カラダの恋人

フジキフジコ

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カラダの恋人【第一部】

14.紺野要の告白(2)

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紺野の言い分はこうだった。
紺野はオレと部室でああなって以来、オレのことが気になって気になって、どうやらオレに恋(ぶ、笑わせんなーっ!)をしたらしいと、と自覚した。

けど、オレの方はその気がなさそうだし、「ホモは嫌い」と公言していたオレに対して、繊細な要少年は告白するとこが出来なかった(そうだ)。
しかし、繊細ではあってもズル賢い紺野は、最初にああなったイキサツがああだったもんだから、同じような手口を使えば同じようにオレとヤレると企んで、実際その通りに恋の悩み事相談を持ちかけて二度目の交渉に成功した。
(この辺はオレの甘さが招いた結果だと反省している)

だから紺野はいもしない相手に恋をして、恋人を作っては別れ、また別の相手に恋をしている振りを繰り返した。

「それは嘘だろー。実際オレ、おまえがデートしてるとこ、何度か見たことあるぜ」
「女の子から告白されて、デートに付き合ったことなら何度かあるからなあ。でもなんにもしてねえって、ホント、マジそれは信じて。ただ、おまえに偽装恋愛がバレないようにわざと見せつけるために1、2回会っただけ」

呆れた。
おまえってほんと、女の敵だよな。
絶対におまえのこと恨んでいる女が一人か二人はいるに違いない。
夜道を歩くときは頼むから一人で歩いてくれよ。
一緒に歩いていて間違って刺し殺されるなんて真っ平ご免だからな!

オレがそういうことを唾を飛ばしながらまくし立てると、紺野はシュンとして、「トモの反応を試したかったんだよ。オレはいつも必死でおまえの気を引こうとしてた。でもおまえは、オレがどんなにおまえにヤキモチやかせようとしても無駄だったけどな」なんて寂しそうな声を作って、言った。

まったく、ガキかよ、おまえは。
とにかく紺野の告白を聞いて、頭が真っ白になったオレは、ことの次第が全部理解出来るだけの時間をくれと頼んで、ベッドの上で紺野に背中を向けて座って考えている。

しかし、考えれば考えるだけ、あのときの紺野も、このときの紺野も、ただオレの気を引くためだけに口からでまかせのノロケを言っていたのかと思うと、腹も立つけどどうしても笑いがこみ上げてきてしまう。
おまえさあ、教師になるより俳優にでもなれよ、絶対成功するよ。
それとも行く末は華麗なる詐欺師かな。
に、似合いすぎる。
ああ、もうダメだ、笑える、おかしい!
オレはとうとう我慢出来なくなって、ベッドの上を転げ回って笑った。

「なんだよっ、笑うなよ、てめえ。人が真剣に悩んで、これ告白するのにどんだけ勇気がいったと思うんだ!」
紺野はベッドの上に乗ってきて、オレの両肩を押さえてムクれながら言う。
「なんで告白しようと思ったんだよ。嘘、続けてればよかったんじゃねえの?」

なにしろオレは簡単に騙されていたんだ。
紺野の嘘なんかきっとずっと見抜けなかった。
「オレは!おまえのカラダだけじゃもう我慢出来なくなったんだよ。もう、全部、トモの全部が欲しいんだよっ!心も身体も!」
なんだよ、そんな熱い目で言われたら茶化せない。
今までオレたちの間にこんなのはなかったじゃないか。

ふっと、見交わす視線がぼやけたと思ったら、紺野が顔を近づけてきたせいで、視線のフォーカスがボヤけたからだった。

オレは思わず目を閉じた。
唇が重なる。
紺野の舌が入ってきて、オレのに絡まる。
こんなこといつもしてることなのに、なんかいつもよりずっと熱くって、意識が遠くなりそうでヤバイ。
あんまり直向きだと逃げたくなる。
けど、逃げても逃げても紺野の舌は追いかけてきて、オレのに絡まってくる。
気がつけばオレも応えていた。

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