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第二章 人の想い【過日譚】
約諾の別離
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アルが身を翻し、放たれた魔弾は後ろの壁に当たり電気を放出した。
魔弾を避けたアルは所長の手を取り背負い投げると、次々に魔法銃を構え出した所員へと向かっていく。
咄嗟のことに出遅れたが、オレの銃口からは【魔縛】が一人を捕らえていた。
両方からの攻撃に慌てている所員にアルが突っ込むと、片っ端から投げ飛ばしていく。
「慣れてもねぇやつが、武器なんて構えんじゃねぇよ!」
アルの一喝にまだ武器を構えている所員は次第に武器を捨て、手を挙げだした。
安全を確認しているのか、ミィと依巳莉、オルドが物陰からこっそり伺っている。
「依巳莉、もぉ大丈夫だから出て来い。
んで、レイヴ達もこれを見てみろ」
アルに呼ばれ先程の紙に目を通すと、所長の言っていた通り人猫を魔都ルドルへと移送するよう書かれている。
サインも書かれているようだが、いざこざで破れ『ランカスター』の名しか読むことは出来なかった。
「これでここにはもぉ用はねぇな。
コイツらはどぉすっかな」
腰の剣に手を伸ばすの見て、慌てて制止した。
「殺さずともいいだろ。
ここから出るのに役立たせてもらおう」
「どぉ役立たせる気だ?」
「所長以外は凍らせて、所長と共に出たら怪しまれないだろ?」
「なるほどな。
事故に見せかけたら、オレらも安全ってワケか」
「所長にとっても公にはしたくないだろう、表向きはまともな製造所なんだから」
納得したアルが気絶している所長を叩き起こすと経緯を説明した。
「んじゃまぁ、やってみようか?
オレがやるからみんな出てな」
アルに【氷結】を装填した魔法銃を渡し所員を残し部屋を出た。
中の様子が気になるが二重の扉が音を遮り、何も聞こえてこない。
「こいつはすげぇな。
魔法の代わりってのには納得するぜ」
待つこともなく扉が開くとアルが魔法銃を回しながら出て来た。
「上手く出来たのか?」
「心配無用だな。
みんなカッチカチだぜ。
さ、行こうか」
所長に連れ添われる形を取ると外まで何事もなく出る事が出来た。
舌打ちを残した所長が去り、オレ達は今後の動向について話し合った。
「魔都ルドルにはオレとミィだけで行くよ」
「オレらは必要ねぇってか?」
「そうじゃないさ。
あの姉妹のこと、お願いしたいんだ」
「それならよぉ、セレンに見てもらってんだからいいじゃねぇか」
「約束したんだ。
オルドの所から解放されたら面倒を見ると。
これからオレ達はどうなるか分からないのに、セレンだけに任せてもおけないだろ?」
「そりやぁそうだがよ。
それなら後から合流するってのはどぉよ」
「危険な場所に姉妹を連れて行く訳にも行かないし、一刻をあらそうかも知れないんだ。
オレ達が無事ならどこかで会うこともあるだろう。
その時まで姉妹を頼みたいんだ、オレ達の代わりに」
ここまで首を突っ込んだので最後まで見届けたいのだろう。
悩むアルの肩に依巳莉の手がそっと置かれた。
「ねぇ、アル。
ここは引き受けましょ。
行きたい気持ちも分かるけど、あの子達の気持ちも考えてあげて。
多分、あの街から早く出たい筈よ」
あんなことをさせられていた街にいつまでも居たい訳はない。
その辺りを理解出来るのは女性ならではといったところか。
「依巳莉が言うなら、まぁ仕方ねぇか。
オマエら絶対死ぬなよ。
姉妹は預かるだけなんだからな。
いつか必ず引き取ってもらう、なんせ女二人で手一杯だからよ」
と言った瞬間アルの尻に依巳莉の蹴りが飛んだ。
「私がいつ世話を焼いたってのよ!
あんたの方がよっぽど大変よ!
あっちに首突っ込んでこっちに首突っ込んで、振り回されてんのはこっちなんだからね!」
あのアルが尻に敷かれているなんて、まるで長年連れ添った夫婦のような感じにさえ思える。
必死に弁解するアルの姿があまりにも滑稽で、ミィと共に笑ってしまった。
「ま、まぁ、なんだ、オマエら約束したからな。
当分の間は大陸にいるつもりだから、それまでのお別れだ」
「あぁ、姉妹のことは頼んだよ。
必ず迎えに行くと伝えてくれ」
固い握手を交わすと、オルドを連れ暗がりの中に消えて行った。
魔弾を避けたアルは所長の手を取り背負い投げると、次々に魔法銃を構え出した所員へと向かっていく。
咄嗟のことに出遅れたが、オレの銃口からは【魔縛】が一人を捕らえていた。
両方からの攻撃に慌てている所員にアルが突っ込むと、片っ端から投げ飛ばしていく。
「慣れてもねぇやつが、武器なんて構えんじゃねぇよ!」
アルの一喝にまだ武器を構えている所員は次第に武器を捨て、手を挙げだした。
安全を確認しているのか、ミィと依巳莉、オルドが物陰からこっそり伺っている。
「依巳莉、もぉ大丈夫だから出て来い。
んで、レイヴ達もこれを見てみろ」
アルに呼ばれ先程の紙に目を通すと、所長の言っていた通り人猫を魔都ルドルへと移送するよう書かれている。
サインも書かれているようだが、いざこざで破れ『ランカスター』の名しか読むことは出来なかった。
「これでここにはもぉ用はねぇな。
コイツらはどぉすっかな」
腰の剣に手を伸ばすの見て、慌てて制止した。
「殺さずともいいだろ。
ここから出るのに役立たせてもらおう」
「どぉ役立たせる気だ?」
「所長以外は凍らせて、所長と共に出たら怪しまれないだろ?」
「なるほどな。
事故に見せかけたら、オレらも安全ってワケか」
「所長にとっても公にはしたくないだろう、表向きはまともな製造所なんだから」
納得したアルが気絶している所長を叩き起こすと経緯を説明した。
「んじゃまぁ、やってみようか?
オレがやるからみんな出てな」
アルに【氷結】を装填した魔法銃を渡し所員を残し部屋を出た。
中の様子が気になるが二重の扉が音を遮り、何も聞こえてこない。
「こいつはすげぇな。
魔法の代わりってのには納得するぜ」
待つこともなく扉が開くとアルが魔法銃を回しながら出て来た。
「上手く出来たのか?」
「心配無用だな。
みんなカッチカチだぜ。
さ、行こうか」
所長に連れ添われる形を取ると外まで何事もなく出る事が出来た。
舌打ちを残した所長が去り、オレ達は今後の動向について話し合った。
「魔都ルドルにはオレとミィだけで行くよ」
「オレらは必要ねぇってか?」
「そうじゃないさ。
あの姉妹のこと、お願いしたいんだ」
「それならよぉ、セレンに見てもらってんだからいいじゃねぇか」
「約束したんだ。
オルドの所から解放されたら面倒を見ると。
これからオレ達はどうなるか分からないのに、セレンだけに任せてもおけないだろ?」
「そりやぁそうだがよ。
それなら後から合流するってのはどぉよ」
「危険な場所に姉妹を連れて行く訳にも行かないし、一刻をあらそうかも知れないんだ。
オレ達が無事ならどこかで会うこともあるだろう。
その時まで姉妹を頼みたいんだ、オレ達の代わりに」
ここまで首を突っ込んだので最後まで見届けたいのだろう。
悩むアルの肩に依巳莉の手がそっと置かれた。
「ねぇ、アル。
ここは引き受けましょ。
行きたい気持ちも分かるけど、あの子達の気持ちも考えてあげて。
多分、あの街から早く出たい筈よ」
あんなことをさせられていた街にいつまでも居たい訳はない。
その辺りを理解出来るのは女性ならではといったところか。
「依巳莉が言うなら、まぁ仕方ねぇか。
オマエら絶対死ぬなよ。
姉妹は預かるだけなんだからな。
いつか必ず引き取ってもらう、なんせ女二人で手一杯だからよ」
と言った瞬間アルの尻に依巳莉の蹴りが飛んだ。
「私がいつ世話を焼いたってのよ!
あんたの方がよっぽど大変よ!
あっちに首突っ込んでこっちに首突っ込んで、振り回されてんのはこっちなんだからね!」
あのアルが尻に敷かれているなんて、まるで長年連れ添った夫婦のような感じにさえ思える。
必死に弁解するアルの姿があまりにも滑稽で、ミィと共に笑ってしまった。
「ま、まぁ、なんだ、オマエら約束したからな。
当分の間は大陸にいるつもりだから、それまでのお別れだ」
「あぁ、姉妹のことは頼んだよ。
必ず迎えに行くと伝えてくれ」
固い握手を交わすと、オルドを連れ暗がりの中に消えて行った。
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