17 / 31
第二章 人の想い【過日譚】
魔都ルドルへの道
しおりを挟むアル達と別れてから数日、雲一つない青空を見上げながら街道もない平原を地図だけを頼りに進んで行く。
「どこに向かってるにゃ?
地図見てもさっぱりにゃ」
魔都ルドル。
地図に示されたそこは、帝国領と王国領の間に存在し、今では誰も近寄らない魔の都と呼ばれている所だった。
「聞いた話だが、魔法大戦の折りに帝国が魔界と繋ぎ、魔者を率いて戦争を有利に進めようとしたらしいんだ。
が、その後すぐに魔群の反乱にあって。
それで帝国が領土を放棄し、今では魔者の巣窟になっているらしい」
「あいつらを支配しようなんて無茶にゃ。
あんな知性の低いヤツらは従うわけないにゃ」
「確かにな。
魔者の中でも頭が良いのもいると思うが、所詮理性を抑えられないのが魔者だからなぁ」
その魔者も魔都に近づくにつれ、遭遇率を高めている。
となると、もうすぐルドルの森が姿を現す筈だ。
「レイヴ、ずっと向こうに森がある……けど、黒いにゃ。
ほんとに森なのかにゃ?」
「そう、その森の中に魔都があるんだ。
長い間放置されてたから森に囲まれたが、その森も魔者の臭気を吸ってたから暗く黒い森に育ったらしいな」
「あんな所に母さんが……」
「少し急ぐか?」
いつもとは違う真に迫った顔でミィが頷く。
日が落ちる前に出来るだけやり過ごしたくもあった為、急いで森に近づくことにした。
「こんなにおどろおどろしいのか」
森を目の前にすると、臭気が目に見えるかのような異様な雰囲気に包まれている。
「行けるか?
ミィ」
「うん!
行くにゃ!」
強い意志を感じオレも身を引き締めると、一歩一歩確かめるかのように森へと踏み出した。
「何だか気味悪いにゃ……これが森だなんて信じられないにゃ……」
「多分ミィの知ってる森や湖じゃないところは、この世界には沢山あるらしい。
魔法大戦で焼けただれた森や毒の湖なんかはあるって聞いたよ」
「そう……人間は破壊が本当に好きみたいだにゃ。
人間だって自然と共存出来るハズなのに」
「どうしても利便性を求めたり、権威をひけらかしたいんだよ。
オレはあんな所で育ったから自然のある方がいいんだがな」
少し言い訳じみた感じはしたがミィの言うことには深く共感する。
「ふぅん。
――ちょっと待つにゃ」
腕を横に伸ばしオレの歩みを止める。
ミィの五感の優れを知っている為、周りの木々と同化するよう気配も消す。
「……いる。
これは人間じゃないにゃ。
大きい魔者……」
少し前に遭遇した大ネズミが頭をよぎる。
あれならばミィがいる以上、大したことはないのだが。
「こっちへ来るにゃ!
多分、人間の匂いを嗅ぎ分けたにゃ!」
木々を掻き分け現した姿は、人よりも高く溢れんばかりの筋肉を身に付け、手には大鎌を携えていた。
「こいつは……食人鬼にゃ!」
爺さんの話で聞いたことがある。
人を大鎌で襲い、それを喰らう魔者がいると。
戦うか否か迷う間もなく鼻息荒くこちらに向かってきた。
「ミィ!
あまり派手にやりたくない!
牽制だけしてくれ!」
「了解にゃ!
足を止めるにゃ!!」
大きな音を出し、魔都に居るであろう研究員に知られたくない。
ミィが引きつけている間に魔弾の入れ替えをする、一撃で葬れる弾に。
ミィは何度も大鎌をかわし食人鬼の足を切り裂いていくと、ようやく動きが鈍くなった。
「よし!
ミィ、離れろ!」
咄嗟のことでも瞬発力に長けるミィには造作もないように思えた。
食人鬼の空いた胸元を【氷槍】が貫くと、一瞬の間を置き前のめりに伏した。
風穴の空いた胸元は凍りつき、動く気配はなくなった。
「怪我はないか?」
「ナメてもらっちゃ困るにゃ。
あの程度の魔者一人でもいけるにゃ」
爪に付いた食人鬼の血を振り落としながら、気揚々と隣に立つ。
「なら次は一人で頼むよ。
弾を使わなくて済むしな」
「にゃにゃにゃ、一人でも良いけど二人の方が楽だと思うにゃ」
焦るミィを笑いながら先へ進む。
まだ森に入ったばかりだというのにこんな魔者がいるとは先が思いやられる。
道なき森を慎重に、ミィの耳を頼りに奥へと進む。
魔都を中心に広がった森だ、中心に近づくにつれ魔者との遭遇は高まるが、どうにかやり過ごしながら進むと高い壁が姿を見せた。
0
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる