ネコ耳ばすた~ず 1

七海玲也

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第三章 偽りの婚約者

好きになるということ

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「ま、まさか、予言を……見誤ったというのか」

「貴様がいたおかげで、メイルが……オレの元から離れていった!
 国を想うメイルならその予言、従うだろう。
 だがオレの気持ちは--メイルやオレの気持ちまで奪う予言など……。
 予言などこの国には必要ない!」

「わ……私は、幼い頃から……二人を見てきたが……。
 そうであったか。
 あの、仲睦まじく微笑む、二人のままで……あったか」

「許せ、ディバイル。
 この国もメイルも守ってみせる」

「ははは……。
 間違っていたのは……私……だったのかも、知れません…………な…………」

 あまりの衝撃的展開に言葉に出来ず、ただ茫然と見ているしかなかった。
 それは、オレの発言が元になった結果だったかも知れないからだ。

「ここまで来たのだ。
 貴様がなぜ婚約者なのだ?」

 アーサーはディバイルを静かに横たわらせると、オレに向かい問い掛ける。
 その瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。

「それは……メイルに直接聞くといいさ。
 ディバイルが予言者で亡くなった今、オレがこの国に留まる理由は無くなった」

「そうか。
 少なくともディバイルに関連していたと。
 すまないな、命を狙い」

「いや、まさかメイルに意中の人がいるとは思っていなかったから。
 オレも軽はずみな行動だったのかも知れない」

「では、部屋に戻るがいい。
 メイルを問いただし、その後のことは追って連絡するとしよう」

 背を向けたアーサーに返事をし、大広間を後にすると仲間達の部屋へと足を向けた。
 オレ達の今後にも影響があるこのことは、一刻も早く知らせるべきだと。




「どうしたにゃぁ、こんな夜中にぃ」

「悪いな、寝てたところ。
 予言者についての展開があったんだ。
 と、ミィ……その格好」

「にゃ……!
 バカレイヴ!」

 薄着だったミィが乱暴に扉を閉めると部屋の外で待たされ、しばらくすると、ルニが中へと招き入れてくれた。

「リズは寝かせておいていいでしょ? 
 ミィは……落ちついたら出て来ると思うけど」

「だな。
 急展開だったから話したほうが良いと思って」

 ソファに落ち着くと順を追って細かく話すが、途中ミィが出て来たおかげでややこしくなってしまった。

「だから結果として、ディバイルは予言者だったんだが、それを騎士隊長のアーサーってやつが殺し、アーサーはメイルと恋仲だったってわけさ」

「すると、この国には居る必要が無くなったってこと?
 これで大丈夫かしら?」

 ルニは物分かりが良くて助かる。

「解決したってことでいいにゃ。
 女王とも、ようやくお別れにゃ」

 ルニとは違い、なんとも楽観的な猫娘だ。
 こうも真逆な性格なのに気が合うとは不思議で仕方ない。

「解決に至ったかどうか。
 アーサーがメイルに依頼内容を聞くみたいだが、ことによっては破局になったり、ディバイルの時のように怒りのあまりメイルをってことも。
 確実に無いとは言い切れないからな」

「そう思うわ。
 レイヴへの嫉妬で暗殺者を雇ったり、恋路の邪魔をしたディバイルを殺したり。
 そういう人こそ、どう出るか分からないわね。
 一途なのには憧れるけど」

「まだ何か起きるかもにゃ?
 この城の中は複雑にゃ」

 人間が多く集まるところではそれだけ多くの想いもあり、一筋縄ではいかないってことだろう。
 特に、愛や恋、嫉妬や怒りなど強い感情が行き交う中では。

「もし何か起きるとなれば、それが一番大変な事になってくると思う。
 そして、唯一邪魔なのが、全てを知っているオレ達ってことだ」

「リズも居るのにそれはマズイにゃ。
 夜襲も有り得るってことだと、どうするにゃ?」

「そこなんだが。
 オレが部屋へ戻ったら、ここもオレも危ういかも知れない。
 となると、オレがここにいるべきだと思うんだが、さすがに少しは眠りたい」

「私は別にいいわよ。
 リズを守るのが私の役目だから。
 あとは、ミィさえよければだね」

 これだけで言いたいことが伝わったらしく、にやけ顔でオレとミィを交互に見比べる。

「べ、別にレイヴがこの部屋に居たって、わたしだって構わないにゃ。
 わたしのベッドはあっちだし、勝手にソファで寝てればいいにゃ」

 やっぱり話さなきゃ伝わらないのかと、意を決してオレがと思ったがルニがすかさず後を持ってくれた。

「そうじゃないのよ、ミィ。
 レイヴがここで寝てるときに襲われたら、誰がすぐ助けてくれるの?
 私達が寝室にいたら助けるのが遅れるわ。
 誰かがレイヴと一緒にこの部屋にいてあげないと。
 でも、私はリズの傍にいてあげたいし。
 となると……」

「わたしにゃ!?
 で、で、でも、ここにはソファが一つと、イスくらいしかないにゃ! 
 ど、ど、ど、ど、どうやって寝る気にゃ!?」

 なにを焦ってるんだか、一緒に野宿だってしたことがあるというのに。

「オレがソファで寝る。
 ミィは床で寝るか、それともさっきまで寝てたから起きててもい……」

 冗談のつもりで言ったんだがルニには通じてなかったらしく、オレの脇腹をつねるとミィにソファで寝るように言った。

「最初から床で寝るつもりだったさ。
 これでも床で寝るのは得意だからな」

「だったら分かりづらい冗談は止めて。
 しかもこんな状況で」

 警戒しなければいけない状況のことか、惚けているミィの状況のことか、どちらのことかは分からないが、とにかくミィの了解を得ないことには。

「ミィがソファで、オレが床。
 これでいいか?」

「いい、いいにゃ。
 ただし、近づいたらタダじゃおかないにゃ。
 寝ててもわたしの耳は健在なんだからにゃ!」

 それを知っていたからここで寝ると言ったんだが。
 こういった状況だとミィの耳に頼るしかないのだから。

「リズが寝てるんだから、本当に変なことは止めてね。
 私だってレイヴ達と気まずくなっちゃうんだから、本当にお願いね」

 そこまで信用がないのかオレは。

「それじゃあ、何かあったら起こしてね。
 おやすみなさい」

 毛布をよこすとルニが寝室へ戻り、ミィが部屋の灯りを消すとソファへと横たわる。

「なぁミィ。
 恋愛感情って、大変なんだな」

 しばらく横になっていたが、まだ寝息は聞こえず起きている様子だったので、少し話そうと声を掛けてみた。

「な、何をいきなりにゃ。
 大変だとは思うけど、誰かを何かを犠牲にしてまで愛するとか、まだ分からないにゃ」

「だよな。
 そりゃ、場合によっては障害もあるだろうが、殺めたり陥れたりすることが、本当の愛なんだろうか……」

 女王と騎士、そこまでの障害は無かったはずなのに、たった一つの予言でこんなことにまで発展してしまった。
 暗い部屋で話すと、なんだか落ち着いて語り合える気分になるが、色々あったおかげで瞼が重くなってきた。

「どうなんだかにゃ。
 レイヴは誰かを……誰かを好きになったり……愛したことってあるかにゃ?」

「オレか?
 オレは………………」
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