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第1章
宮内くん(2)
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「ズバリ、恋ですな。」
ゆきがそう言うと、部活仲間たちが一斉にひゅ~、と私を冷やかした。
8月の部活の休憩中。私と宮内くんが並んで歩いたことをゆきが話題にするもんだから、私は宮内くんとのことを皆に話したのだ。私は照れる、というよりも恥ずかしい気持ちになってしまい、違う話題にならないかな...という思いを込めて苦笑いした。
「宮内くんさぁ~、うちのクラスにも好きって子いるよ。やったじゃん、まなみ。頑張りなよ。」
私とゆきと別のクラスの“噂話好き担当”こと部活のエース、りえがキラキラした眼差しをこちらに向けてそう言った。実を言うと、私はりえが少し苦手だ。
「私は別に好きとか、そういう感じじゃあ...」
「も~、まなみちゃん、かわいいっ!」
部活仲間で、りえにいつもついてまわっているかおりがそう言って私に抱きついた。かおりは少し八方美人なところがあるが、悪い子ではない。
「いいじゃん、まなみ彼氏いたことないんでしょ?チャンスじゃん。宮内くんなら、絶対いい彼氏になってくれるって。」
ゆきは相変わらず、私と宮内くんをくっつけるのに必死な様子だ。
確かに、宮内くんみたいな人が彼氏だったら申し分ないとは思う。
しかし、私自身、宮内くんに対する気持ちがどういうものか、よくわかっていなかった。おしゃべりはよくするものの、ゆきたちカップルの話か、部活の話か、世間話のような他愛のない会話が多かった。
それに、私は男の子と話すのが苦手だ。しかし、宮内くんの誰とでも親しくなろうとする性格からか、ゆきたちカップルの親しいもの同士という親近感からか、やたらと話しかけてくるので私は気が引ける部分があった。
宮内くんと話してるとなんだか、目立つ感じがするし。
でも、そんな私でも“恋がしたい!”という気持ちはある。
少女漫画を部活仲間に借りてたまに読んだりもするが、ああいうドキドキやキュンキュンをいつか自分も経験できたらいいな、なんて思う。
ふと私は、宮内くんと並んで歩いたときのことを思い出した。
あの、心臓のバクバクを...
もしかして、これが...?
でも、なんだろう。
胸がドキドキする感じと同時に、なんだかもやもやする感じもあった。
「付き合っちゃいなよ~!」
りえがゆきと一緒になってきゃっきゃしてる間、私は適当にヘラヘラしてその場をしのごうとしていた。
そのときだった。
「好きじゃない人と付き合う必要なんて、ないじゃん。」
横から声がして、その場が一斉にしん、と静まりかえった。
部活仲間の、ゆいかだった。
「あ、なんかごめんね。」
ゆいかは口角をクッ、と上げながらそう言うと、話を続けた。
「だってさ、宮内くんとまなみってなんか合わなさそうじゃん。まなみはもっと大人の男の人がいい感じするんだよね。落ち着いてるし...」
ゆいかが話をしている最中、ゆきとりえは終始顔を合わせながら引きつった表情をしていた。
ちょうどそのとき、先輩たちがはじめるよー、との呼びかけをしたので私は助かった...と思った。
ゆいかは話をやめて、さっさとコートに行ってしまった。
「きもー、なにあいつ。あいつも宮内くんのこと好きなの?」
ゆきがそう言ってキッ、とゆいかのほうを睨んだ。
「いやでもあの子さ、歳上の彼氏いるらしいじゃん。」
りえがにやにやしながらゆきにそう耳打ちした。周りに聞こえるくらいの大きな声だったが。
「えー、それまじなのかな?妄想じゃない?異常者らしいし。」
ゆきはそう言ってりえとかおりとケラケラ笑ってコートへ入っていった。
異常者、は言い過ぎだと思うがゆいかは少し変わり者で、部活の中では浮いている存在だった。
何かにつけて皆と違う意見を言ったり、恋愛に関してはませているようなことを言ったりするので、部活仲間はゆいかのことを良く思っていなかった。
“噂話好き担当”のりえの話では、ゆいかは今まで付き合ってきた恋人が全員歳上で、中学生の頃には学校の先生とも関係を持っていたんだとか。
他には、援助交際をしているだの精神病院に通っているだのと噂がいくつもあった。
ゆいかは基本、一匹狼で誰ともつるまず、部活でも放課後も1人でいることが多い。学校も休むことが多かった。
友達がいないわけではないが、ゆきやりえのような一部のグループからは嫌われていた。私も実際、あまり関わりたくないな、と思っていた。
しかし、私の話のせいでゆきとりえに悪口を言われてしまったことに、少し胸が痛んだ。同時に、“大人っぽい”と言われたことがなんだか嬉しくて、くすぐったい気持ちになった。
ゆきがそう言うと、部活仲間たちが一斉にひゅ~、と私を冷やかした。
8月の部活の休憩中。私と宮内くんが並んで歩いたことをゆきが話題にするもんだから、私は宮内くんとのことを皆に話したのだ。私は照れる、というよりも恥ずかしい気持ちになってしまい、違う話題にならないかな...という思いを込めて苦笑いした。
「宮内くんさぁ~、うちのクラスにも好きって子いるよ。やったじゃん、まなみ。頑張りなよ。」
私とゆきと別のクラスの“噂話好き担当”こと部活のエース、りえがキラキラした眼差しをこちらに向けてそう言った。実を言うと、私はりえが少し苦手だ。
「私は別に好きとか、そういう感じじゃあ...」
「も~、まなみちゃん、かわいいっ!」
部活仲間で、りえにいつもついてまわっているかおりがそう言って私に抱きついた。かおりは少し八方美人なところがあるが、悪い子ではない。
「いいじゃん、まなみ彼氏いたことないんでしょ?チャンスじゃん。宮内くんなら、絶対いい彼氏になってくれるって。」
ゆきは相変わらず、私と宮内くんをくっつけるのに必死な様子だ。
確かに、宮内くんみたいな人が彼氏だったら申し分ないとは思う。
しかし、私自身、宮内くんに対する気持ちがどういうものか、よくわかっていなかった。おしゃべりはよくするものの、ゆきたちカップルの話か、部活の話か、世間話のような他愛のない会話が多かった。
それに、私は男の子と話すのが苦手だ。しかし、宮内くんの誰とでも親しくなろうとする性格からか、ゆきたちカップルの親しいもの同士という親近感からか、やたらと話しかけてくるので私は気が引ける部分があった。
宮内くんと話してるとなんだか、目立つ感じがするし。
でも、そんな私でも“恋がしたい!”という気持ちはある。
少女漫画を部活仲間に借りてたまに読んだりもするが、ああいうドキドキやキュンキュンをいつか自分も経験できたらいいな、なんて思う。
ふと私は、宮内くんと並んで歩いたときのことを思い出した。
あの、心臓のバクバクを...
もしかして、これが...?
でも、なんだろう。
胸がドキドキする感じと同時に、なんだかもやもやする感じもあった。
「付き合っちゃいなよ~!」
りえがゆきと一緒になってきゃっきゃしてる間、私は適当にヘラヘラしてその場をしのごうとしていた。
そのときだった。
「好きじゃない人と付き合う必要なんて、ないじゃん。」
横から声がして、その場が一斉にしん、と静まりかえった。
部活仲間の、ゆいかだった。
「あ、なんかごめんね。」
ゆいかは口角をクッ、と上げながらそう言うと、話を続けた。
「だってさ、宮内くんとまなみってなんか合わなさそうじゃん。まなみはもっと大人の男の人がいい感じするんだよね。落ち着いてるし...」
ゆいかが話をしている最中、ゆきとりえは終始顔を合わせながら引きつった表情をしていた。
ちょうどそのとき、先輩たちがはじめるよー、との呼びかけをしたので私は助かった...と思った。
ゆいかは話をやめて、さっさとコートに行ってしまった。
「きもー、なにあいつ。あいつも宮内くんのこと好きなの?」
ゆきがそう言ってキッ、とゆいかのほうを睨んだ。
「いやでもあの子さ、歳上の彼氏いるらしいじゃん。」
りえがにやにやしながらゆきにそう耳打ちした。周りに聞こえるくらいの大きな声だったが。
「えー、それまじなのかな?妄想じゃない?異常者らしいし。」
ゆきはそう言ってりえとかおりとケラケラ笑ってコートへ入っていった。
異常者、は言い過ぎだと思うがゆいかは少し変わり者で、部活の中では浮いている存在だった。
何かにつけて皆と違う意見を言ったり、恋愛に関してはませているようなことを言ったりするので、部活仲間はゆいかのことを良く思っていなかった。
“噂話好き担当”のりえの話では、ゆいかは今まで付き合ってきた恋人が全員歳上で、中学生の頃には学校の先生とも関係を持っていたんだとか。
他には、援助交際をしているだの精神病院に通っているだのと噂がいくつもあった。
ゆいかは基本、一匹狼で誰ともつるまず、部活でも放課後も1人でいることが多い。学校も休むことが多かった。
友達がいないわけではないが、ゆきやりえのような一部のグループからは嫌われていた。私も実際、あまり関わりたくないな、と思っていた。
しかし、私の話のせいでゆきとりえに悪口を言われてしまったことに、少し胸が痛んだ。同時に、“大人っぽい”と言われたことがなんだか嬉しくて、くすぐったい気持ちになった。
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