自称!!美少女剣士の異世界探求

七海玲也

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終 章 始まりの物語

エピローグ

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 あたしが目の前の男に話す過去の出来事は、ここで終わりだと笑顔を作り間を置いた。

「おい、終わりなのか?
 その後はどうなったんだよ」

「何も無かったわよ。
 唇に指を当てられて、あたしにはやるべきことがあるからってね。
 ずっと想いがあるなら、いつでも戻って来ていいって」

 あたしには素敵な思い出なのだが、男は拍子抜けしたのか、首を少し前に出して口を開けていた。

「はぁ?
 なんだよ、そりゃ。
 ズルい男だな、雰囲気だけ残しておあずけみたいな事言いやがって」

「あら、そお?
 あたしには素敵だったわよ、少し意地悪にも思えたけど。
 あたしを尊重してくれたってことでしょ、幼くて何も知らなかったあたしの事を。
 それに、あそこで口づけをしなかったからこそ、本来の目的と今の目的に向かうことが出来たんだから」

 淡い思い出に心が満たされると、あたしは自然と笑みが零れた。

「そりゃそうだが。
 女ってのはそんなもんなのかね」

 女を見ると見境のない男は、思い出に残る乙女心を理解出来ないでいるようだった。

「男好きな女性だっているけど、幼い頃の思い出は誰だって綺麗でいたいものなのよ」

「それは分からなくはないがな。
 ……それで、また旅を続けたんだろ?
 どんな世界になっていたんだ?」

 あたしは天井を見上げその後の事を思い出そうとしたが、何を話せば良いのか迷ってしまった。

「そう、ね。
 貴方の生きていた世界からは、おそらく随分と変わったからね。
 魔人王が人間界に現れたのが魔法大戦の前だから……閉ざされた島が開放されたり、新たな勢力を持った国やら大きな島が一つの国になったりね。
 反対に魔法大戦で荒廃した国が魔者の国になっていったりもしたわ。
 元々ルドルって都で魔人王を呼び寄せたんでしょ?」

「あぁ、そうだ!
 あそこが全ての元凶さ」

「あそこも人間が出入りしてたけど、今は更に酷くなって帝国そのものを支配する勢いなのよ」

 あたしが生を受けた帝国は、最早時間の問題とまで言われるほど差し迫っている。
 しかし、それでも動きのない帝国に誰もが不気味がっているのが現状だった。

「ってことは、魔者に統率者がいるってことか。
 オレ達の死は……ムダだったってことかよ」

「そんなことはないわ。
 貴方達が戦ってくれたから人間達の今があるんだもの。
 そうでなければ魔法大戦など起きずに魔者に支配された世界だったわ」

「そう……言ってくれると有り難いな。
 しかし、そうは思ってもこの体じゃどうにもならないんだものな」

 死人だというのにあたしを口説こうとしたり、悔やんでみたり、結構忙しい男だと思うと中々に面白くもあった。

「確かに、死人のままじゃ出来ることはほぼ無いわよね。
 けど、またこの世界で生きることが出来るとしたら?」

「ん?
 体が朽ちてしまっている以上、出来るワケがないだろ」

 明らかに『何を言ってるんだこの女』という目で見返してくるが、あたしは笑みを崩さなかった。

「そりゃあ体は別のものになるし、今までの知識も経験もなくなるわ。
 要するに、赤子に戻るってことよ」

 あまり話を捉えられないのか目が点になっている。

「イマイチ意味が分からないな」

「そうね、そうなるわね。
 貴方は今死人だけど、心も意識も知識も残っているわね。
 その全てを魂に封じ込め新たな肉体に宿すのよ。
 その際に今までのことが零れ落ち、新たに生を受けることが出来るのよ」

「……はっはっはっはっ!
 そんなバカな話があるか?
 生憎あいにく、オレの仲間や旅の中で相当な知識を持ったヤツもいたが、そんな話は聞いたことがないな」

 応え次第ではどこまで話そうかとも思ったが、大口を開けて笑う男の驚く顔をもっと見たくなり、あたしはニヤリとした。

「そりゃ聞いたことはないでしょうね。
 その人達はみんな生きていたんだもの。
 それに、誰も冥府王に会ったこともないでしょうに」

「はんっ!
 そういうお前は会ったことがあるとでも?」

「お前って言うな!!
 あるわよ、冥府王レーヌ。
 仮の人格で、あたしのミーニャだったんだから」

 さっきの話がレーヌを呼び覚ます糸口になっていた事を、この男が想像出来るはずもなかった。
 驚きを通り越したのか、男は固まって何も話せずにいた。

「ふふふふ。
 そうよ、それが見たかったのよ。
 あたしはウソなんてつかないんだから。
 たましいと相対したことで、意識下に眠るレーヌが反応していたらしいのよね。
 それで体がついていかなくて高熱を出したりしてたらしいのよ」

「……それは。
 いつ知ったんだ、その話は」

「随分と経った後よ。
 あの時のアザは三日月だったけど、真ん丸になってミーニャからレーヌに入れ替わった後だもの」

「ってことはだ、グランフォートってのが言っていた言い伝えは……」

 そこまで察してくれるとは思ってもみず、少しあたしが驚いてしまった。

「そっ!
 あの言い伝えは元々ミーニャの事を指してたのよ。
 多分、あの後に続くのを知っていたら早く気づいたかもなんだけどね。
 『悠久の魂』が目覚めるってとこは、ミーニャの奥に眠る冥府王レーヌが目覚めるってことだったのよ」

「なるほどな。
 その出来事があったことで目覚め始め、今になって冥兵ヘレダートが動きまくってるってことなのか」

 冥府王が冥界に戻ったことで、その配下である冥兵が霊の監視を行うように動き始めたことを言っていた。
 ブレフトが言っていたように、冥兵の監視が無いに等しかった頃は人間界への行き来も出来たのだろう。

「レーヌの魔力が包んでいるからでしょうね。
 だからあたしもこうして機会を窺っているのよ、ミーニャを取り戻したくてね」

「そういうことか。
 おま――アテナの旅はまだ終わっちゃいないってことなんだな。
 ん?
 おっと、誰か来たようだな。
 オレもそろそろ行かないと冥兵が来ちまうかな」

 聞こえてくる話し声やら足音、人の気配を察したらしく、男は少し寂しそうに言ってみせた。

「そうね、それがいいわ。
 ねぇ、結局のところ名前は何ていうの?」

「……オレは七騎士セブンナイトのヴィクトリアだ。
 どうせお互い死んだ身であるならまた会う機会もあるだろう、覚えておいてくれ」

「ふふ。そうね。
 でも、あたしはいつまでも死んだ身でいないんだからね。
 じゃあね、楽しかったわ」

「ああ、またな」

 あたしも久しく長話などしていなかったせいで昔話ですら少し楽しく感じていたが、割りと心置き無く別れを言えた。
 男は壁に吸い込まれるように消え、寂しげな空間に一人残されたあたしも封じられた書物の中へと戻る。
 魔力マナ神秘力カムナで作られたこの書物こそが唯一あたしを守ってくれるから。

「どうやら、ここのようだな」

 無作法に扉を開けて入ってきたのは男女二人の冒険者。
 書物の中にいようとも、雰囲気や音で分かるほどにあたしの感覚は研ぎ澄まされている。
 それは霊体だからこそなのだと、なってみて初めて気づいたことだった。

「ここが『叡知を与えし死者の書庫』?
 なんだか殺風景というか、なぁんの変哲もない書庫よね。
 ホントにお宝なんてあるわけ?」

「ここで間違ってはないさ。
 不思議な力が肌を通して伝わってくるからな。
 ただ……分からないのは、魔力であって魔力でない、この感覚さ」

「ふーん。
 お宝には謎かけリドルが付き物ってことね。
 となると……これだけ書物が並んでいるなら、この中に知識を与えてくれる本があるってことね。
 それで、本物以外はトラップがあると……」

「だろうな。
 だからこそ大変な目にも合ってきたんだろ?
 ちょっと待ってな……」

 男の方が何やら口にすると、あたしを封じる書物に熱さを感じた。
 それが何かの詠唱だと気づいた時にはあたしは強制的に部屋へと投げ出されていた。

「お、女の霊!?」

「――なんなの、あんたは!?」

 男は驚き、女はやる気満々にあたしを見定めている。

「あんたって何よ!
 あたしはアテナ!!
 いきなり何すんのよ!?」

「何すんのよ、じゃないわよ!
 びっくりするじゃない、急に本の中から出てきたりしたら!!」

「それはあんた達が勝手に本を開いたからでしょ!
 こっちがびっくりしたわよ!!」

 年齢的にはあたしよりも若い女性が負けじと突っ掛かって来るところを、連れの年の離れた男が間に入って止めようとし出した。

「ちょっと待ちなって。
 この感じからして、悪い奴じゃなさそうだ」

 女の両肩に手を起き落ち着くように促すと、あたしに振り返り両手を広げて見せた。

「オレ達はここで知識を得られると知って来ただけだ。
 戦う意思もなければ言い争う気もない。
 面倒はごめんだからな」

「もしかして、そいつが綺麗な女性だからって下手に出る気じゃないでしょうね!?
 いつから『おばさん』趣味になったわけ?」

 あたしのお腹が熱くなり、頭で何か切れる音がした。

「はぁぁぁぁぁ!?
 おばさん!?
 どこの!
 誰が!
 おばさんだって言うのよ!!」

「私の目の前には一人しか居ないじゃない!?
 それとも何?
 私よりも若くて可愛いとでも思った!?
 この世界に私より可愛い人なんていないのよ!
 それに、この柔らかい胸を見なさい。
 あんたみたいな貧乳年増なんて、私にかないっこないんだから!!」

「なんですってぇ!!
 若ければ、巨乳ならいいと思ってる少女ガキに何が分かるってのよ!?」

 男の肩越しにやり合うあたし達に呆れたのか、その場で下を向き両手を腰に当てると大きな溜め息が一つ聞こえ――たような気がした。
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