大東亜戦争小噺

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南雲さん9

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 「利根 目標物から200m左に逸れている修正ねがう」
 「筑摩 もうちょい 100m前方に狙いを定めてくれ」
観測機からそれぞれの修正情報が両艦に届く。
利根、筑摩両艦の20mm連装砲4基が咆哮する。
今まで出番がなかった鬱憤を晴らすかのようにミッドウェー島に
艦砲射撃をしていた。
 「岡田に吉村派手に撃っているな」
 「相手は敵艦ではなく島ですけれど 鬱憤晴らしにはなるかと」
南雲の言葉のあとを草鹿が続いた。
 「しかし残念でしかたありません」
源田が悔しそうにぼやいた。
 「索敵がまずかったのか 高度は足りていたのか 方角が間違っていたのか
  何としてもレキシントンを我が手で沈めたかった・・・」
 「源田 いい加減に諦めろ 会敵運が無かったのだ」
1航空はレキシントン率いる部隊と会敵できなかつた。
南雲はそこで攻撃目標をミッドウェー島に切り替えた。
源田は当然反対したが南雲は無視した。
米本土から潜水艦3隻が真珠湾目指してきているはず、レキシントンの部隊と
挟み撃ちにあうリスクは避けたいと判断してのだった。
翌日ダイヤモンドヘッド沖30キロから1航空を追っていたイ6からの敵空母部隊
発見の知らせを受けた第1、第2潜水部隊、哨戒部隊の計11艦の潜水艦が
群狼よろしく雷撃戦を開始しレキシントン等主だった艦船を撃沈したのだった。
その知らせを受けて潜水艦担当参謀ぼ渋谷中佐は源田中佐に向かって”ごっつあんです”
のジェスチャーをしたのだった。源田は地団駄をふんで悔しがっていた。
南雲は先日真珠湾攻撃を終えた後大本営がハルノートの全文を世間に公表した
事に驚いた。国民に対米感情に火に油を注ぐ様なことをして大丈夫なのかと・・・。
(東條ではないだろ 彼にそんな度胸はないはず となると今上かな・・・
 この世界線では今上が力を持っているのかな・・・)
(内地へ行けばわかるかもしれない いかしこのまま俺は南雲でいられるのか・・・)

「うはは やってやったわい ざまぁみろ」
「山口司令 やりました おめでとうございます」
「うんうん」
開戦劈頭 世界初の空母対空母の戦に勝利した山口少将は満面の笑みを浮かべていた。
思えば真珠湾攻撃に航続距離が短いため外されていた2航空であったが、山口は
山本長官に直談判してごねにごねた。”泳いででも行く”と言ったあたりで
山本長官が根負けして参加を認めさせた経緯があった。
しかし2航空もそれなりに損害を被っていた。
(永野さんにどやされるが まっ 仕方がないかw)
山口少将は意気揚々と内地へ向け帰投していった。

一方内地では村や町、街ではお祭り騒ぎになっていた。初戦とはいえ完勝しかも
ハルノートの件も合わさって日本国中”ワッショイ”状態であった。
歓楽街では海軍の兵隊は階級に関係なく歓迎されていた。
店主が”今日は店の奢りです パァーといきましょう”と言って大盤振る舞いしていた。
皇居前では途切れる事がない長蛇の提灯行列が続いていた。

ルーズベルトは日本が真珠湾を攻撃した知らせを聞いた時ガッツポーズをした。
(これで戦争ができるあとはもう一度ドイツを挑発して奴らに宣戦布告させる
 ことだな)
1939年イギリスの船団に米国の駆逐艦を紛れ込ませUボートに爆雷攻撃を
仕掛け挑発したがUボートはその挑発にのらず米国の思惑は外れた。
第1次世界大戦で米国が参戦する切っ掛けを作ってしまったルシタニア号事件を
ドイツ人は忘れてはいなかったのだった。
ルーズベルトは第2のルシタニアを模索していた。
 「大統領 大変です日本がハルノートを世間に発表しました」
 「なに ほんとうか なんてことだ それは不味い」
ここでも米国の思惑が外れた。
ハルノートは議会の承認を得ていないいわばルーズベルトの私文書なのだった。
これが公になってしまった時点でルーズベルトは米国の国民を裏切った事になった。
彼は大統領選で国民に向かって戦争はしないと公言して当選したにもかかわらず
裏では着々と戦争の準備をしていたのだった。
結果 ルーズベルトは弾劾裁判にかけられたが裁判の途中心臓発作で死亡した。
あとを引き継いだトルーマンはなんとか世論を纏めようとしていたが
ハミルトン・フィッシュが議会で米国が中国大陸で秘かに軍事行動している
証拠を暴露したため(フライングタイガー隊とパットン少将の国民党軍の軍事
支援等)米国内は議会、国内世論が紛糾 その際所謂”赤狩り”がはじまった。
米国は日本に反攻したくても出来ない状態が続いた。

時間を開戦当日にもどすとドイツでは・・・・
総統執務室に続く長い廊下を1人の軍人が長靴の靴音を残して歩いていた。
その男の顔面は先の大戦で銃弾をうけた痕がはっきりとのこっていた。
総統執務室の前に来るとドア前にオロオロしている男の前にたった。
「どうした ゲッペルス宣伝相 なにかあったのか?」
「ハイル ヒトラー」
「うん」
「レーム副総統 なんといってよいのか 総統が・・・」
「総統がどうした?」
「はい 実は日本からハルノートの全文が公表されたのを総統に
 おみせしたのです」
「うん それで」
「お見せした途端 総統は床に笑い転げてしまったのですがそれも一瞬で
 立ち上がった途端 女性の様な悲鳴声をあげ取り付く間もなく部屋から
 追い出されたのです」
「女の様な悲鳴をあげた… 訳がわからん」
「はい 私もどうしてよいのか戸惑っています」
「ん~ 取り敢えず 黙っとけ 私が対処するいいな」
「はい わかりました」
「ここで待っていろ」
レームはドアを開け中に入っていった。
「アドルフ どうした 何か悪いものでも食べたのか
 お前が女のような悲鳴をあげるなんてよ」
「キャー 今度は怖い顔したおやじが来た シッシッ あっちいけ」
「あー 何をいっている アドルフ 俺はお前のダチのエルンストだぞ」
「アドルフ? エルンスト? なにそれ知らないわよ 私は由美 立花由美」
「ああ もう 明日は宝塚受験だから早めに床に就いたのに・・・
 目覚めてみたらギョロメの不気味な男が立ってるし 鏡で自分の姿を
 見たらちょび髭をはやしたチャップリンみたいな男になってるし」
「どうして なんで なのー」
「・・・ お前もか・・・」

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