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第三章 希望を胸に
episode 27 義理と借り
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眩しさと小鳥の歌声が身体を包む。
そして、頬に違和感。
煩わしさを感じるも、ミーニャが起こしてくれてるのかと片目を頑張って開けた。
「はん?
ミー……。
ミュー、あんた何してんの?」
眼前にあった顔に現実を思い出すと、違和感の正体も同時に分かった。
「ふふふ。
人間と触れ合ったことがなかったものですから、ちょっと触ってみたかったのです」
「起きたてにそんなことするなんて。
……あたしだって亜人を触りたいわ!」
その言葉に火が着き、思いっきりミューの体に巻き付いた。
「きゃっ!
ちょっと、アテナ!
く、苦しい――」
「朝っぱらから何をやってんだか。
ほら、さっさと起きなアテナ」
「ん?
あら、レディ。
おはよ」
このまま色んなことをするつもりだったのだが、わざわざしゃがんで顔を近づけるレディのおかげで諦めざるを得なかった。
「あんたが一番遅くまで寝てんだよ。
飯だから起きなっての」
「あら、そうだったの。
みんな早いのね。
……そうそう!
ミュー、こっちの女性はレディよ。
レイディ・ハーパー。
あたしの友達、大切な人よ」
夜中に新たな人間が増えていたことに警戒しないよう、気持ちを切り替え体勢を整えながら紹介した。
「ええ、存じ上げてますよ。
蓮が事細かに説明して下さいまして、皆も承知してますよ」
「だからアテナが一番遅いって言っただろ。
ほら、行くよ」
「はぁい」
各々が好きな場所で食事をしている中、蓮とレイブンは少し離れた場所であたし達を待っていてくれた。
「おはよ。
みんな早くて尊敬しちゃうわ」
「こんな状況でも熟睡してる姉御には感心しかないがな」
それは頼もしい仲間がいてくれているからなのだが、改めて言うことでもないだろうと鼻で笑いご飯の前に座った。
「さて、みんな揃ったし、ご飯にしましょ。
これからのことも話さなきゃだし」
「よっ、と。
そうだよアテナ。
あたいは何も分からないんだからね」
「確かに。
レディにはちゃんと話さなきゃね、レイブンにもだけど」
木の実を一つ口に含み今までの経緯を語って聞かせ、食事も終わりに差し掛かるとあたしの道のりも終わりを迎えていた。
「すると何か?
一つも自分達の為に動いてたってことじゃないのかい」
「ふん、ほぉよ。
……だって、面白そうだったし、秘密の裏を見てみたくなってね」
「姉御、そんなんじゃ命がいくらあっても足りなくなるぜ?」
「それでもそのおかげで今があるんじゃない。
他人の物を盗んだり、むやみやたらに剣を振り回すよりはよっぽど楽しい生き方じゃないかしら?」
他人の生き方にケチをつける気はないが、あたしの生き方にとやかく言われたくない。
心配してくれてるなら有り難いが、身を案じてばかりでは旅など続けられなかった。
「そいつはそうだ。
あたいも傭兵として小競り合いに参加もしてたがね、楽しいことなんて無かったよ。
本当に心から楽しいと思えることをやって生きる方がよっぽどいいさ。
……それで、これから城に戻るのかい?」
「そうよ。
ここまで来たレディには悪いけど、目的を果たす為にも戻らなきゃね」
「我らが城に向かうとなれば人羊達はどうする?
ミューを連れて行くとなれば帰る場所がない今、この場に留めておく他ないと思うが」
問題はそこだった。
本来なら、隠れ住む崖の上にミューを送り届けるつもりだったのだが今となっては。
「そうなのよねぇ。
ミューと長にはどうするのか聞いてはみるけど、どこか廃村みたいなところってないかしら?」
「あたいが知ってんのは帝国領にあるからねぇ。
辞めといた方が良いだろうさ」
「隠れ住む場所は期待出来ないか。
だったらここにいるか、連れて行くかの二つしかないのね」
あたしの考えに驚いたのか、皆が一斉に目を丸くして口を開けている。
「面白そうじゃない?
大羊みたいなモフモフした人が、集団で城を目指すのよ?
みんな驚くわよ」
「ダメだろ」
ちゃんと想像したのかわからないが、三人が口を揃えて否定する。
「……んっ、ん、そうよね。
冗談はさておき、あたし達が考えられるのは、ここに留まる以外の選択はなさそうね。
だとしたら、誰かが残って人間の目から守らなきゃならないわ」
「それならば我が残る。
それがせめてもの償いだからな」
正直、残るのは蓮以外には考えられなかった。
あたしとレディ、ミューは戻らなければならないし、レイブンを蓮と二人にしてはおけないだろう。
「そんなに思い詰めなくても。
でも、蓮が残ってくれると言うのならそれに甘えさせてもらうわ。
人羊達も安心するだろうし」
「姉御、そういう話ならオレも残ろうと思うんだが」
「はあ?
何でよ。
また蓮とケンカでもする気?
それとも何、あたしと一緒に行くのがイヤだとでも!?」
レイブンが自らそんなことを言うとは思っても見なかったが、理由なら探せばいくらでもありそうだった。
「いやいやいや。
王都に行って、更には城にまで行くんだろ?
オレのしてきたことを考えたら城の連中には会いたくないんでね。
それにさ、蓮が残るってんだ、オレが作った原因と治療の借りもある。
そんな中で、男のオレが何もしないって訳にはいかないだろって」
「ほぉ、ちゃんと考えてるじゃない。
そんな理由だったら任せるしかないわね。
それじゃあ蓮とレイブンが残る、それでいい?」
皆が首を縦に振ったので早速ミューと長の元へ向かうと、こちらでも同じ話題だった。
話し合いはすんなり纏まり、あとはあたし達が旅支度を済ませるばかりだった。
そして、頬に違和感。
煩わしさを感じるも、ミーニャが起こしてくれてるのかと片目を頑張って開けた。
「はん?
ミー……。
ミュー、あんた何してんの?」
眼前にあった顔に現実を思い出すと、違和感の正体も同時に分かった。
「ふふふ。
人間と触れ合ったことがなかったものですから、ちょっと触ってみたかったのです」
「起きたてにそんなことするなんて。
……あたしだって亜人を触りたいわ!」
その言葉に火が着き、思いっきりミューの体に巻き付いた。
「きゃっ!
ちょっと、アテナ!
く、苦しい――」
「朝っぱらから何をやってんだか。
ほら、さっさと起きなアテナ」
「ん?
あら、レディ。
おはよ」
このまま色んなことをするつもりだったのだが、わざわざしゃがんで顔を近づけるレディのおかげで諦めざるを得なかった。
「あんたが一番遅くまで寝てんだよ。
飯だから起きなっての」
「あら、そうだったの。
みんな早いのね。
……そうそう!
ミュー、こっちの女性はレディよ。
レイディ・ハーパー。
あたしの友達、大切な人よ」
夜中に新たな人間が増えていたことに警戒しないよう、気持ちを切り替え体勢を整えながら紹介した。
「ええ、存じ上げてますよ。
蓮が事細かに説明して下さいまして、皆も承知してますよ」
「だからアテナが一番遅いって言っただろ。
ほら、行くよ」
「はぁい」
各々が好きな場所で食事をしている中、蓮とレイブンは少し離れた場所であたし達を待っていてくれた。
「おはよ。
みんな早くて尊敬しちゃうわ」
「こんな状況でも熟睡してる姉御には感心しかないがな」
それは頼もしい仲間がいてくれているからなのだが、改めて言うことでもないだろうと鼻で笑いご飯の前に座った。
「さて、みんな揃ったし、ご飯にしましょ。
これからのことも話さなきゃだし」
「よっ、と。
そうだよアテナ。
あたいは何も分からないんだからね」
「確かに。
レディにはちゃんと話さなきゃね、レイブンにもだけど」
木の実を一つ口に含み今までの経緯を語って聞かせ、食事も終わりに差し掛かるとあたしの道のりも終わりを迎えていた。
「すると何か?
一つも自分達の為に動いてたってことじゃないのかい」
「ふん、ほぉよ。
……だって、面白そうだったし、秘密の裏を見てみたくなってね」
「姉御、そんなんじゃ命がいくらあっても足りなくなるぜ?」
「それでもそのおかげで今があるんじゃない。
他人の物を盗んだり、むやみやたらに剣を振り回すよりはよっぽど楽しい生き方じゃないかしら?」
他人の生き方にケチをつける気はないが、あたしの生き方にとやかく言われたくない。
心配してくれてるなら有り難いが、身を案じてばかりでは旅など続けられなかった。
「そいつはそうだ。
あたいも傭兵として小競り合いに参加もしてたがね、楽しいことなんて無かったよ。
本当に心から楽しいと思えることをやって生きる方がよっぽどいいさ。
……それで、これから城に戻るのかい?」
「そうよ。
ここまで来たレディには悪いけど、目的を果たす為にも戻らなきゃね」
「我らが城に向かうとなれば人羊達はどうする?
ミューを連れて行くとなれば帰る場所がない今、この場に留めておく他ないと思うが」
問題はそこだった。
本来なら、隠れ住む崖の上にミューを送り届けるつもりだったのだが今となっては。
「そうなのよねぇ。
ミューと長にはどうするのか聞いてはみるけど、どこか廃村みたいなところってないかしら?」
「あたいが知ってんのは帝国領にあるからねぇ。
辞めといた方が良いだろうさ」
「隠れ住む場所は期待出来ないか。
だったらここにいるか、連れて行くかの二つしかないのね」
あたしの考えに驚いたのか、皆が一斉に目を丸くして口を開けている。
「面白そうじゃない?
大羊みたいなモフモフした人が、集団で城を目指すのよ?
みんな驚くわよ」
「ダメだろ」
ちゃんと想像したのかわからないが、三人が口を揃えて否定する。
「……んっ、ん、そうよね。
冗談はさておき、あたし達が考えられるのは、ここに留まる以外の選択はなさそうね。
だとしたら、誰かが残って人間の目から守らなきゃならないわ」
「それならば我が残る。
それがせめてもの償いだからな」
正直、残るのは蓮以外には考えられなかった。
あたしとレディ、ミューは戻らなければならないし、レイブンを蓮と二人にしてはおけないだろう。
「そんなに思い詰めなくても。
でも、蓮が残ってくれると言うのならそれに甘えさせてもらうわ。
人羊達も安心するだろうし」
「姉御、そういう話ならオレも残ろうと思うんだが」
「はあ?
何でよ。
また蓮とケンカでもする気?
それとも何、あたしと一緒に行くのがイヤだとでも!?」
レイブンが自らそんなことを言うとは思っても見なかったが、理由なら探せばいくらでもありそうだった。
「いやいやいや。
王都に行って、更には城にまで行くんだろ?
オレのしてきたことを考えたら城の連中には会いたくないんでね。
それにさ、蓮が残るってんだ、オレが作った原因と治療の借りもある。
そんな中で、男のオレが何もしないって訳にはいかないだろって」
「ほぉ、ちゃんと考えてるじゃない。
そんな理由だったら任せるしかないわね。
それじゃあ蓮とレイブンが残る、それでいい?」
皆が首を縦に振ったので早速ミューと長の元へ向かうと、こちらでも同じ話題だった。
話し合いはすんなり纏まり、あとはあたし達が旅支度を済ませるばかりだった。
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