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第一章 女王の婚約者
若き女王と乙女心
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「皆様方、マグノリア王国首都ロジエに到着致しました。
さぁ、降りて下さい」
皆が眠っている間に着いたらしい。
王国兵に起こされると重い腰を上げ地に降り立つ。
「ここがマグノリアのロジエ……。
なんて綺麗な所なんだ」
女の子達は呆気にとられているのか感嘆の声しか出せずにいる。
代々女性が即位することもあり街の景観にも気を配っているらしく、至る所に色とりどりの華や可愛らしい建造物が並んでいる。
「本日はこちらにお泊まり下さい。
明日また、お呼びに参りますゆえ。
それでは」
「あ、あぁ」
街に目を奪われている所に言われ、返事もおざなりになってしまった。
こちらと言われた目の前の建物にも華が飾られ【癒やしの宿】と看板が出ている。
皆を促し宿の扉をくぐると、なんとも綺麗な女性達が迎えてくれた。
「ここに泊まれと言われたんだが……」
「はい、お話は伺っております。
どうぞこちらへ、ご案内致します」
三階に昇り案内された部屋は、明らかに一般には開放されてない大きく豪華な部屋だった。
が、男性は別室と言われた部屋は多少豪華ではあるが、さほど広くもなく案外普通の一人部屋であった。
「お一人ですのでこちらでも宜しいでしょうか?」
多少なりとも申し訳無さげに話し、オレも断る理由もなかったので従うしかなかった。
「レイヴ、ご飯食べに行こうにゃ」
ミィの誘いで外へ飯でも食べに行くことにした。
あまりに綺麗な街なので少し見て周りたい気分でもある。
夜も深くなっていたのか店終いしている店もあったがなんとか食事にありつけた。
「それにしても綺麗なとこだな」
「本当そうにゃ。
お花畑の中に街があるみたいにゃ」
「みてみて、メニューもお花で作ってるのあるよ」
ルニに差し出されたメニューの中には花のお茶や食べ物がずらりと並んでいた。
こんなにも穏やかそうな国を治めている女王が、何の目的でオレ達を呼んだのか余計に分からなくなる。
「あなたも剣闘技祭に出場なされるのですか?」
唐突に話しかけてきたのは沢山の料理を運んで来た女性だった。
「剣闘技祭?」
「あら、違いましたか。
近々王城で開かれる闘技祭ですわ。
剣だけで競い上位の方は騎士になれますのよ。
ほら、あちらの方々は出場なさるそうですわ」
女性の視線の先にはなんとも迫力のある男性達が酒を交わしていた。
「そんなに有名な祭なのかい?」
「そうですわね。
この国の騎士になれるのと、女王様と婚姻出来る可能性がありますからね。
沢山の方が出場なされますわ」
「結婚まで出来るのかい?」
「えぇ、女王様はお強い方と結ばれるのを求めておいででして、剣闘技を行い強い者を集めています。
そのおかげで平和が保たれているのですわ」
「なるほどね。
機会があれば出てみるよ」
強い騎士団を構成し他国からの介入を許さない訳か。
となると、オレ達が呼ばれたのは剣闘技祭における何かで問題が起きたのだろう。
まあ、それも明日になれば分かることか。
「レイヴ様、王城よりお迎えが参りました」
ドアのノックに続き、女中の声が聞こえる。
昨晩はなかなか寝付けず迎えが来るまで寝ていようと決めていた。
夕食後、宿に戻ると浴場があると聞き皆で行ったは良いものの、女湯からはしゃぐ声が聞こえてきていた。
思春期の男がいるにも関わらずだ。
おかげで中々寝付けずにいたのだが、どうやら迎えが来たらしい。
「今行くと伝えてくれ」
かしこまりましたとの返事の後、遠ざかる足音を聞きながら寝床から這いずる様に出ると身支度を済ませ、昨日の兵士と合流し王城へと案内される。
「城もまた近くで見ると綺麗なものだな」
感想を漏らすと口々に同調している。
「おっきいにゃ、凄いにゃ!」
ミィは城を間近で見たのが初めてなので余計に興奮しているようだ。
城壁を越え城門をくぐり兵に付いて行くと、大きな扉の前で止まった。
扉に立つ二人の兵にオレ達の事を話すと待つよう言われたが直ぐに中に通された。
「よくぞ参られました。
あなた方が噂に聞く『猫耳バスターズ』ですのね」
薄赤色の絨毯が真っ直ぐに伸びた先に座る、幼さの残る女性が口を開く。
この女性が女王らしく、幼さと貫禄とが何とも対照的である。
「陛下の御前だ、頭を下げぬか!」
女王の隣に立つ初老の男が声を荒げるが、それを制すると話を続ける。
「良いのです、ディバイル。
私が呼んだ客人です。
その必要はありません。
あとは私達だけにして頂けないかしら?」
「しかし、陛下!」
「あら、この方達が私を殺そうとでも?
女の子達もいる中で?
まさか、そんなことありませんわよね?」
ディバイルと呼ばれた男から視線を外し急にオレ達に笑顔で問い掛ける。
「ま、まぁ、呼ばれなければ来る予定もなかったしな。
それにオレ達はそんな物騒じゃないから」
頭を掻きつつ本音を漏らす。
しまったと思ったが時既に遅しで、ディバイルがオレを睨み付けている。
揉めてる時は戸惑いを装っていれば良いものだったのだが。
「ほら、みなさい。
他の方達も皆下がって下さい。
宜しいですね?」
最後までディバイルは納得いかない様子であったが、扉へ向かうと周りにいる騎士達も顔を見合わせ、しぶしぶといった感じだろうかゆっくりと退出して行った。
最後の騎士が退出し静かになったところで女王は座り直し、前のめりになるとオレを見つめてきた。
「ふぅ。
さて、と。
何でも屋なんでしょ?
あなた達」
「そうだが……そうですが、どのような用件でオレ達を?
呼ばれたのでしょうか?」
女王ということを忘れていた。
一応、言い直してはみたが手遅れだろう。
「そんな堅苦しい感じ要らないわ。
誰も居ないんだし。
私だってずっと威厳を保つのも疲れるのよ。
私はあの真紅のクレア女王のようにはなれないわ」
今まで物珍しさに静かにしていたミィが服の袖を引き耳内してきた。
「クレアって誰にゃ?」
真紅のクレア――剣と魔法だけの旧時代に一介の騎士から強国を作り上げ、平和に尽力した王の手本とも言われている人物だ。
ただ今は話を進めたいので無視することにする。
「は、はぁ。
ならどんな理由で?
剣闘技祭で何か問題でも起きたのか?」
「んーちょっと違うんだけど、合ってるといえば合ってるのかな。
あなた――私と結婚しなさい」
「は…………。
え――ええぇ!!」
場が一瞬静まり返った刹那、一斉に驚愕の声が揃って上がった。
「ちょっ、ちょっと待つにゃ!
結婚って、結婚って、そのあの一緒になるって、そういうことだよにゃ!?」
「えぇ。
そういうことよ。
何か問題でも?
あら、あなた好きなの?
彼のこと」
女王の言葉に全員がミィに視線を送るが、そんなバカな話だ。
相手は人間でありミィに酷いことをしてきた種族だ。
「ち、違うにゃ!
そ、そんなことはないにゃ、絶対ないにゃ!」
全力で否定している、聞くまでもないことだ。
今は仲間でありパートナーとしているだけなのだから。
「なら良いでしょ?
何でも屋なんですし、そのくらいは出来ない話ではないでしょう?
私と結婚するくらい」
「ダメにゃ!
ぜぇったいダメにゃ!」
なんでミィが否定するのか。
何か理由があるのだろう、こんなことを依頼してくるならば。
「理由があるんだろ?
どういうことだい?」
「ん?
理由がなきゃダメ?
あなた私のタイプだし、そろそろ一人身も寂しいし」
「ダメにゃ!
気持ちがないとダメにゃ!」
「気持ち……一目惚れって気持ちでしょ?
なら気持ちもあるわよね?」
「にゃぁ……でもダメにゃ!
そんな依頼は受けられないのにゃ!
レイヴ、ダメ……」
女の言い争いというのはこうもめんどくさいものなのか。
黙らないミィの口を塞ぎ、改めて真意を聞いてみる。
「女王ともあろう方が何でも屋がいるからといって結婚を頼むなんて、本当にそれだけの理由かい?」
「そうね。
いいわ、理由を話すわ。
代わりに承諾してくれたらだけど。
どうかしら?」
口を塞がれているミィの鼻息が絶対にダメだと言っているが、どうしたものか。
困って姉妹を見てみるが、ルニは上の空でリズは飽きたのか、しゃがみ込み絨毯で遊んでいる。
「理由があるのなら……いいか。
分かった、結婚しよう」
「いいのね、ホントにいいのね?
それなら今宵、宴を催すわ。
あなたを皆に紹介する為に。
私の結婚ですので煌びやかに致しますわ」
「それで?
理由はいつ話してくれるんだい?」
「紹介して暫くしたら私があなたを自室に連れて行くわ。
そこでお話しましょ」
「分かった。
それで宴までどうしたらいい?
婚約者として城に居たほうが良いのか?」
「別に居なくていいわ、帰っても。
そうね……街にでもいてくれたら迎えを送るわ」
何が何だか掴み所のない依頼者だ。
ただ、わざわざオレ達を呼び理由がある以上、何か手に負えないことでもあるのだろう。
依頼を承諾し、女王の指示通り街に戻ったオレ達だが、騒がしかったミィの元気が全く無くなっていた。
「ミィどうした?
お腹でも空いたのか?
今、店にでも寄るから待ってな」
「いや……別にいいにゃ……」
なんだか、調子が狂ってしまう。
そんなにこの依頼が嫌だったのか?
「わたし……宿に戻ってるにゃ……」
そう話すと俯きながら行ってしまった。
「ちょっ……あぁ、まぁいいか。
なぁルニ達は飯でも食うか?」
行ってしまったミィの背を眺め、ルニ達に聞いて見るが苛立った表情でオレを見る。
「バカ!!
ミィを放っておけないでしょ!
行くよリズ」
罵声を浴びせられ、立ち竦むオレを行き交う人々が眺めている。
このままここにいるのも気が引けるので店に向かうことにする。
女心とは、かくも難しいものだ。
独り食事にし、女王の口から出た真紅の女王に関する言い伝えを思い出していた。
一人、赤髪の騎士、王とならん
一人、緑の賢者、国を救う
一人、白き神官、聖母とならん
一人、黒き戦士、闇に堕ちる
一人、人を憎み、業を背負う
言い伝えの五人の一人がクレア女王だ。
真っ赤な長髪をなびかせ戦場を駆け回ったその姿が、炎が舞い踊るように見えることから『炎舞の騎士』と呼ばれていたらしい。
数百年前、騎士として仕えていた国から特命を受け旅をしている中、二国間の戦争を止めた計らいから属領の島を与えられ国としての権限を与えられると女王となった。
炎舞のクレアを慕い集まった兵により強国となると、真紅の旗を掲げ、いつしか真紅の王国と呼ばれるようになった。
その後、侵略を続ける国に対し乗り出しては平和の為に奔走したらしいが、3代目の王になると侵略国となり滅ぼされた。
オレの育ての親であるアフメド爺さんから聞いた昔話だが、歴史の一部らしい。
そんな昔話と共に食事をしていると、ミィ達が戻って来た。
元気になっている様子はないが、姉妹のおかげか少しは笑みを見せている。
「さぁ、ミィ達も食べてゆっくりしよう。
これから、どうなるのか分からないんだから」
「うん、そうだにゃ。
別にまだ大丈夫なんだにゃ。
うん、食べるにゃ」
何だか一人で納得しているが飯を食べれる心情になっていたことに安心し、他愛のない話をしながら夜までゆっくりと過ごした。
さぁ、降りて下さい」
皆が眠っている間に着いたらしい。
王国兵に起こされると重い腰を上げ地に降り立つ。
「ここがマグノリアのロジエ……。
なんて綺麗な所なんだ」
女の子達は呆気にとられているのか感嘆の声しか出せずにいる。
代々女性が即位することもあり街の景観にも気を配っているらしく、至る所に色とりどりの華や可愛らしい建造物が並んでいる。
「本日はこちらにお泊まり下さい。
明日また、お呼びに参りますゆえ。
それでは」
「あ、あぁ」
街に目を奪われている所に言われ、返事もおざなりになってしまった。
こちらと言われた目の前の建物にも華が飾られ【癒やしの宿】と看板が出ている。
皆を促し宿の扉をくぐると、なんとも綺麗な女性達が迎えてくれた。
「ここに泊まれと言われたんだが……」
「はい、お話は伺っております。
どうぞこちらへ、ご案内致します」
三階に昇り案内された部屋は、明らかに一般には開放されてない大きく豪華な部屋だった。
が、男性は別室と言われた部屋は多少豪華ではあるが、さほど広くもなく案外普通の一人部屋であった。
「お一人ですのでこちらでも宜しいでしょうか?」
多少なりとも申し訳無さげに話し、オレも断る理由もなかったので従うしかなかった。
「レイヴ、ご飯食べに行こうにゃ」
ミィの誘いで外へ飯でも食べに行くことにした。
あまりに綺麗な街なので少し見て周りたい気分でもある。
夜も深くなっていたのか店終いしている店もあったがなんとか食事にありつけた。
「それにしても綺麗なとこだな」
「本当そうにゃ。
お花畑の中に街があるみたいにゃ」
「みてみて、メニューもお花で作ってるのあるよ」
ルニに差し出されたメニューの中には花のお茶や食べ物がずらりと並んでいた。
こんなにも穏やかそうな国を治めている女王が、何の目的でオレ達を呼んだのか余計に分からなくなる。
「あなたも剣闘技祭に出場なされるのですか?」
唐突に話しかけてきたのは沢山の料理を運んで来た女性だった。
「剣闘技祭?」
「あら、違いましたか。
近々王城で開かれる闘技祭ですわ。
剣だけで競い上位の方は騎士になれますのよ。
ほら、あちらの方々は出場なさるそうですわ」
女性の視線の先にはなんとも迫力のある男性達が酒を交わしていた。
「そんなに有名な祭なのかい?」
「そうですわね。
この国の騎士になれるのと、女王様と婚姻出来る可能性がありますからね。
沢山の方が出場なされますわ」
「結婚まで出来るのかい?」
「えぇ、女王様はお強い方と結ばれるのを求めておいででして、剣闘技を行い強い者を集めています。
そのおかげで平和が保たれているのですわ」
「なるほどね。
機会があれば出てみるよ」
強い騎士団を構成し他国からの介入を許さない訳か。
となると、オレ達が呼ばれたのは剣闘技祭における何かで問題が起きたのだろう。
まあ、それも明日になれば分かることか。
「レイヴ様、王城よりお迎えが参りました」
ドアのノックに続き、女中の声が聞こえる。
昨晩はなかなか寝付けず迎えが来るまで寝ていようと決めていた。
夕食後、宿に戻ると浴場があると聞き皆で行ったは良いものの、女湯からはしゃぐ声が聞こえてきていた。
思春期の男がいるにも関わらずだ。
おかげで中々寝付けずにいたのだが、どうやら迎えが来たらしい。
「今行くと伝えてくれ」
かしこまりましたとの返事の後、遠ざかる足音を聞きながら寝床から這いずる様に出ると身支度を済ませ、昨日の兵士と合流し王城へと案内される。
「城もまた近くで見ると綺麗なものだな」
感想を漏らすと口々に同調している。
「おっきいにゃ、凄いにゃ!」
ミィは城を間近で見たのが初めてなので余計に興奮しているようだ。
城壁を越え城門をくぐり兵に付いて行くと、大きな扉の前で止まった。
扉に立つ二人の兵にオレ達の事を話すと待つよう言われたが直ぐに中に通された。
「よくぞ参られました。
あなた方が噂に聞く『猫耳バスターズ』ですのね」
薄赤色の絨毯が真っ直ぐに伸びた先に座る、幼さの残る女性が口を開く。
この女性が女王らしく、幼さと貫禄とが何とも対照的である。
「陛下の御前だ、頭を下げぬか!」
女王の隣に立つ初老の男が声を荒げるが、それを制すると話を続ける。
「良いのです、ディバイル。
私が呼んだ客人です。
その必要はありません。
あとは私達だけにして頂けないかしら?」
「しかし、陛下!」
「あら、この方達が私を殺そうとでも?
女の子達もいる中で?
まさか、そんなことありませんわよね?」
ディバイルと呼ばれた男から視線を外し急にオレ達に笑顔で問い掛ける。
「ま、まぁ、呼ばれなければ来る予定もなかったしな。
それにオレ達はそんな物騒じゃないから」
頭を掻きつつ本音を漏らす。
しまったと思ったが時既に遅しで、ディバイルがオレを睨み付けている。
揉めてる時は戸惑いを装っていれば良いものだったのだが。
「ほら、みなさい。
他の方達も皆下がって下さい。
宜しいですね?」
最後までディバイルは納得いかない様子であったが、扉へ向かうと周りにいる騎士達も顔を見合わせ、しぶしぶといった感じだろうかゆっくりと退出して行った。
最後の騎士が退出し静かになったところで女王は座り直し、前のめりになるとオレを見つめてきた。
「ふぅ。
さて、と。
何でも屋なんでしょ?
あなた達」
「そうだが……そうですが、どのような用件でオレ達を?
呼ばれたのでしょうか?」
女王ということを忘れていた。
一応、言い直してはみたが手遅れだろう。
「そんな堅苦しい感じ要らないわ。
誰も居ないんだし。
私だってずっと威厳を保つのも疲れるのよ。
私はあの真紅のクレア女王のようにはなれないわ」
今まで物珍しさに静かにしていたミィが服の袖を引き耳内してきた。
「クレアって誰にゃ?」
真紅のクレア――剣と魔法だけの旧時代に一介の騎士から強国を作り上げ、平和に尽力した王の手本とも言われている人物だ。
ただ今は話を進めたいので無視することにする。
「は、はぁ。
ならどんな理由で?
剣闘技祭で何か問題でも起きたのか?」
「んーちょっと違うんだけど、合ってるといえば合ってるのかな。
あなた――私と結婚しなさい」
「は…………。
え――ええぇ!!」
場が一瞬静まり返った刹那、一斉に驚愕の声が揃って上がった。
「ちょっ、ちょっと待つにゃ!
結婚って、結婚って、そのあの一緒になるって、そういうことだよにゃ!?」
「えぇ。
そういうことよ。
何か問題でも?
あら、あなた好きなの?
彼のこと」
女王の言葉に全員がミィに視線を送るが、そんなバカな話だ。
相手は人間でありミィに酷いことをしてきた種族だ。
「ち、違うにゃ!
そ、そんなことはないにゃ、絶対ないにゃ!」
全力で否定している、聞くまでもないことだ。
今は仲間でありパートナーとしているだけなのだから。
「なら良いでしょ?
何でも屋なんですし、そのくらいは出来ない話ではないでしょう?
私と結婚するくらい」
「ダメにゃ!
ぜぇったいダメにゃ!」
なんでミィが否定するのか。
何か理由があるのだろう、こんなことを依頼してくるならば。
「理由があるんだろ?
どういうことだい?」
「ん?
理由がなきゃダメ?
あなた私のタイプだし、そろそろ一人身も寂しいし」
「ダメにゃ!
気持ちがないとダメにゃ!」
「気持ち……一目惚れって気持ちでしょ?
なら気持ちもあるわよね?」
「にゃぁ……でもダメにゃ!
そんな依頼は受けられないのにゃ!
レイヴ、ダメ……」
女の言い争いというのはこうもめんどくさいものなのか。
黙らないミィの口を塞ぎ、改めて真意を聞いてみる。
「女王ともあろう方が何でも屋がいるからといって結婚を頼むなんて、本当にそれだけの理由かい?」
「そうね。
いいわ、理由を話すわ。
代わりに承諾してくれたらだけど。
どうかしら?」
口を塞がれているミィの鼻息が絶対にダメだと言っているが、どうしたものか。
困って姉妹を見てみるが、ルニは上の空でリズは飽きたのか、しゃがみ込み絨毯で遊んでいる。
「理由があるのなら……いいか。
分かった、結婚しよう」
「いいのね、ホントにいいのね?
それなら今宵、宴を催すわ。
あなたを皆に紹介する為に。
私の結婚ですので煌びやかに致しますわ」
「それで?
理由はいつ話してくれるんだい?」
「紹介して暫くしたら私があなたを自室に連れて行くわ。
そこでお話しましょ」
「分かった。
それで宴までどうしたらいい?
婚約者として城に居たほうが良いのか?」
「別に居なくていいわ、帰っても。
そうね……街にでもいてくれたら迎えを送るわ」
何が何だか掴み所のない依頼者だ。
ただ、わざわざオレ達を呼び理由がある以上、何か手に負えないことでもあるのだろう。
依頼を承諾し、女王の指示通り街に戻ったオレ達だが、騒がしかったミィの元気が全く無くなっていた。
「ミィどうした?
お腹でも空いたのか?
今、店にでも寄るから待ってな」
「いや……別にいいにゃ……」
なんだか、調子が狂ってしまう。
そんなにこの依頼が嫌だったのか?
「わたし……宿に戻ってるにゃ……」
そう話すと俯きながら行ってしまった。
「ちょっ……あぁ、まぁいいか。
なぁルニ達は飯でも食うか?」
行ってしまったミィの背を眺め、ルニ達に聞いて見るが苛立った表情でオレを見る。
「バカ!!
ミィを放っておけないでしょ!
行くよリズ」
罵声を浴びせられ、立ち竦むオレを行き交う人々が眺めている。
このままここにいるのも気が引けるので店に向かうことにする。
女心とは、かくも難しいものだ。
独り食事にし、女王の口から出た真紅の女王に関する言い伝えを思い出していた。
一人、赤髪の騎士、王とならん
一人、緑の賢者、国を救う
一人、白き神官、聖母とならん
一人、黒き戦士、闇に堕ちる
一人、人を憎み、業を背負う
言い伝えの五人の一人がクレア女王だ。
真っ赤な長髪をなびかせ戦場を駆け回ったその姿が、炎が舞い踊るように見えることから『炎舞の騎士』と呼ばれていたらしい。
数百年前、騎士として仕えていた国から特命を受け旅をしている中、二国間の戦争を止めた計らいから属領の島を与えられ国としての権限を与えられると女王となった。
炎舞のクレアを慕い集まった兵により強国となると、真紅の旗を掲げ、いつしか真紅の王国と呼ばれるようになった。
その後、侵略を続ける国に対し乗り出しては平和の為に奔走したらしいが、3代目の王になると侵略国となり滅ぼされた。
オレの育ての親であるアフメド爺さんから聞いた昔話だが、歴史の一部らしい。
そんな昔話と共に食事をしていると、ミィ達が戻って来た。
元気になっている様子はないが、姉妹のおかげか少しは笑みを見せている。
「さぁ、ミィ達も食べてゆっくりしよう。
これから、どうなるのか分からないんだから」
「うん、そうだにゃ。
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