カラダの恋人

フジキフジコ

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続ココロの恋人(高校生編)

4.別れの感傷

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紺野に話さなきゃと、そのことばかり考えていたオレは紺野の様子がおかしいことにすぐには気がつかなかった。

紺野はオレの部屋に入るとピシャリとドアを閉めて、悲壮な表情で「トモ」とオレを呼んだ。
「なんだよ」
「おまえ、坂口と付き合うことにしたって、本当なのか?」

突然思ってもいなかったことを言われて驚いた。
「そんなこと、なんで知ってんの?」
「本当なんだな?!」
「付き合うって、いうか…」

そこまで言って、卒業式までって期限付きの恋人ごっこなんだけど…っていうのはあまりにみっともなくて言えずに、オレは口ごもった。

オレが何も言わないでいると、紺野はオレの勉強机に両手を置いて肩を落として項垂れている。
どうやらひどくショックを受けているらしい。
こういう状況で、紺野がショックを受ける理由はどう考えても一つしかないような気がする。

そうか、おまえ坂口のことを…。
けど、紺野が坂口を好きだったなんて、今の今まで気がつかなかったオレって相当鈍感なのかなあ。

「紺野」
呼びかけると、紺野が顔だけ振り返って縋るようにオレを見た。
ショックや悲しみの中になにかを期待しているような、それとも何か決意を固めたようなそんな目をしている。

つまりそれは坂口のことを好きだっていう紺野の気持ちをオレが理解したんじゃないかって期待で、決意はなんだろう、まさか坂口を巡ってオレと戦う決意か?
それは待て、遠慮しとく。
だいいち、その戦いは引き分けだ。
坂口は札幌に行っちゃうんだから。
そのことを知ったらおまえ、オレが熊本に行くこととどっちが寂しいと思うんだろう。

「紺野…」
もう一度名前を呼んだあとで、何を慰めるべきか考える。
考えながら紺野の肩に手を置いたら、いきなり手首をつかまれて身体ごと反転した紺野の腕の中にすっぽり抱きしめられた。

「トモ」
ビックリして心臓が跳ねあがる。
オレたちは下半身の敏感なところには触れ合うけど、こんなふうに抱きしめ合ったりキスしたりは滅多にしない。

こういう、直接射精に関係ない触れ合いの方が何倍も照れるから。
あんまり胸がドキドキして紺野の身体を押し離すことも出来ないでいると、紺野はそのまま顔を寄せてキスしてきた。

おまえ、オレが坂口と付き合うと思い込んでるせいで、オレのこと完全に坂口と間違えてない?
そう思ったけど、やっぱりオレは紺野を拒めない。
もしかして紺野をこんなふうに傷つけたのは自分かもしれないし、それとも単なる別れの感傷で甘くなっているのか、そんなところかもしれないけど。

「トモ、オレ、今日は我慢出来ないかもしれない…」
いったん唇を離して、オレのことをぎゅっと抱きしめた紺野が肩口に頬を乗せて言った。
いつもの茶化した声じゃなくて、真剣で、切なかった。

「おまえ、そんなに好きなの?」
坂口のことを、それほど好きだったのか?
「…好きだ」
オレはきつく目を閉じた。
そんな気持ち、オレにはわからない、理解出来ない。
けど、紺野に同調したのか、オレの胸もなんだか痛んだ。


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