!!
どうして許したのーーーー!!
ギルバ-トーーー!!!」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。
雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。
その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。
*相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
【書籍化】番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました
降魔 鬼灯
恋愛
コミカライズ化決定しました。
ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。
幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。
月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。
お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。
しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。
よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう!
誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は?
全十話。一日2回更新 完結済
コミカライズ化に伴いタイトルを『憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜』から『番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました』に変更しています。
氷の王妃は跪かない ―褥(しとね)を拒んだ私への、それは復讐ですか?―
柴田はつみ
恋愛
亡国との同盟の証として、大国ターナルの若き王――ギルベルトに嫁いだエルフレイデ。
しかし、結婚初夜に彼女を待っていたのは、氷の刃のように冷たい拒絶だった。
「お前を抱くことはない。この国に、お前の居場所はないと思え」
屈辱に震えながらも、エルフレイデは亡き母の教え――
「己の誇り(たましい)を決して売ってはならない」――を胸に刻み、静かに、しかし凛として言い返す。
「承知いたしました。ならば私も誓いましょう。生涯、あなたと褥を共にすることはございません」
愛なき結婚、冷遇される王妃。
それでも彼女は、逃げも嘆きもせず、王妃としての務めを完璧に果たすことで、己の価値を証明しようとする。
――孤独な戦いが、今、始まろうとしていた。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜
雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。
彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。
自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。
「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」
異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。
異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる