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番外編3
番外編3-2 何があっても離婚しない
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シアが帰ってくると、すぐに宝石商のもとへと向かった。その間も、彼女は相変わらず俺の顔色を窺っていた。
彼女は、未だに本音を語ってくれない。それどころか、もう一度妹と会うことさえ、諦めようとしていた。
シアは俺に気を遣ってばかりで、全然信用してくれないのだ。この調子では、昔のように「アンディ」と呼んでくれる日はまだまだ先になりそうだ。俺はそう呼んで欲しくて待ち焦がれているのに━━
俺の気持ちも知らず、シアは相変わらずいつも通りの暗い顔のままだった。そして、それは宝石商についてからも変わらなかった。
彼女は仕立て屋の時と同じく、高価な物はいらないと主張した。金は大丈夫だと言っても、疑いの眼差しを向けるばかりで意見を変えようとしない。
こんなにも金がないと思われているのなら、銀行に預けている金貨を見せた方がいいんだろうか。そんなことを思いながら、俺は宝石商の夫人が持ってきた装飾品を確認した。そして、シアの気に入りそうな物を一つ見つけたのだ。
“大きな紫色の宝石の付いたネックレス”
それは、フェイの瞳のようにキラキラと輝いていた。彼女の瞳を美しいと褒めていたシアなら、きっと気に入るだろう。
そう思って、シアにそれを勧めてみると、彼女はわずかに微笑みながら「綺麗」とつぶやいた。
━━俺のことは忘れても、大の仲良しだったあいつのことは忘れていないのか。
そう思うと嫉妬心が湧いてきた。選んだのは俺自身なのに、フェイの瞳と同じ色をした宝石を買うことが癪に障るとさえ思った。
でも、そんなことを言っている場合じゃなかった。シアが珍しく気に入ったんだ。彼女の気が変わる前にさっさと買ってしまわないといけなかった。
だから俺はシアが意見をする前に買うと宣言した。
━━そういえば、あいつはお揃いが好きだったよな。
紫の宝石を見ていたら、幼い頃のシアとフェイの姿が頭を過ぎった。
フェイはシアの装いを真似したがる癖があった。シアが花冠を作って自分の頭につける度にと、フェイは「私のもちょうだい」とねだっていた。そして、お揃いになると、フェイは俺に向かってこう言うのだ。
「見て! お揃い。かわいいでしょ?」
「そうだな」と俺が答えるとフェイは機嫌良くシアの周りをくるくると回るのが常だった。
幼い時の俺達の日常を思い出すと、胸の奥がほんのりと熱くなった。
━━たまにはあいつにも土産の一つくらい買ってやるか。
そう思ったから、残りの宝石も見てみた。
フェイの瞳の色と似た宝石は他にもあった。しかし、さっきのネックレスと比較してみると大きさや輝きでどうしても見劣りをしてしまう。
プライドの高いフェイの事だ。最高級品でないものを渡そうものなら「私の目はもっと美しいんだから!」と言って怒るに違いない。
━━それなら、いっそのこと視点を変えて、シアの瞳と同じ色の宝石を選ぼうか。
そう思った瞬間、一つの指輪が目に止まった。プラチナであろう指輪の中央には、小さいながらも緑色の宝石がついている。その優しい緑色はシアの瞳にそっくりだった。
そんなことを思っていると、夫人がシアの指に着けてみるように促してきた。
シアにあげるものではなかったが、せっかくだから彼女の指に嵌めてみた。精巧なデザインの指輪は繊細なシアの雰囲気にぴったりでよく似合っていた。
だが、その指輪は一回りサイズが大きく、シアの細い指には合わなかった。夫人はサイズを直すと言ってきたが俺はそれを断った。フェイなら指輪のサイズを自分自身で直せるのだ。無駄に時間と金を割くのはもったいないから、今の状態で渡せばいい。
俺の考えを知らない夫人は怪訝そうな顔で俺を見ていた。
だが、「妖精への贈り物だ」と言った所で、彼女が理解できるとは思えない。だから、俺はそれ以上何も言わず、購入の手続きを済ませた。
宝石商での買い物を済ませて馬車に戻ると、いつも以上にシアは物憂げだった。顔色も悪く、体調が悪いのかもしれない。本人は疲れていないと言っていたが、念のため、今日は宿に戻ることにした。
宿に着くと、俺達はすぐに昼寝をすることにした。ベッドで横になってシアが眠るのを待っていたが、いつまで経っても彼女は眠りそうにもなかった。
━━眠くはないのか?
それならもう少し、彼女を近くに感じたい。そう思ったから、俺は彼女を抱き寄せた。
「シア」
呼んでも彼女は知らんぷりだ。俺に背を向けたまま、寝たふりを決め込んでいる。
「好きだ」
彼女の顔が見えないせいか、好きという言葉が簡単に出てきた。いつもは言いたくても恥ずかしくて言えないのに。おかしなものだと自嘲する。
相変わらず何も反応しないシアの身体を俺は撫でる。そして、寂しさを埋めるように、起き上がって彼女の唇にキスをした。
「━━っ!」
寝たふりをしていたシアが目を開けた。びっくりした表情が可愛らしくてたまらない。
愛おしい彼女の小さな手にキスをして、頭を撫でた。
シアは俺のその行為を歓迎してはくれなかった。
初心な彼女に無理をさせているのだろうか。
それとも、まだ俺を“夫”としては見てくれていないのか。
考えれば考えるほど、切なさが増していった。
その時、扉を叩く音が聞こえた。宿の従業員が来客が来たことを知らせに来たのだ。
今はシアと一緒にいたいと思った。だから、他の奴に構うつもりはなかった。けれど、シアは応対しろと促してくる。やはり彼女は俺と一緒にいたくないらしい。
俺はざわめく胸の内を抱えたまま、部屋の扉を開けた。
彼女は、未だに本音を語ってくれない。それどころか、もう一度妹と会うことさえ、諦めようとしていた。
シアは俺に気を遣ってばかりで、全然信用してくれないのだ。この調子では、昔のように「アンディ」と呼んでくれる日はまだまだ先になりそうだ。俺はそう呼んで欲しくて待ち焦がれているのに━━
俺の気持ちも知らず、シアは相変わらずいつも通りの暗い顔のままだった。そして、それは宝石商についてからも変わらなかった。
彼女は仕立て屋の時と同じく、高価な物はいらないと主張した。金は大丈夫だと言っても、疑いの眼差しを向けるばかりで意見を変えようとしない。
こんなにも金がないと思われているのなら、銀行に預けている金貨を見せた方がいいんだろうか。そんなことを思いながら、俺は宝石商の夫人が持ってきた装飾品を確認した。そして、シアの気に入りそうな物を一つ見つけたのだ。
“大きな紫色の宝石の付いたネックレス”
それは、フェイの瞳のようにキラキラと輝いていた。彼女の瞳を美しいと褒めていたシアなら、きっと気に入るだろう。
そう思って、シアにそれを勧めてみると、彼女はわずかに微笑みながら「綺麗」とつぶやいた。
━━俺のことは忘れても、大の仲良しだったあいつのことは忘れていないのか。
そう思うと嫉妬心が湧いてきた。選んだのは俺自身なのに、フェイの瞳と同じ色をした宝石を買うことが癪に障るとさえ思った。
でも、そんなことを言っている場合じゃなかった。シアが珍しく気に入ったんだ。彼女の気が変わる前にさっさと買ってしまわないといけなかった。
だから俺はシアが意見をする前に買うと宣言した。
━━そういえば、あいつはお揃いが好きだったよな。
紫の宝石を見ていたら、幼い頃のシアとフェイの姿が頭を過ぎった。
フェイはシアの装いを真似したがる癖があった。シアが花冠を作って自分の頭につける度にと、フェイは「私のもちょうだい」とねだっていた。そして、お揃いになると、フェイは俺に向かってこう言うのだ。
「見て! お揃い。かわいいでしょ?」
「そうだな」と俺が答えるとフェイは機嫌良くシアの周りをくるくると回るのが常だった。
幼い時の俺達の日常を思い出すと、胸の奥がほんのりと熱くなった。
━━たまにはあいつにも土産の一つくらい買ってやるか。
そう思ったから、残りの宝石も見てみた。
フェイの瞳の色と似た宝石は他にもあった。しかし、さっきのネックレスと比較してみると大きさや輝きでどうしても見劣りをしてしまう。
プライドの高いフェイの事だ。最高級品でないものを渡そうものなら「私の目はもっと美しいんだから!」と言って怒るに違いない。
━━それなら、いっそのこと視点を変えて、シアの瞳と同じ色の宝石を選ぼうか。
そう思った瞬間、一つの指輪が目に止まった。プラチナであろう指輪の中央には、小さいながらも緑色の宝石がついている。その優しい緑色はシアの瞳にそっくりだった。
そんなことを思っていると、夫人がシアの指に着けてみるように促してきた。
シアにあげるものではなかったが、せっかくだから彼女の指に嵌めてみた。精巧なデザインの指輪は繊細なシアの雰囲気にぴったりでよく似合っていた。
だが、その指輪は一回りサイズが大きく、シアの細い指には合わなかった。夫人はサイズを直すと言ってきたが俺はそれを断った。フェイなら指輪のサイズを自分自身で直せるのだ。無駄に時間と金を割くのはもったいないから、今の状態で渡せばいい。
俺の考えを知らない夫人は怪訝そうな顔で俺を見ていた。
だが、「妖精への贈り物だ」と言った所で、彼女が理解できるとは思えない。だから、俺はそれ以上何も言わず、購入の手続きを済ませた。
宝石商での買い物を済ませて馬車に戻ると、いつも以上にシアは物憂げだった。顔色も悪く、体調が悪いのかもしれない。本人は疲れていないと言っていたが、念のため、今日は宿に戻ることにした。
宿に着くと、俺達はすぐに昼寝をすることにした。ベッドで横になってシアが眠るのを待っていたが、いつまで経っても彼女は眠りそうにもなかった。
━━眠くはないのか?
それならもう少し、彼女を近くに感じたい。そう思ったから、俺は彼女を抱き寄せた。
「シア」
呼んでも彼女は知らんぷりだ。俺に背を向けたまま、寝たふりを決め込んでいる。
「好きだ」
彼女の顔が見えないせいか、好きという言葉が簡単に出てきた。いつもは言いたくても恥ずかしくて言えないのに。おかしなものだと自嘲する。
相変わらず何も反応しないシアの身体を俺は撫でる。そして、寂しさを埋めるように、起き上がって彼女の唇にキスをした。
「━━っ!」
寝たふりをしていたシアが目を開けた。びっくりした表情が可愛らしくてたまらない。
愛おしい彼女の小さな手にキスをして、頭を撫でた。
シアは俺のその行為を歓迎してはくれなかった。
初心な彼女に無理をさせているのだろうか。
それとも、まだ俺を“夫”としては見てくれていないのか。
考えれば考えるほど、切なさが増していった。
その時、扉を叩く音が聞こえた。宿の従業員が来客が来たことを知らせに来たのだ。
今はシアと一緒にいたいと思った。だから、他の奴に構うつもりはなかった。けれど、シアは応対しろと促してくる。やはり彼女は俺と一緒にいたくないらしい。
俺はざわめく胸の内を抱えたまま、部屋の扉を開けた。
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