自称!!美少女剣士の異世界探求

七海玲也

文字の大きさ
9 / 34
第二章 王への道

episode 8 屈強なレディ

しおりを挟む
「アリシア!?
 アリシアお姉さま!」

 もし本当にお姉さまなら。
 やっと会えたかも知れない喜びを抑え人を掻き分け近づこうとするも、一人男性が行く手を阻む形で立っていた。 

 「ねぇ、ちょっと。
 あんたそこどきなさいよ!」

 入口近くでただ立ち尽くす男性に苛立ち、つい声を荒げてしまった。

「え?
 あぁ、すまない。
 君も参加するのかい?」

「はぁ?
 当たり前でしょ?
 だから、どきなさいって言ってんのよ!」

 悪い人じゃなさそうだが、当たり前過ぎる問いに輪をかけて苛立ちが募っていく。

「あ、あぁ。
 そうだな。
 そうだよな」

 あたしの態度に気分を害することもなく、申し訳なさそうにするほど人が良いことを不思議に感じると、無意識に男性を観察していた。
 すると、胸元に付く装飾がこの国の紋章だと気づいた。

「あっ!
 あんた!
 もしかしてメイル女王と婚約してる人でしょ!?」

「ま、まぁ、そうだが。
 よく知ってるな」

 やはりそうだ。
 しっかりしているかはさておき、あたしよりも少し年上な感じで紋章の入った服となれば。

「ふんっ!
 まぁね。
 けど、簡単にいくと思わないことね。
 あたしと闘うことになったら覚悟しなさい。
 あんたのその権利、奪ってやるんだから」

「ん?
 婚約の権利か?
 オレじゃ相応しくないとでも?」

「そりゃあそうよ。
 あんたなんかじゃ全っ然!
 あたしの方がお似合いなんだから!」

「君――だって、女の子だろ?」

「女で悪かったわね!
 それとも何?
 同性じゃダメだっての?
 愛があればね、そんなもの軽く越えられるのよ!
 それじゃあ覚悟しておくことね。
 あたしはあんたに構ってるほど暇じゃないの。
 じゃあね」 
 
 この人も見た目や形に囚われているのかと思うと、一層あたしの方が相応しいのではと思う。
 それはそうと、お姉さまに似た人が居た場所まで来たものの姿形はまるで無く、全くもって見失ってしまった。

「出て行っちゃったのかしら……」

「いかがなされましたか?」

 辺りを見回している様子を不思議に思ったのか、入口に立つ兵士があたしに近寄って来た。

「ここにさ、今まで赤髪の女性がいたと思うんだけど、どこに行ったのかしらと思ってね」

「それでしたら出て行かれましたよ。
 あの方は参加される方ではないので」

「どこに行ったか知らない!?」

「どこと言われましても……城の中には居ると思いますが」

「そうなの!?
 ありがと!」

 とだけ言い残し、大広間を出ようとした瞬間だった。

「これより対戦相手の抽選を行います。
 呼ばれた方から中庭へお進み下さい」

 大広間に響き渡る声に、もしかしたらの希望が一瞬で打ち消されてしまった。

「あぁ~、もうっ!」

 捜しに行きたい想いは、あたしが受け止めた想いに負けてしまった。
 しかし、祭りが終わるまでは居てくれることを期待し、名前を呼ばれたので中庭へと足を踏み入れる。

 「お嬢さん、君はここだ」

 抽選した結果、あたしの名前は早めの位置に書き出された。

「え~っと、十番目くらいか。
 すぐといえばすぐの所ね。」

 あたしの相手はまだ決まってはいなかったが、誰が相手だろうとやるべきことは決まっている。
 少しだけでも間があるので誰かに話をしてみようと見回すと、抽選が終わったであろう屈強な女剣士を見つけた。

「あのぉ、あなたも女王と婚約する為に参加を?」

 あたしよりも頭が三つほど高い女性を見上げ、失礼のないように問いかけてみた。

「ん?
 なんだい、お嬢ちゃん。
 あたいが婚約だって?
 あっはっはっはっ!
 面白いこと言うねぇ。
 別に女同士だって構いやしないが、あたいがそんな柄に見えるかい?」

「はっきり言って見えないわ。
 けれど、どんな人にも色々な可能性があって、この場所ではそれが一番の可能性だから」

「はっはっはっはっ!
 いいねぇ、お嬢ちゃん。
 あたいはそういう素直なヤツが好きさ。
 お嬢ちゃん、名前はなんて言うんだい?
 あたいは、レイディ・ハーパー。
 皆はレディと呼んでくれるさ」

 見た目の威圧感に比べ、性格は大分気さくなようだ。

「あたしはアテナ。
 よろしくね、レディ」

 差し出した手を握るレディの手は、まさに男勝りと言えるだけの硬さだった。

「アテナか、中々強くなりそうな名前だな。
 それで?
 アテナの目的ってのはなんだい?」

「そりゃあモチロン!
 女王との婚約よ!!」

「あっはっはっはっ!
 女性同士でも愛が通じ合えばってね。
 ただ、本当に欲しいのは権力なんじゃないのかい?」

 最後の言葉になると表情が変わり、殺気立っているように感じる。
 しかし、あたしはそれに怖じ気づくことなく話すことが出来た。

「権力?
 それが無ければあたしのすべきことが出来ないわ。
 けどね、あたしが一番欲しているのは何物にも代えがたい愛なのよ!」

「権力は二の次ってわけかい。
 アテナ、あんたイイよ!
 良かったら、そのすべきことっての教えてくれないか?」

「いいわよ。
 あたしの憧れ、アリシアお姉さまを捜すこと。
 それと、死者の願いを叶えてあげることよ」

 そこまで話すと何か思いがあるのか考えている。

「アリシア……。
 どこかで聞いた名だな」

「ホント!?
 長い赤髪で整った顔立ちに凄く礼儀正しくて。
 でも優しい人よ!」

「あぁ、あのアリシアか!」

「知ってるの!?」

「彼女とは少しの間だが旅をしたよ。
 あたいは傭兵だから、人柄と金の条件さえ満たせば雇われる身だからね。
 確かに、彼女はアテナの言う通り聡明な人だったね。
 彼女との旅は楽しかったが、何やら密命を受けての旅だったからね。
 だからこうして一人旅に戻ったのさ」

 やはりお姉さまは単なる旅をしているのではなかった。

「さっきお姉さまに似た人を見たけど、ここに来ているとか知らない?」

「さぁね、別れてから随分と経つから。
 まぁ、この国に来てたとしても闘技祭には参加しないさ。
 彼女は権力や腕試しにはまるで興味がないからね」

 確かにそうかも知れない。
 お姉さまの行動は強い意志を感じ、かと言って自分が全てとも思ってはいなかった。

「そうよね、そう考えるとここには居ないかも知れないわね。
 さっきのは似た人、かな……。
 レディ、呼ばれてない?」

 話の途中だが、レイディ・ハーパーの名を呼ぶ声が大広間に木霊こだましていた。

「おっと。
 あたいの出番が来たようだね。
 良かったらあたいの試合応援してくれよな。
 行ってくるよ!」

 あたしとレディは拳をぶつけ合い健闘することを誓った。
 その場で見送った後、あたしの順番が気になり対戦表の確認へと向かうと、レディはあたしの三つ前に名前が書かれていた。
 こうなると試合が気になり、大広間から観覧席へと続く階段を駆け上がると、そこからは闘技場が一望出来るようになっていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...