73 / 96
番外編 ジェラルド
ジェラルドの森
僕はジェラルド・マクレンジー、13歳。
今日も姉の番犬が来てる。
僕が産まれた時には、姉の側にはあの番犬がいた。
この世の全てを持って産まれた僕が、ただ一つ手に入れられないのが姉だ。
2つ上の姉は美しい、流れる銀髪は母譲りである。
母と違うのは、母が光の加減で薄いピンク色に染まるのに対し、姉は薄いグレーに染まる。
父譲りの黒髪の僕と揃いの1対となるようだ。
「ジェラルド。」
「リデル。」
姉上なんて呼ばない。
姉の側には憎い番犬ガサフィがいる、もうすぐ結婚してしまう。
「セルジオ王国に留学するって聞いたわ。」
「やっと決めました、母上の国ですから、学ぶものも多いかと。」
リデルが鼻をつまんできた。
「絶対、ボロ出したらダメよ、あの変態趣味。」
リデルの番犬の変態よりマシだよ、と言葉に出さないのに番犬は感じとったらしい。
「リデル、弟と離れるのは寂しいだろうけど、これからずっと私が一緒だから。」
番犬が優越感でこちらを挑発してくる、乗ったりなんてしない。
リデルには駄犬に成り下がる。
「殿下はこちらにいらして大丈夫なんですか?」
「もう、調印式まで終わったのでね。リデルに水の都をプレゼントできたよ。」
僕は血を見るのが好きである、拷問や戦場が大好きだ。
何度もガサフィの戦場に立った、それも最前線で。
ディビットの蜂起にも参戦した、番犬も一緒だったが。
母を泣かすのは気がひけたが、父はそれを慰めるのが好きらしい、さっさと行けと言う。
戦場に行く前にはリデルが下手くそなお守りを作ってくれる。
ガサフィも10歳から戦場に出たというから同じだ。
ディビットに至っては7歳で死地から脱出して、マクレンジー帝国に一人で逃亡をしてのけた。
お互いに物心つく前から、マクレンジー軍で訓練を受けていた。あれを生き抜けたんだ、どこにも負けない。
そこにはディビット・ハリンストンがいた、彼がいなかったら生き延びれなかったかもしれない。
あいつにだけは、僕達全員が頭があがらない。
あいつも変態だ、自分より14も下の僕の妹のサーシャ・マクレンジーを娶るつもりらしい。
僕の側には、4人の側近がいる。父の側近の息子達だ。戦場も一緒、留学も一緒だ。
父の後を継いで皇帝になるには一人で全部しようなんて思わない事だ。
父も5人の側近がいる、一人は子供がいないので僕の側近は4人だ。
その子供のいない一人はディビットの養父となっているが、ディビットは側近ではない王だ。
僕も側近も能力がなければ落とされる、生き残れなければリデルは守れない。
あの犬が守るだろうが、実家が弱くなる訳にいかない。
リデルは誰よりも美しい花嫁になった。
悔しいが、あの番犬以上に頼りになる男はいない。リデルの前では駄犬だが。
花嫁の控室で家族が揃う最後になった。
王妃になるリデルはめったにマクレンジー帝国に来ることはできない。
母が泣きながらリデルに抱きついていた、それは年の離れた姉妹のように似た親子だった。
息子が見ても美しい二人だ、そこにサーシャが加わると完璧な美が揃う。
父は母を慰めるのがうれしいのが僕にはわかる、あの無表情の仮面の下は僕と同じだ。
僕は14歳になり、留学生活が始まった。
帝国にいる時より、学校に行くだけというのは時間を持て余し暇である。
僕と側近達は慣れ合ったりはしない、それぞれが必要な行動をしている。
彼らは情報収集に励んでいる。
この留学期間がお互い好き勝手できる唯一の時代だと分かっているからだ。
軍での生活は僕達の絆を強固にした、側に居なくとも信頼がある。
母の実家のデュバル公爵家に行こうと思ったのは、ただの気まぐれだった。
同い年であるダーレンの息子のリアムだけを連れて僕は公爵家を訪れた。
彼らは僕の護衛も兼ねている。
先触れは出してあったが、叔父のフェルナンデスは仕事で留守だった。
従兄弟のロバーツとカイザーが居た。夫人は出かけているらしい。
「ジェラルド殿下、ようこそいらっしゃいました。」
「同い年の従兄だ、殿下はいらないよ。」
「ではようこそ、ジェラルド。」
留学の挨拶の時に王宮で会った以来であるが、母に似た銀髪の従兄弟達に親近感がある。
銀髪はデュバル家の血統なのだ。
もう一人、従姉がいるのだが会った事がない。
「姉のレイラも挨拶すべきなんですが、風邪気味でジェラルドにうつしてはいけないので。」
「いや、気にすることはない。僕の方から挨拶に伺うよ。レディはどちらに?」
「庭の木陰が好きなようで、そちらにいるはずです。」
ロバーツの案内で向かった庭には花の中に銀髪の妖精がいた。
目が離せない、体中の血が沸騰するかのような興奮が湧きあがる。
美しい母や姉妹に囲まれて育ったが、次元が違う。人間じゃない妖精かもしれない。
彼女の髪は朝露に濡れた絹糸かもしれない、だから銀色なんだ。
レイラの手を取り手の甲に口づけをする。
「ジェラルド・マクレンジーといいます。美しい姫君のお名前をいただきたい。」
髪にも口づけをしたい。頬にもしたい。唇にもしたい。
「レイラ・デ・デュバルです。殿下はいつもこうなのですか?」
妖精の声とはこんなにかわいいものなんだ。
「いつもとは?」
「女性の扱いが上手いというか・・」
レイラが頬を染め、瞳をそらして言う姿に釘付けになる、なんて可愛いんだ。
「レイラ姫にだけです。」
デュバル公爵家の情報を頭の中で整理し思い出す。
レイラ・デ・デュバル公爵令嬢15歳、僕より1歳年上だ。
レイラはセルジオ王国の王太子の婚約者だ、母と同じじゃないか。
しかも、もう15歳だ、すぐに手を打たないと危ない。
僕の物だ、僕の物だ、僕の物だ、僕の物だ、僕の物だ、僕の物だ、頭の中でリピートが止まらない。手に入れる方法を考える。
婚約者の王太子は年下の11歳、僕の勝ちだ。
ロバーツが何か察したらしい。
「ジェラルド、姉はすでに婚約者がいます。」
「知っているよ。心配しなくていいよ。」
心配しなくてもちゃんと正妃にするから、と心の中でつけたす。
「僕達は従姉なんだレイラと呼んでも?
僕のことはジェラルドと呼んで欲しい。ロバーツにもそう言った。」
レイラは、ロバーツが実際に言っているのを聞いていたので安心したようだ。
わかったわ、と動く口元に惹き付けられる。
レイラが欲しくって渇きが喉を突き破るようだ。
「庭のテーブルでお茶にしよう、すぐに運ばせるよ。」
そう言って、カイザーが部屋に入っていった。
側にいるリアムが無言の圧迫をかけてくる、僕の様子を察したらしい、無駄だけどね。
僕はロバーツとレイラと庭の椅子に座る。
レイラが僕に笑いかける。
「初めましてよね。父からお話は伺ってました。」
銀の髪の隙間からかわいい耳が見える、あそこにふさわしいイヤリングをプレゼントしよう。
僕の瞳と同じエメラルドがいい。
あの唇は僕を誘っているに違いない。
あの指先にリボンをつけよう、繊細なレースを取りよせねば。
ドレスも下着も全て、僕が与える物だけでくるみたい。
やっと気づいた、僕は深い森の中にいたんだ、レイラが森の中に注した光だ。
よくぞ父はこんな思いを5年も耐えた。
今日も姉の番犬が来てる。
僕が産まれた時には、姉の側にはあの番犬がいた。
この世の全てを持って産まれた僕が、ただ一つ手に入れられないのが姉だ。
2つ上の姉は美しい、流れる銀髪は母譲りである。
母と違うのは、母が光の加減で薄いピンク色に染まるのに対し、姉は薄いグレーに染まる。
父譲りの黒髪の僕と揃いの1対となるようだ。
「ジェラルド。」
「リデル。」
姉上なんて呼ばない。
姉の側には憎い番犬ガサフィがいる、もうすぐ結婚してしまう。
「セルジオ王国に留学するって聞いたわ。」
「やっと決めました、母上の国ですから、学ぶものも多いかと。」
リデルが鼻をつまんできた。
「絶対、ボロ出したらダメよ、あの変態趣味。」
リデルの番犬の変態よりマシだよ、と言葉に出さないのに番犬は感じとったらしい。
「リデル、弟と離れるのは寂しいだろうけど、これからずっと私が一緒だから。」
番犬が優越感でこちらを挑発してくる、乗ったりなんてしない。
リデルには駄犬に成り下がる。
「殿下はこちらにいらして大丈夫なんですか?」
「もう、調印式まで終わったのでね。リデルに水の都をプレゼントできたよ。」
僕は血を見るのが好きである、拷問や戦場が大好きだ。
何度もガサフィの戦場に立った、それも最前線で。
ディビットの蜂起にも参戦した、番犬も一緒だったが。
母を泣かすのは気がひけたが、父はそれを慰めるのが好きらしい、さっさと行けと言う。
戦場に行く前にはリデルが下手くそなお守りを作ってくれる。
ガサフィも10歳から戦場に出たというから同じだ。
ディビットに至っては7歳で死地から脱出して、マクレンジー帝国に一人で逃亡をしてのけた。
お互いに物心つく前から、マクレンジー軍で訓練を受けていた。あれを生き抜けたんだ、どこにも負けない。
そこにはディビット・ハリンストンがいた、彼がいなかったら生き延びれなかったかもしれない。
あいつにだけは、僕達全員が頭があがらない。
あいつも変態だ、自分より14も下の僕の妹のサーシャ・マクレンジーを娶るつもりらしい。
僕の側には、4人の側近がいる。父の側近の息子達だ。戦場も一緒、留学も一緒だ。
父の後を継いで皇帝になるには一人で全部しようなんて思わない事だ。
父も5人の側近がいる、一人は子供がいないので僕の側近は4人だ。
その子供のいない一人はディビットの養父となっているが、ディビットは側近ではない王だ。
僕も側近も能力がなければ落とされる、生き残れなければリデルは守れない。
あの犬が守るだろうが、実家が弱くなる訳にいかない。
リデルは誰よりも美しい花嫁になった。
悔しいが、あの番犬以上に頼りになる男はいない。リデルの前では駄犬だが。
花嫁の控室で家族が揃う最後になった。
王妃になるリデルはめったにマクレンジー帝国に来ることはできない。
母が泣きながらリデルに抱きついていた、それは年の離れた姉妹のように似た親子だった。
息子が見ても美しい二人だ、そこにサーシャが加わると完璧な美が揃う。
父は母を慰めるのがうれしいのが僕にはわかる、あの無表情の仮面の下は僕と同じだ。
僕は14歳になり、留学生活が始まった。
帝国にいる時より、学校に行くだけというのは時間を持て余し暇である。
僕と側近達は慣れ合ったりはしない、それぞれが必要な行動をしている。
彼らは情報収集に励んでいる。
この留学期間がお互い好き勝手できる唯一の時代だと分かっているからだ。
軍での生活は僕達の絆を強固にした、側に居なくとも信頼がある。
母の実家のデュバル公爵家に行こうと思ったのは、ただの気まぐれだった。
同い年であるダーレンの息子のリアムだけを連れて僕は公爵家を訪れた。
彼らは僕の護衛も兼ねている。
先触れは出してあったが、叔父のフェルナンデスは仕事で留守だった。
従兄弟のロバーツとカイザーが居た。夫人は出かけているらしい。
「ジェラルド殿下、ようこそいらっしゃいました。」
「同い年の従兄だ、殿下はいらないよ。」
「ではようこそ、ジェラルド。」
留学の挨拶の時に王宮で会った以来であるが、母に似た銀髪の従兄弟達に親近感がある。
銀髪はデュバル家の血統なのだ。
もう一人、従姉がいるのだが会った事がない。
「姉のレイラも挨拶すべきなんですが、風邪気味でジェラルドにうつしてはいけないので。」
「いや、気にすることはない。僕の方から挨拶に伺うよ。レディはどちらに?」
「庭の木陰が好きなようで、そちらにいるはずです。」
ロバーツの案内で向かった庭には花の中に銀髪の妖精がいた。
目が離せない、体中の血が沸騰するかのような興奮が湧きあがる。
美しい母や姉妹に囲まれて育ったが、次元が違う。人間じゃない妖精かもしれない。
彼女の髪は朝露に濡れた絹糸かもしれない、だから銀色なんだ。
レイラの手を取り手の甲に口づけをする。
「ジェラルド・マクレンジーといいます。美しい姫君のお名前をいただきたい。」
髪にも口づけをしたい。頬にもしたい。唇にもしたい。
「レイラ・デ・デュバルです。殿下はいつもこうなのですか?」
妖精の声とはこんなにかわいいものなんだ。
「いつもとは?」
「女性の扱いが上手いというか・・」
レイラが頬を染め、瞳をそらして言う姿に釘付けになる、なんて可愛いんだ。
「レイラ姫にだけです。」
デュバル公爵家の情報を頭の中で整理し思い出す。
レイラ・デ・デュバル公爵令嬢15歳、僕より1歳年上だ。
レイラはセルジオ王国の王太子の婚約者だ、母と同じじゃないか。
しかも、もう15歳だ、すぐに手を打たないと危ない。
僕の物だ、僕の物だ、僕の物だ、僕の物だ、僕の物だ、僕の物だ、頭の中でリピートが止まらない。手に入れる方法を考える。
婚約者の王太子は年下の11歳、僕の勝ちだ。
ロバーツが何か察したらしい。
「ジェラルド、姉はすでに婚約者がいます。」
「知っているよ。心配しなくていいよ。」
心配しなくてもちゃんと正妃にするから、と心の中でつけたす。
「僕達は従姉なんだレイラと呼んでも?
僕のことはジェラルドと呼んで欲しい。ロバーツにもそう言った。」
レイラは、ロバーツが実際に言っているのを聞いていたので安心したようだ。
わかったわ、と動く口元に惹き付けられる。
レイラが欲しくって渇きが喉を突き破るようだ。
「庭のテーブルでお茶にしよう、すぐに運ばせるよ。」
そう言って、カイザーが部屋に入っていった。
側にいるリアムが無言の圧迫をかけてくる、僕の様子を察したらしい、無駄だけどね。
僕はロバーツとレイラと庭の椅子に座る。
レイラが僕に笑いかける。
「初めましてよね。父からお話は伺ってました。」
銀の髪の隙間からかわいい耳が見える、あそこにふさわしいイヤリングをプレゼントしよう。
僕の瞳と同じエメラルドがいい。
あの唇は僕を誘っているに違いない。
あの指先にリボンをつけよう、繊細なレースを取りよせねば。
ドレスも下着も全て、僕が与える物だけでくるみたい。
やっと気づいた、僕は深い森の中にいたんだ、レイラが森の中に注した光だ。
よくぞ父はこんな思いを5年も耐えた。
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
公爵家の養女は静かに爪を研ぐ 〜元々私のものですので、全て返していただきます〜
しましまにゃんこ
恋愛
リヴィエール公爵家に養女として引き取られた少女、アリサ・リヴィエール。
彼女は華やかな公爵家の嫡子マリアとは対照的に、家でも学園でもひっそりと息を潜めて生きていた。
養女とは言っても、成人と同時に修道院へ入ることが決まっており、アリサに残された時間は僅かだった。
アリサはただ静かに耐えていた。
——すべてを取り戻す、その時まで。
実は彼女こそが、前公爵が遺した真の娘であり、水の加護を持つリヴィエール公爵家の正統なる後継者だった。不当に奪い取られた地位と立場。
アリサは静かに時を待つ。
一方、王太子リュシアン・ルミエールは、傲慢な婚約者マリアに違和感を抱きつつ、公爵家に隠された不正の匂いを嗅ぎ取っていく。
やがて二人の思惑は重なり、運命の卒業パーティーが幕を開ける。
奪われた名前も、地位も、誇りも——
元々、私のものなので。まとめて返してもらいます。
静かに爪を研いできた養女の、逆転ざまぁと溺愛ロマンス。
完結保証&毎日2話もしくは3話更新。
最終話まで予約投稿済み。
婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!
みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。
幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、
いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。
そして――年末の舞踏会の夜。
「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」
エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、
王国の均衡は揺らぎ始める。
誇りを捨てず、誠実を貫く娘。
政の闇に挑む父。
陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。
そして――再び立ち上がる若き王女。
――沈黙は逃げではなく、力の証。
公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。
――荘厳で静謐な政略ロマンス。
(本作品は小説家になろう、カクヨムにも掲載中です)
偽りの婚姻
迷い人
ファンタジー
ルーペンス国とその南国に位置する国々との長きに渡る戦争が終わりをつげ、終戦協定が結ばれた祝いの席。
終戦の祝賀会の場で『パーシヴァル・フォン・ヘルムート伯爵』は、10年前に結婚して以来1度も会話をしていない妻『シヴィル』を、祝賀会の会場で探していた。
夫が多大な功績をたてた場で、祝わぬ妻などいるはずがない。
パーシヴァルは妻を探す。
妻の実家から受けた援助を返済し、離婚を申し立てるために。
だが、妻と思っていた相手との間に、婚姻の事実はなかった。
婚姻の事実がないのなら、借金を返す相手がいないのなら、自由になればいいという者もいるが、パーシヴァルは妻と思っていた女性シヴィルを探しそして思いを伝えようとしたのだが……