カラダの恋人

フジキフジコ

文字の大きさ
75 / 91
ヒミツの恋人【第一部】

23【完】後日談

しおりを挟む
調子に乗って、やり過ぎた。
オレも紺野もベッドの上から起き上がれない。
普通なら終わったあとはすぐにシャワーに直行するオレも、ベタベタと触れてくる紺野の手を払う気力さえない。
眠ってしまう前に、紺野に聞いた。
なんでこんなに長く触れてこなかったんだって。
紺野はケロッとして「トモに考える時間をあげたんだ。なんか悩んでいるみたいだったから」と言った。
その思いやりがさらにオレの悩みを深くしてくれたんだってことは黙っておくことにする。

「紺野、おまえは悩んだことなかったのか。男なんか好きになって、少しも悩まなかった?」
「だってオレにはそんな些細な悩みより、好きな男に振り向いてもらえないってことの方がより重大な悩みだったからさ、そういう細かいことで悩んでる余裕はなかった」
本当のことを言うと、紺野ならそう言うと思っていた。
そしてオレは紺野にそう言って欲しかったんだと思った。

「トモは、どうなの?まだ、悩んでる?」
オレにはまだよくわからない。
とりあえず、自分が紺野を好きだってことは自分自身に対してと紺野に対しては認めることは出来たけど、例えばそのことを親や世間に公表出来るかと聞かれたら自信がない。

「それでいいじゃん。別になにもかも公にするだけが真実を貫くわけじゃねーよ。オレはヒミツの恋人で充分だな。その方がスリルあっておもしれえじゃん?」
「よく言うよ。ヒミツとかいって、おまえはペラペラ喋りすぎだっつーの!結局、滝沢と松浦にバレたじゃねーか」
「あいつらはへーき。向こうの弱味も握ってるから」
どうだか。
正直の上にバカがつく紺野が、いつまでヒミツを貫けるかは怪しいと思う。

「そうだ、滝沢で思い出した。ねえねえ、トモぉ…」
一瞬上半身をベッドの下に屈んで何かを手繰り寄せ、甘えた声で擦り寄ってきた紺野が言った。
「2回戦、やんない?でさ、コレ、使ってみない?」
目の前に出されたのはいつか宅急便で届いた大人のオモチャで。
オレは残っていた力を振り絞って枕で紺野の頭を思い切り殴ってやった。
「返品したんじゃなかったのかよっ!」
「怒るなよ~、もしかしたらいつか使うこともあるかもしれないから、一応、とっておこうと思っただけなのに」
「使う機会なんか、ねえ!」
「だってさ、いつまでオレのコレ、役に立つかわかんねーじゃん?オレがじーさんになって、まあ、トモもじーさんになるワケだけど、考えたくねえけど、万が一オレのナニが勃たなくなったら、こいつのお世話にならないとも限らねえじゃん?な、そうだろ?」
呆れた。
バカだバカだと思っていたけど、こいつは本物のバカだ。
オレがあんまり呆れたせいで絶句していると、何を勘違いしたのか紺野は言った。
「だけど心配しなくていいから。オレのはそう簡単にダメになったりしないって。いつまでもトモを悦ばせてやれるぜ!ほら、もう結構回復してきたよ。見て見て、なんなら触って」
こんなアホな男に「好きだ」なんて真顔で告白したオレって、かなり特殊な趣味の持ち主かもしれない。




後日談。
あのあとで、紺野から聞いたハナシ。
バイブといつだったか届いたオレと紺野を隠し撮りした写真を送ってきたのは滝沢だったそうだ。
「おまえがホモだってことを知っているんだぞ」という脅迫用の小道具だったらしい。
残念ながら、そうとはまったく気がつかなかったんだから、滝沢の作戦は端っから失敗していたってことだ。
いくら頭が良くても考えることは幼稚である。
優等生だとばかり思っていたが、あいつもかなり変なヤツだ。
松浦は新しい学校が決まって、新学期から通うことになった。
駆け落ちした先生には、手紙を書いて返事を貰ったと嬉しそうにそれだけ報告しに来た。
内容については聞かなかった。それは野暮ってもんだ。

楽しいばかりじゃない大人の夏休みもすでに中盤。
宿題がないのだけは、ありがたい。



END


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

処理中です...