ネコ耳ばすた~ず 1

七海玲也

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第二章 人の想い【過日譚】

約諾の別離

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 アルが身をひるがえし、放たれた魔弾は後ろの壁に当たり電気を放出した。
 魔弾を避けたアルは所長の手を取り背負い投げると、次々に魔法銃を構え出した所員へと向かっていく。
 咄嗟とっさのことに出遅れたが、オレの銃口からは【魔縛バインド】が一人を捕らえていた。

 両方からの攻撃に慌てている所員にアルが突っ込むと、片っ端から投げ飛ばしていく。

「慣れてもねぇやつが、武器なんて構えんじゃねぇよ!」

 アルの一喝にまだ武器を構えている所員は次第に武器を捨て、手を挙げだした。
 安全を確認しているのか、ミィと依巳莉えみり、オルドが物陰からこっそり伺っている。

「依巳莉、もぉ大丈夫だから出て来い。
 んで、レイヴ達もこれを見てみろ」

 アルに呼ばれ先程の紙に目を通すと、所長の言っていた通り人猫ワーキャットを魔都ルドルへと移送するよう書かれている。
 サインも書かれているようだが、いざこざで破れ『ランカスター』の名しか読むことは出来なかった。

「これでここにはもぉ用はねぇな。
 コイツらはどぉすっかな」

 腰の剣に手を伸ばすの見て、慌てて制止した。

「殺さずともいいだろ。
 ここから出るのに役立たせてもらおう」

「どぉ役立たせる気だ?」

「所長以外は凍らせて、所長と共に出たら怪しまれないだろ?」

「なるほどな。
 事故に見せかけたら、オレらも安全ってワケか」

「所長にとっても公にはしたくないだろう、表向きはまともな製造所なんだから」

 納得したアルが気絶している所長を叩き起こすと経緯を説明した。

「んじゃまぁ、やってみようか?
 オレがやるからみんな出てな」

 アルに【氷結フリージング】を装填した魔法銃を渡し所員を残し部屋を出た。
 中の様子が気になるが二重の扉が音を遮り、何も聞こえてこない。

「こいつはすげぇな。
 魔法の代わりってのには納得するぜ」

 待つこともなく扉が開くとアルが魔法銃を回しながら出て来た。

「上手く出来たのか?」

「心配無用だな。
 みんなカッチカチだぜ。
 さ、行こうか」

 所長に連れ添われる形を取ると外まで何事もなく出る事が出来た。
 舌打ちを残した所長が去り、オレ達は今後の動向について話し合った。

「魔都ルドルにはオレとミィだけで行くよ」

「オレらは必要ねぇってか?」

「そうじゃないさ。
 あの姉妹のこと、お願いしたいんだ」

「それならよぉ、セレンに見てもらってんだからいいじゃねぇか」

「約束したんだ。
 オルドの所から解放されたら面倒を見ると。
 これからオレ達はどうなるか分からないのに、セレンだけに任せてもおけないだろ?」

「そりやぁそうだがよ。
 それなら後から合流するってのはどぉよ」

「危険な場所に姉妹を連れて行く訳にも行かないし、一刻をあらそうかも知れないんだ。
 オレ達が無事ならどこかで会うこともあるだろう。
 その時まで姉妹を頼みたいんだ、オレ達の代わりに」

 ここまで首を突っ込んだので最後まで見届けたいのだろう。
 悩むアルの肩に依巳莉の手がそっと置かれた。

「ねぇ、アル。
 ここは引き受けましょ。
 行きたい気持ちも分かるけど、あの子達の気持ちも考えてあげて。
 多分、あの街から早く出たい筈よ」

 あんなことをさせられていた街にいつまでも居たい訳はない。
 その辺りを理解出来るのは女性ならではといったところか。

「依巳莉が言うなら、まぁ仕方ねぇか。
 オマエら絶対死ぬなよ。
 姉妹は預かるだけなんだからな。
 いつか必ず引き取ってもらう、なんせ女二人で手一杯だからよ」

 と言った瞬間アルの尻に依巳莉の蹴りが飛んだ。

「私がいつ世話を焼いたってのよ!
 あんたの方がよっぽど大変よ!
 あっちに首突っ込んでこっちに首突っ込んで、振り回されてんのはこっちなんだからね!」

 あのアルが尻に敷かれているなんて、まるで長年連れ添った夫婦のような感じにさえ思える。
 必死に弁解するアルの姿があまりにも滑稽で、ミィと共に笑ってしまった。

「ま、まぁ、なんだ、オマエら約束したからな。
 当分の間は大陸にいるつもりだから、それまでのお別れだ」

「あぁ、姉妹のことは頼んだよ。
 必ず迎えに行くと伝えてくれ」

 固い握手を交わすと、オルドを連れ暗がりの中に消えて行った。
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