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第2章
つかめない
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携帯電話で時間を確認すると、19時半をまわっていた。1時間近くも気を失っていたのか...と、改めて思い返すとゾッとする。近々あまりよく眠れていないのに加え、て生理前だったからかな。
薄暗い夜道を、男の人と並んで歩く。しかも自分の先生で、年上の男の人と...
「まなみちゃんもバレーやってるからやっぱり背高いよね。」
「先生も高いじゃないですか。」
私は167cmあるが、先生は私よりもうんと背が高いので、180cm近くあるだろうと思う。
「背の高い女の人っていいよね~。」
先生はお世辞のつもりで言ったのかもしれないが、私はついつい嬉しくなってしまった。先生は、歩きながらいつものように気さくに話をしてくれた。
『大学生はエッチしたいだけ』
あーこんなときに。
思い出したくないことを!
私はこの上なくゆきを恨んだ。
そんなことを考えながら歩いていると、家から3分ほど歩いたところにある小さな公園に着いた。
「座ってしゃべろうか。」
公園の中にあるベンチを指さして、先生はそう言った。
私は、妙にドキドキしながらベンチに座った。ばか、ばか、ゆきのせいだ。
「あのさ...」
先生が口を開く。
「ちょっとジュース買ってくるから、待ってて。」
先生は立ち上がって、公園の入口のすぐ側にある自販機へと向かった。
私はふぅー、と思わずため息をついてしまった。私、どうしてこんなにドキドキしてるんだろう...
ふと、以前もこのような状態になったことを思い出した。
....宮内くんと並んで歩いた日のことだ。
「お待たせ~」
先生は500mlのペットボトルを私にはい、と手渡した。スポーツ飲料だった。
「ありがとうございます。」
「熱中症かと思ったんだけど...具合はどう?大丈夫なの?」
「あっ、なんとか...熱もなかったみたいなんで。」
私は近頃、先生の前だとなんだか自分がおかしくなる気がしていた。さっきもいきなり倒れたり、挙動不審になったり。なんだか自分らしく振る舞えない気がして、その度に私はひどく動揺してしまう。なので、先生の前では平静を装うのに必死だった。
「なんかじめじめしてるしねぇ。季節の変わり目って体調崩しやすいから、気をつけるんだよ?」
先生は炭酸飲料の缶のフタを開け、一口飲むとそう言って天を仰いだ。
「それとも...なにか悩み事?」
先生は優しい表情のまま、ん?と言いたげに首を斜めに傾げて私のほうを見た。私、そんな切羽詰まっている感じに見えたのかな。
でも、先生が私の様子を見て励まそうとしてくれているんだ、という事実に胸の奥がきゅん、となった。と、同時に、さっきまでゆきに言われたことを考えていた自分が恥ずかしくなってしまった。
「実は、最近あんまり寝てなくて...」
私は咄嗟にそう言ったが、嘘ではない。そうだこの際、先生に話してしまおう。
「小テスト全然できないしっ...水曜日が憂鬱なんです。」
私はそう言った次の瞬間に、言ったことを後悔した。
これでは、先生が責任を感じて落ち込んでしまうんじゃないか...
もしかしたら私が気を遣う立場じゃないのかもしれないけど、私は先生が傷ついてしまうんじゃないかと思うと耐えがたい気持ちになった。しかし、
「そっかそっか。」
と、先生は悲しむ感じでもなく同情する感じでもなく、いつもと変わらない様子だった。まるで、他人事のようなものいいだった。
先生のこんな感じの態度には、いつも調子が狂う。あっさりしているのか、冷たいのか、はたまたこれも一種の優しさなのか。
「でも寝れなくなるくらい小テストのこと考えてるなんてなんか...かわいー」
先生はそう言ってクスクス笑った。
『かわいい』
さらっと言うなんて...ずるい。
「からかわないでくださいよ、真面目な話なんです。」
私は照れ隠しで、ついキツめの口調になってしまった。
先生は笑うのを止めて、真っ直ぐ私の目を見た。
とごった黒色の瞳が私を捉え、口元にはかすかな笑みを浮かべる。
私はまた、ドキドキしてしまった。
「まなみちゃんは今のまんまでいいと思うよ。」
「えっ...」
一体どういうことなのか、わからなかった。先生はそれから、いつもの調子で
「うーん、体壊しちゃうのはダメだけど。生徒が真剣に勉強に取り組んでくれてるのが、先生としては1番嬉しいし。」
と続け、ベンチから立ち上がった。
「帰ろっか。」
先生は取り繕った笑顔を、私に向けてそう言った。
薄暗い夜道を、男の人と並んで歩く。しかも自分の先生で、年上の男の人と...
「まなみちゃんもバレーやってるからやっぱり背高いよね。」
「先生も高いじゃないですか。」
私は167cmあるが、先生は私よりもうんと背が高いので、180cm近くあるだろうと思う。
「背の高い女の人っていいよね~。」
先生はお世辞のつもりで言ったのかもしれないが、私はついつい嬉しくなってしまった。先生は、歩きながらいつものように気さくに話をしてくれた。
『大学生はエッチしたいだけ』
あーこんなときに。
思い出したくないことを!
私はこの上なくゆきを恨んだ。
そんなことを考えながら歩いていると、家から3分ほど歩いたところにある小さな公園に着いた。
「座ってしゃべろうか。」
公園の中にあるベンチを指さして、先生はそう言った。
私は、妙にドキドキしながらベンチに座った。ばか、ばか、ゆきのせいだ。
「あのさ...」
先生が口を開く。
「ちょっとジュース買ってくるから、待ってて。」
先生は立ち上がって、公園の入口のすぐ側にある自販機へと向かった。
私はふぅー、と思わずため息をついてしまった。私、どうしてこんなにドキドキしてるんだろう...
ふと、以前もこのような状態になったことを思い出した。
....宮内くんと並んで歩いた日のことだ。
「お待たせ~」
先生は500mlのペットボトルを私にはい、と手渡した。スポーツ飲料だった。
「ありがとうございます。」
「熱中症かと思ったんだけど...具合はどう?大丈夫なの?」
「あっ、なんとか...熱もなかったみたいなんで。」
私は近頃、先生の前だとなんだか自分がおかしくなる気がしていた。さっきもいきなり倒れたり、挙動不審になったり。なんだか自分らしく振る舞えない気がして、その度に私はひどく動揺してしまう。なので、先生の前では平静を装うのに必死だった。
「なんかじめじめしてるしねぇ。季節の変わり目って体調崩しやすいから、気をつけるんだよ?」
先生は炭酸飲料の缶のフタを開け、一口飲むとそう言って天を仰いだ。
「それとも...なにか悩み事?」
先生は優しい表情のまま、ん?と言いたげに首を斜めに傾げて私のほうを見た。私、そんな切羽詰まっている感じに見えたのかな。
でも、先生が私の様子を見て励まそうとしてくれているんだ、という事実に胸の奥がきゅん、となった。と、同時に、さっきまでゆきに言われたことを考えていた自分が恥ずかしくなってしまった。
「実は、最近あんまり寝てなくて...」
私は咄嗟にそう言ったが、嘘ではない。そうだこの際、先生に話してしまおう。
「小テスト全然できないしっ...水曜日が憂鬱なんです。」
私はそう言った次の瞬間に、言ったことを後悔した。
これでは、先生が責任を感じて落ち込んでしまうんじゃないか...
もしかしたら私が気を遣う立場じゃないのかもしれないけど、私は先生が傷ついてしまうんじゃないかと思うと耐えがたい気持ちになった。しかし、
「そっかそっか。」
と、先生は悲しむ感じでもなく同情する感じでもなく、いつもと変わらない様子だった。まるで、他人事のようなものいいだった。
先生のこんな感じの態度には、いつも調子が狂う。あっさりしているのか、冷たいのか、はたまたこれも一種の優しさなのか。
「でも寝れなくなるくらい小テストのこと考えてるなんてなんか...かわいー」
先生はそう言ってクスクス笑った。
『かわいい』
さらっと言うなんて...ずるい。
「からかわないでくださいよ、真面目な話なんです。」
私は照れ隠しで、ついキツめの口調になってしまった。
先生は笑うのを止めて、真っ直ぐ私の目を見た。
とごった黒色の瞳が私を捉え、口元にはかすかな笑みを浮かべる。
私はまた、ドキドキしてしまった。
「まなみちゃんは今のまんまでいいと思うよ。」
「えっ...」
一体どういうことなのか、わからなかった。先生はそれから、いつもの調子で
「うーん、体壊しちゃうのはダメだけど。生徒が真剣に勉強に取り組んでくれてるのが、先生としては1番嬉しいし。」
と続け、ベンチから立ち上がった。
「帰ろっか。」
先生は取り繕った笑顔を、私に向けてそう言った。
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