皇帝直々の交渉は果たして纏まるだろうか ~“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか 外伝その2~

まにぃ

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第1話 装っての旅立ち

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これは。
協力を取り付ける為に辺境へ向かった、皇帝の旅の記録。
本流から分かれ支流として流れた後、又本流へと合流する物語。
それをこれから、書き記して行こう。
と、仰々しく始まったが。
果たして何処まで書けるものやら。
何故か?
それは、この旅の【主役】の性質による。



〔ヘルメシア帝国〕の現皇帝、《シルベスタ3世》こと《ユーメント・フォウ・シルベスタ》。
彼が3人の護衛隊を伴って旅に出たのは、〔グスターキュ帝国〕からの使者が本国へ旅立った翌日。
かの国と或る共闘作戦を取る、その為に力を借りなければならない者が居る。
国境付近に位置する地域、〔ワインデュー〕。
そこを支配する12貴族の1家、《ヤフレ家》。
ワインデュー内に反抗勢力を誘い込み、まさかの越境による敵国軍の侵入。
自軍との挟み撃ちにより、反抗勢力を排除。
それによって平和を勝ち取る。
反抗勢力とは、《王族反対派》及びそれを操る《ケミーヤ教》なる集団。
反対派とは文字通り、皇帝とその親族を権力のトップから引き摺り下ろそうとする勢力。
ケミーヤ教は《グレイテスト》なる者を崇めており、中には強力な力を持つ錬金術師も加わっているらしい。
そいつが寄りにも寄って、皇帝の弟を化け物に仕立て上げたのだ。
許されざる蛮行。
しかしそれ等を倒すには、こちらも分散している勢力を整えねばならない。
〔或る地〕にて格闘しているであろう、ヘルメシア側の錬金術師達も呼び戻さなければならない。
詳しい事は【本編】に譲るとして。
今、自分が出来る事は?
それを《魔法使い》が指し示してくれた。
それが今回の旅である。



『皇帝自ら説得に行った方が、効果が有る』との、魔法使いからのアドバイス。
確かに、危険を冒して直々に参上した方が。
ヤフレ家を頼りにしている証となり、説得力も増す。
それを受けて、住まう王宮を出る決心をした。
但し、皇帝の成りのまま出立したら敵にバレてしまう。
極秘に向かわねばならない。
そこで、騎士に偽装して行動する事に。
お供は同じ騎士である、護衛隊の3人。
仮に【ハイ】、【ヘス】、【ホム】としておこう。
素性が知れると、こちらも問題となる。
彼等も、王宮からの使いとして離れる事にはしているのだが。
行く先も偽装しているのだ。
なので、仮の名で呼び合う事にした。
自身も、仮に【ユウ】と偽名を使う。
後で怒られそうな、安直な付け方だが。
名前など、どうでも良かった。
敵に見つからずに目的を達成し、無事に王宮へ帰還出来れば。



格好も。
騎士の中でも比較的階級の低い者が着用する、革の鎧に身を包んだ。
これなら敵の目も欺けるし、何よりも軽く行動し易い。
頭も頭巾の様な物を被り、顔が少しでも見えにくくする。
但し急ぐので馬を使い、一気に突っ切る。
4頭立ての馬が走るのは、不自然かも知れないが。
そこまで考えると行動が鈍ってしまう。
スピード優先と言う事で妥協した。
そしていよいよ、旅立ち。
王宮の〔執務室〕から〔玉座の間〕を抜け、外に在る長い坂を下る。
その麓に用意された馬にまたがり、目的地へ向かう。
何時頃着くか、予想も付かないまま。
走り出した。



この旅には、特別な随伴者が居る。
駆ける馬に揺られているにも関わらず、ユウの右肩にちょこんと乗って落ちる様子も見せない者。
トラネコの姿をした使い魔、《メイ》。
彼女は探索担当。
変な奴が周りに居ないか、常に気を配る。
遭遇しそうになると、相手に幻を見せる。
その隙に馬を駆る。
その為の要員。
言わば、保険なのだ。
メイのお陰で、何とか順調に進んで行く。
特に最初に訪れる、王族反対派の《チンパレ家》が支配する地域の〔ラミグ〕。
そこは、出来るだけ止まらず突っ切りたい。
『馬が持つか?』と言う問題もあるが、主要な町を避けながら進めば何とかなると事前協議で判明した。
それに賭けるしか無かった。
それ程、時間が無い。
王宮の在る帝都〔ガティ〕から、皇帝の支配地域〔シルバ〕を出て南西へ。
ひたすら南西へ、進み続ける。
それで何とか、通常よりも早くラミグを抜けた。
ここから更に南西へ。
反対派から裏切った《ムヒス家》の治める〔シゴラ〕に入ると。
長が不在なので、これまた寄り道せず突っ切る。
ムヒス家は裏切った代償で、本領域に帰れず帝都の別荘に隠れているのだ。
つまり、留守。
ならば、長居は無用。
と言う訳で、シゴラも突っ切る事が出来た。
そこから先は。
いよいよ。



シゴラの南に、ワインデューがある。
ここまで来れば、ヤフレ家が暮らす首都の【ジューレ】まで後一息。
馬を走らせ続けた為、限界に近付いていた。
もう無理はさせられない。
ここからなら、徒歩の方が安全。
ジューレに通ずる街道は、険しいと聞く。
ワインデューに入ってすぐの町【ドリイ】で、馬を託す事にした。
ここには、ヤフレ家の兵士が駐屯している。
王族に対し擁護も反対もしない《日和見ひよりみ派》に属しているので、反対派のムヒス家が攻めて来ない様に牽制の役目を負っていた。
とっくにムヒス家が、反対派から離脱したとも知らずに。
彼等には本当の事を上手く誤魔化し、馬を預ける事が出来た。
後は徒歩で向かうのみ。
そこに、一応監視役として同行する兵士が2人。
彼等はそれぞれ【レイア】【デム】と名乗ったが、本名かは分からない。
完全に敵では無いと判断しない限り、こちらに名を明かさないのかも知れない。
それはこちらも同じ事。
気にしない事にした。



ユウの肩にずっと乗っているメイの事が、気になるらしいレイア。
しょっちゅうユウの方を見て来る。
ネコが好きなのか。
それとも、肩から降りたがらないのを不審がっているのか。
隊列は、先頭をレイア。
後ろに2列で、まずユウとヘス。
その後ろに、ハイとホム。
最後尾にデム。
振り向きはするが、決して自分から話し掛けては来ない。
あくまで、怪しい奴と見做みなしての行動。
レイアもデムも、出来た兵士だ。
ユウは内心、感心していた。
そして、野宿を繰り返す事何日か。
ユウは野宿も初めてだったのでドキドキしたが、案外すぐ慣れた。
そんな新鮮なトキメキが消えた頃。
目的地に到着。
レイアとデムに、ジューレの町に在る宿屋へ案内される。
そして、『当主様がお会いになられるかは、あなた方次第』と念を押される。
レイアは、ヤフレ家の屋敷まで案内してくれるらしい。
一先ず宿へ入り、ゆっくり休む事にする。
デムは、またドリイまで戻る事に。
レイアはデムを見送った後、ヤフレ家に知らせに行くらしい。
ジロッと、宿屋の主人がこちらを見て来る。
既にもう、試されている様だ。
怪しい奴では無いかどうか。
今回は、気苦労が絶えないな。
つくづくそう思う、ユウだった。
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