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本編3
25-1 解ける誤解
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「夢って、もう叶ったでしょう? アンドリューは騎士となって、シアを悪い父親から救い出したんですもの。……まさか、彼の功績が足りないだなんて言わないわよね?」
私は首を振った。
私のために、危険を顧みず大きな武勲を立ててくれたアンディに対して、そんな我儘を言えるはずがなかった。
「アンディと交わした約束は果たされたわ。でも、フェイと語り合った夢はまだ叶ってないの」
そう言って、フェイは眉を顰めてしばらく考え込み、「ああ……」と声を漏らした。
「“シアの母親のためにも、あなた自身が幸せになって、周りの人間達も幸せにする”って話だったかしら?」
私は頷いた。
「私は幸せになって、みんなも幸せにするって言ったのに……。でも、今の私は、みんなに気を遣われて私の幸せを願われるばかりだった」
幼い頃にした約束を守って、迎えに来てくれたアンディ。
彼は不器用ながらも私に愛を表現しようとしていた。それなのに、私は自分の保身ばかり考えて、彼の愛を疑い、行動を勘繰っていたのだ。
そんな考えだったから、私は気づかないうちに自分で自分を不幸に追い込んでいたのだろう。
ジェシカが心配するのも無理はない。
━━私は逃げるように城を飛び出して、ジェシカの事を忘れかけていたというのに。……本当に、姉想いの優しい子なんだから。
私は今までの自分の愚かさを反省するとともに、ジェシカの身の安全が気になった。
「ジェシカを、……お父様から切り離さないと」
「そうね。あの碌でもない父親のもとには置いておけないわ」
フェイが同調した。
ジェシカはカーライル殿下の力を借りてお父様の罪を白日の下に晒すつもりでいる。けれど、失敗すれば、お父様がどんな報復をするか分からない。計画に抜かりがないかもう一度確認しよう。
それをフェイに話すと、彼女は「それは良いことだわ」と言った。
「妹の穏やかな暮らしを確保したら、他にはしたいことはあるの?」
フェイは静かに問いかけてきた。
「フェイは今、幸せ?」
逆に質問をすると、フェイはあごに手を当てて「それなりに」と答えた。
「悪くはないんだけどね。でも、シアとまた森の中で遊べたら毎日がもっと楽しくなるわ」
そう言うとフェイはいたずらっぽく笑った。そんな彼女を見ていると、また涙が流れてくる。
━━また、フェイとアンディと一緒にあの場所で暮らしたい。
そう思った瞬間、部屋の扉が開いた。
部屋に入って来たのはアンディだった。彼は私を見ると顔を歪めて、乱暴に扉を閉めた。
「フェイ!」
怒鳴るように大声で呼びかけるものだから、フェイは当然気を悪くした。
「何よ?」
むすっとした顔で返事をすると、彼女は腕を組んだ。
「お前も余計なことを言ったんだな!」
━━お前も? 余計なこと?
戸惑う私を他所に、二人は言い争いを始めた。
「アンドリューじゃあるまいし、私がそんなことをするはずないでしょ?」
「じゃあ、どうしてシアが泣いてるんだ!?」
突然私のことに触れられて、ドキッとした。
「そういうことは本人に直接聞きなさいよ!」
フェイがそう言うとアンディは私を見た。彼はさっきまで怖い顔でフェイに言葉を投げかけていた。それなのに私を見ると、怒っているというより、困ったとでも言いたげな顔をしてきた。
第二王子殿下との食事に行く前は、こんなに機嫌が悪くはなかったのに。一体、彼に何があったのかしら?
私が心配していることを知ってか知らずか、アンディは私に向き直った。
「シア」
彼は力強い目で私を見てこう宣言した。
「俺は、絶対に離婚しないからな!」
そう宣言した彼の気迫に押されて、私の涙はぴたりと止まった。
「う、うん……」
何と返事をしたら良いのか分からなくて、私はその一言で終わらせてしまった。
今までの彼ならそれで会話が終わっていただろう。けれど、今回は違った。
「俺は誰に何を言われようと、シアを手放す気はないし、信じてくれないかもしれないが俺はお前を……愛してるんだ」
最後の方は声が小さくなっていたけれど、彼は「愛してる」と確かに言っていた。
その言葉に、胸の鼓動が早くなっていくのを感じた。
「『愛してる』の一言にどれくらい時間をかけたのかしら……」
フェイは嫌味っぽく言ったにも関わらず、その顔はとても嬉しそうだった。そんなフェイをアンディは睨みつけると、彼女はわざとらしく舌を出して挑発した。
二人のやり取りを懐かしく思える。まだ全てを思い出せてはいないけれど、きっと、二人はこういうことを日頃からよくしていたのだろう。
私の口から笑い声が溢れると、アンディが私を見た。その顔はとても驚いているようだったから、私は彼に尋ねた。
「どうしたの、アンディ?」
私の問いに答えることはなく、彼は私を強く抱きしめた。
私は首を振った。
私のために、危険を顧みず大きな武勲を立ててくれたアンディに対して、そんな我儘を言えるはずがなかった。
「アンディと交わした約束は果たされたわ。でも、フェイと語り合った夢はまだ叶ってないの」
そう言って、フェイは眉を顰めてしばらく考え込み、「ああ……」と声を漏らした。
「“シアの母親のためにも、あなた自身が幸せになって、周りの人間達も幸せにする”って話だったかしら?」
私は頷いた。
「私は幸せになって、みんなも幸せにするって言ったのに……。でも、今の私は、みんなに気を遣われて私の幸せを願われるばかりだった」
幼い頃にした約束を守って、迎えに来てくれたアンディ。
彼は不器用ながらも私に愛を表現しようとしていた。それなのに、私は自分の保身ばかり考えて、彼の愛を疑い、行動を勘繰っていたのだ。
そんな考えだったから、私は気づかないうちに自分で自分を不幸に追い込んでいたのだろう。
ジェシカが心配するのも無理はない。
━━私は逃げるように城を飛び出して、ジェシカの事を忘れかけていたというのに。……本当に、姉想いの優しい子なんだから。
私は今までの自分の愚かさを反省するとともに、ジェシカの身の安全が気になった。
「ジェシカを、……お父様から切り離さないと」
「そうね。あの碌でもない父親のもとには置いておけないわ」
フェイが同調した。
ジェシカはカーライル殿下の力を借りてお父様の罪を白日の下に晒すつもりでいる。けれど、失敗すれば、お父様がどんな報復をするか分からない。計画に抜かりがないかもう一度確認しよう。
それをフェイに話すと、彼女は「それは良いことだわ」と言った。
「妹の穏やかな暮らしを確保したら、他にはしたいことはあるの?」
フェイは静かに問いかけてきた。
「フェイは今、幸せ?」
逆に質問をすると、フェイはあごに手を当てて「それなりに」と答えた。
「悪くはないんだけどね。でも、シアとまた森の中で遊べたら毎日がもっと楽しくなるわ」
そう言うとフェイはいたずらっぽく笑った。そんな彼女を見ていると、また涙が流れてくる。
━━また、フェイとアンディと一緒にあの場所で暮らしたい。
そう思った瞬間、部屋の扉が開いた。
部屋に入って来たのはアンディだった。彼は私を見ると顔を歪めて、乱暴に扉を閉めた。
「フェイ!」
怒鳴るように大声で呼びかけるものだから、フェイは当然気を悪くした。
「何よ?」
むすっとした顔で返事をすると、彼女は腕を組んだ。
「お前も余計なことを言ったんだな!」
━━お前も? 余計なこと?
戸惑う私を他所に、二人は言い争いを始めた。
「アンドリューじゃあるまいし、私がそんなことをするはずないでしょ?」
「じゃあ、どうしてシアが泣いてるんだ!?」
突然私のことに触れられて、ドキッとした。
「そういうことは本人に直接聞きなさいよ!」
フェイがそう言うとアンディは私を見た。彼はさっきまで怖い顔でフェイに言葉を投げかけていた。それなのに私を見ると、怒っているというより、困ったとでも言いたげな顔をしてきた。
第二王子殿下との食事に行く前は、こんなに機嫌が悪くはなかったのに。一体、彼に何があったのかしら?
私が心配していることを知ってか知らずか、アンディは私に向き直った。
「シア」
彼は力強い目で私を見てこう宣言した。
「俺は、絶対に離婚しないからな!」
そう宣言した彼の気迫に押されて、私の涙はぴたりと止まった。
「う、うん……」
何と返事をしたら良いのか分からなくて、私はその一言で終わらせてしまった。
今までの彼ならそれで会話が終わっていただろう。けれど、今回は違った。
「俺は誰に何を言われようと、シアを手放す気はないし、信じてくれないかもしれないが俺はお前を……愛してるんだ」
最後の方は声が小さくなっていたけれど、彼は「愛してる」と確かに言っていた。
その言葉に、胸の鼓動が早くなっていくのを感じた。
「『愛してる』の一言にどれくらい時間をかけたのかしら……」
フェイは嫌味っぽく言ったにも関わらず、その顔はとても嬉しそうだった。そんなフェイをアンディは睨みつけると、彼女はわざとらしく舌を出して挑発した。
二人のやり取りを懐かしく思える。まだ全てを思い出せてはいないけれど、きっと、二人はこういうことを日頃からよくしていたのだろう。
私の口から笑い声が溢れると、アンディが私を見た。その顔はとても驚いているようだったから、私は彼に尋ねた。
「どうしたの、アンディ?」
私の問いに答えることはなく、彼は私を強く抱きしめた。
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