【完結】氷の令嬢は王子様の熱で溶かされる

花草青依

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13-2 パーティでのハプニング

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「ローズマリー嬢は隣国に留学されていたんですよね?」
「ええ。エイメル公国に行ってました。彼の国は魔導技術の発達が凄まじくて、魔導列車に乗れた時には感動しましたわ」
「そうですか。魔導列車といえば、エイメル大公と大公妃が出会うきっかけとなったものですよね」
「そうです! やはり我が国でも知られていましたか」

 エイメル大公と大公妃の恋愛結婚は大々的に報道された。大公は大公妃に一目惚れをしたものの、彼女には婚約者がいたために一度は諦めたそうだ。しかし、彼女が婚約者から理不尽に振られたことを知るや否や、大公様大公妃にアプローチをしたらしい。
 二人の結婚に至るまでの過程は、まるで少女が夢みた恋愛話のようだと話題になった。学園でも、彼らのような恋愛をしたいと話していた女子学生が何人もいた。

「私、思うんです。我が国ではイザベラ嬢とエドがエイメル大公夫妻のような素敵な恋愛結婚をするって」
 ローズマリー嬢の言葉に、私は意味が分からなかった。私が、彼らのような素敵な恋愛をできるとは思えなかったからだ。
「・・・・・・そうですか。そうなるといいですね」
 どう返事をすればいいのか分からなくて、考えた末の答えがこれだった。

「もしかして、エドと上手くいっていないのでしょうか?」
 ローズマリー嬢は気まずそうに言ってきた。私がすぐに返事をしなかったから、変な誤解をさせてしまったらしい。
「いえ。そんなことはないです」
 否定してみたけれど、彼女は信じてくれないみたいだった。言葉を続けようとした時、ローズマリー嬢に話しかけたそうにしている令嬢がいることに気づいた。私は、これ以上、長話をするのも迷惑かと思って、ローズマリー嬢のもとを離れた。

 それからは、私に話しかけてくる人はいなかった。いつも通り一人でのんびり過ごす時間が訪れたのだ。
 だから、私は端のテーブル席で一人、取ってきたお菓子を食べていた。物珍しいお菓子もあって、いつもよりも食が進む。

「あら、あれってイザベラ嬢?」
 チョコレートを口に入れたところで、私の名前が聞こえてきた。
「本当だわ。・・・・・・フィリップ様もいらっしゃるのに大丈夫なのかしら」
 そう言われて思わず顔をあげて話をしている人を見てしまった。そうしたら、彼女達はバツが悪そうな顔をして去ってしまった。

「フィリップ様、本当にいるのかしら」
 私の呟きに答えてくれる人はいない。でも、その答えはすぐに知る事となった。
 お菓子のおかわりを取りに行った時、フィリップ様と鉢合わせになったのだ。彼は顔を歪ませて私を見ているだけだった。彼と話すことは何もないけれど、それでも無視できない距離にいたから挨拶をした。
 でも、彼はふんとわざとらしく鼻をならして立ち去って行った。彼にとって今の私は挨拶をする価値もないらしい。

 そんな私達を見て、周囲は当然ざわめいた。ゴシップ紙に書かれた私の噂話や、フィリップ様とエリナが別れたという話を口々に語っている。
 おかしな雰囲気を作ってしまった事がいたたまれない。私は逃げるようにテラスへと向かった。
 幸いなことにテラスには誰もいなかった。夜風に当たり、深く息をして気分を落ち着ける。
 そうしていたら、ローズマリー嬢がやって来た。

「ごめんなさい。母の手違いでフィリップ令息にも招待状を送ってしまったみたいなんです」
 ローズマリー嬢はアンドレ公爵夫人に代わり、畏まって私に謝罪してきた。
「大丈夫ですよ。それより、こちらこそごめんなさい。パーティを変な雰囲気にしてしまって」
「いえ。そんなことは」
 と言いつつも、ローズマリー嬢の顔は強張っていた。主催者側の人間として、この状況をどう収めようかと考えを巡らせているに違いない。

「すみません、私はそろそろ帰りますね」
 場を収めるには私がこの場にいるべきではない。
 でも、ローズマリー嬢は困った顔をして、帰らないで欲しいと言ってきた。
「お気持ちはありがたいですが、私が帰った方がよい雰囲気になると思いますので」
「そうおっしゃらずに。もうすぐ、エドが来るはずなんです」
 エドが来たところで、この状況が良くなるとは思わない。そう言おうとしたら、エドがやって来た。
「ベラ、探したよ」
 彼はいつも通り優しく微笑んだ。
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