ネコ耳ばすた~ず 1

七海玲也

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第一章 女王の婚約者

ルニとリズ

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「多分、この街を根城にしてると思うんだが」

 夜になっても賑わいを見せる街。
 いや、むしろ夜になってから賑わうのだろう、色々な欲求を満たす店が軒並み立ち並んでいた。
 ここのどこかにミィを捕まえようと追ってきている黒服の連中が潜んでいるとの情報なのだが、それ以外の手掛かりがない以上は探しようがなかった。

「聞いて回ったらダメかにゃ?」

 この質問には吹き出してしまった。

「ダメだろ。
 ヤツらの耳にでも入ったら厄介なことになっちまう」

 かと言って、それらしい人がいる訳でもなく、怪しい建物を見つけていくしか手がないように思えた。

「おっと、ごめんよ。
 大丈夫か?」

 建物に気を取られ女の子とぶつかってしまった。
 みすぼらしい格好をした二人。
 姉妹だろうか、オレ達とさほど変わらない子と人形を抱えた子。
 しかし何故こんな夜にこんな街に二人でいるか。

「大丈夫。
 お兄さん、お店探してるの?
 案内するよ?」

 口を開いたのは姉であろう女の子だが、あまり感情が感じられない。

「いや、まぁ探してはいるけど、ちょっと違うんだ。
 お店っていうのはどんなのだい?」

「可愛い子がいっぱい居るお店」

 ちょっと待て。
 こんな子達が歓楽街の客引きなのか?

「なんで君達が客を探してるんだ?
 まさか娼婦なのか?」

「違うよ……娼婦見習い……。
 こうでもしなきゃ妹と暮らしていけないから……」

 こんな子達を使っている連中には虫唾むしずが走る。が、ふと閃いた。

「良かったら店の近くまで案内してくれないか?」

「なんで行くのかにゃ!?
 女の子と遊んでる場合じゃないにゃ!」

 唐突に店へ行くと言い出したので口調を荒げつつも小声で耳打ちをしてくる。
 もしも、これがいかがわしい店だと知っていたらこんなもんじゃ済まなかっただろう。

「いいの?
 来てくれるの?」

 少女は嬉しさを装う様に聞いてきたが、オレの答えは求められているものとは違った。

「あくまでも店の近くまででいい。
 少し知りたいことがあるんだ。
 いいかい?」

「え、えっと。
 うん、いいけど」

 仕方なしにといった感じだったが、妹がミィの袖を掴んで離さないのにも気づいていたのだろう。
 ミィはずっと掴まっている妹に色々と話しかけているが、特に返事は返ってこず困っていた。
 だからといって引き離すには可哀相なので、そのまま付いて来るよう耳打ちした。

 案内されるがまま建物の間を通り抜け、幾つか角を曲がると姉は立ち止まった。

「あそこが私達のお店。
 ここでいいの?」

 指の指された方には煌びやかな装飾の施された建物がある。
 そこには、綺麗な女性が立ち行き交う男に声をかけていた。

「あぁ、ここまででいい、ありがとう。
 ちなみに、名前は何て言うんだい?」

「私はルニ。
 この子はリズ。
 さあ、リズ離れて。
 行くよ」

 リズと呼ばれた妹をミィから引き離し戻ろうとしていたので、オレは考えていたことを口にしてみた。

「なぁ、一ついいか?
 もし、こんな仕事しなくて良いのなら嬉しいか?」

「えっ?
 それはそうだけど……。
 あなたが私達を食べさせてくれるとでも?」

 声は相変わらず感情に乏しいが、瞳の輝きが僅かに戻ったのを見逃さなかった。

「あぁ、こんな仕事からは解放してやる。
 だから少しだけ待っててくれ。
 約束だ」

 姉のルニは急に涙を浮かべると背を向けた。

「こんなこと言われたの……初めて。
 約束……だからね」

「あぁ、必ずだ」

 リズは姉を心配そうに見上げ初めて声を発した。

「お姉ちゃん泣いてるの?
 どこか痛いの?
 リズ悪いことした?」

 今まで姉として弱さを見せなかったのだろう、妹を守ろうとする一身で。

「ううん、大丈夫――大丈夫だよ。
 リズはこのお姉ちゃんと一緒に居たい?」

「うん!
 リズ、ミィが好き」

「なら少しだけ我慢して。
 すぐミィさんと居れるようになるって、お兄さんが約束してくれたから」

 ルニが諭すように話すとリズがオレを見上げた。

「ホント?
 お兄ちゃん」

 真っ直ぐな瞳で見つめてくる。
 これには応えてやらなきゃならないと胸を締め付けられた。

「あぁ。
 すぐミィと一緒に居れるからな。
 それまで我慢だぞ」

「うん!
 リズ頑張る!」

「良い子だ。
 ルニ、少しだけ今までと同じようにしててくれ。
  もし何かあったら、街の入口にあった宿にいてくれたらいい」

「分かった。
  普段通りにしてる」

「こっちも何かあれば捜すから、少し待っててくれ」

 コクリと頷くと、リズの手を取り夜の待ちへと姿を消した。
 




 そうして目の前にいる姉妹、ルニとリズと出会ったが、あの時から比べると感情が豊かに感じられる。
 その後、魔都ルドルに向かったのでアル達に姉妹を託すことになったのだが、まさか自力でオレ達を捜そうとしてたとは。

 笑顔に戻ったルニに今度はオレが質問した。

「それで彼等はどうしたんだ?」

「うん、良くしてくれてたよ。
 色んなことに首を突っ込んでは、その度に依巳莉えみりに怒られてたけど。
 私達がミィ達を捜すって言ったときも一緒に来るって言ってくれてたんだけど……」

「何があった?」

「セレンがね、セレンが呪いに冒されて……。
 助ける為に危ない所に行くって。
 だから私達は邪魔にならないように、自分達だけで頑張るってお別れしてきたの」

 そんなことが……。
 今回の依頼が終わったらアル達の所に行くのも良いかも知れない。
 姉妹を助ける時や魔弾製造所でも世話になったのでこの借りは返したい。

 そんな話をしながら馬車に揺られていると、日も傾き始めていた。
 いくら馬車でもマグノリアの王城に着くには夜になっているだろう。

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