False friends and true friends

澪咲 しずく

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入学式(前)

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        -つまらない-
  思わず出てしまった声に慌てる。
  周りに聞こえていないことを願う。
  華々しい入学式だというのに、どうしてこんなに浮かない気分たのだろう。
  答えは簡単。隣に義理の母親、美智子がいるからだ。
  家柄ばかりを気にする、金と欲に目がくらんだ女がいるからだ。
  ファンデーションをぬりたくり、皺一つない礼服に身を包む彼女は、一段と目を引く美しさを持っている。
  あくまで、「見るだけ」の立場であったらの話だが。
  あいつはただの小煩い女だ。

  今日も家から高校につくまで十回以上同じことを繰り返された。 
「あなたは齋藤家の次女だということを忘れずに。私の顔に泥を塗ることがあったら……分かってるね。」

  母親の実家、齋藤家は代々、金融業界大手の会社を経営している。子社も合わせて五百以上はあるようで、東北の金融機関といったら、大体うちらしい。
  齋藤家は明治時代から続く伝統ある旧家だ。
  詳しい事は知らないが、政治家も輩出しているらしく、総理大臣や各党とも繋がっているらしい。どうでもいいが。

  そんな、結構な家に生まれてしまったせいで、私の人生なんて、レールの上を歩くだけだ。楽っちゃ楽だが。

  式が始まるまであと十分以上あるらしい。
 トイレに行くといい、席を立つ。
  美智子は横目で睨んできたが、気にせず出口へと向かう。

  肩の荷が降りた、力が抜けた。
  息を吐いたあとに、トイレとは逆方向の旧校舎に向かう。
  なんとなく、なんとなくだ。
  美智子から少しでも離れたかった。
    
  入学式なんて休んでしまおうか。
  そんなことを考えながら歩く。

  旧校舎だという建物は名前の通り古く、人気もなかった。
  風と木の音を聴きながら中に入る。
  ミシッ、ミシッ、と床が軋む。
  左手にある木の扉を開けると、そこは教室だったようで、机が並んでいた。
  埃がかぶってるあたりから、暫く使ってないのだろう。
     
  人気のない、落ち着いた雰囲気を醸し出しているその部屋は、心地よかった。

  優しい春の日差しが肌にしみる。 
  ふと目を閉じかけたときだった。
    
 「あんた、誰?」
  天使が声を出したら、多分こういう声なのだろう。
  優しいような、母性がくすぐられるような声だった。
  振り向くと、ドア付近に女の子が立っていた。
  つかつかと近づいてくる。
  歩き方さえ綺麗で、思わず見とれてしまった。

  自己紹介は……なんて考えていたら、いきなり胸を掴まれた。

    
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