水曜日の彼女

揣 仁希

文字の大きさ
8 / 39

女子会with僕な日曜日

しおりを挟む


現在、僕の隣で鈴羽が苦笑して向かいの席を見ている。
で、その向かいの席では3人の女の子達がケーキを食べながら僕等について盛り上がっている。

ええ、もうそれはそれは本当に盛り上がってらっしゃいます。はい。

・・・どうしてこうなったかと言うと・・・



「米がない・・・調味料も大分少なくなってきたし買い出しに行かないとマズイかな」

鈴羽と付き合いだして早いもので一月が経とうとしていたある日、夕食を作ろうとして米がないことに気づいた僕は、スーパーに買い出しに行くことにした。
僕の住むハイツは駅近ということもあり食料品店やその他のお店が結構周りにたくさんある。

僕はスマホで近隣のスーパーのチラシの安売りを探して、駅の向こうのスーパーに向かっていた。

鈴羽はまだ仕事中かなぁ、と思いながら駅前通りを歩いていると、

「皐月君~!」
「あれ?鈴羽?」

ちょうどすぐそばのお洒落な喫茶店に入ろうとしていた、鈴羽に呼び止められた。

「今日はお仕事もう終わったの?」
「うん。会社の同僚とちょっとお茶して帰ろうかなぁってことになって、皐月君は?」
「僕は食料品の買い出しかな、晩御飯作ろうと思ったらお米がなくてね」

この時、このまますんなりと買い出しに行っていれば良かったんだけど・・・

「九条先輩~どうしたんですか~?」

喫茶店の中から女の子が鈴羽を呼びに出てきた。
目のくりっとした20歳くらいの女の子だ。

「先輩~?あれ?この子はどちらさん?先輩の弟さんですか?」
「えっ?弟?違うわよ、皐月君は・・・」

女の子の問いに鈴羽は、答えかけて困った顔でこちらを見てきた。
ああ、きっと僕と付き合ってるってことは言ってないんだろうなぁ~う~ん、どうしようか?

僕達が顔を見合わせて苦笑していると、女の子は何か閃いたみたいで、

「今、九条先輩とお茶するところなんです!ご一緒しません?しますよね?はい、ご一緒しましょう!」

考える間もなく、鈴羽と僕は喫茶店に連れ込まれていった。

そこからはご想像通り。一緒にきていた女の子達に根掘り葉堀り聞かれて、今に至るわけ。

「九条先輩って彼氏さんと一緒のときも、こう~ビシッとした感じなんですかぁ?」
目のくりっとした子、夏木杏奈っていうらしい、が目をキラッキラッさせて聞いてくる。

「う~ん、どうだろ?僕は仕事中の鈴羽は知らないから・・・」
「「「 鈴羽 !」」」
「九条先輩を呼び捨てよ?鈴羽呼びよ?マジ彼氏さん年下ですか?・・・ご馳走さまです!」
「いや~ん、私も呼び捨てにされたい!『紗奈!』 キリッ!みたいな!」

えっと、大丈夫かのか?この人達。
あとの2人、ご馳走さまの子が、瀬尾梓さんでキリッの子が春木紗奈さん。
3人とも鈴羽の部下だそうだけど、大変だろうなぁ。仕事中はちゃんとしてるんだろうけど。

「3人とも、あまり皐月君を困らせないでね・・・」
鈴羽がため息をつきつつ3人に言っているが効果はゼロに等しい。

「年下の彼氏を心配する、九条先輩・・・レアだわ」
「会社の男供が知ったら卒倒するね!秘書課の花に彼氏!それも年下!」
「九条先輩、狙ってる社員かなりいるものね!営業の本田さんとか開発の佐藤さんとか・・・ご愁傷様です!」

鈴羽、もう諦めましょう。これ止まらないやつですよ、きっと。

「ごめんね、皐月君」
「いえ、鈴羽こそ、ご苦労様」
僕等は再度顔を見合わせて苦笑し冷めた紅茶を飲みながら彼女達を生温かい目で見守ったのだった。


結局、閉店近くまで盛り上がりは治らず、僕と鈴羽はぐったりして帰路についた。


もちろんスーパーは営業時間は終わっており、僕の夕食を作る気力も根こそぎ奪われていたのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?

藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。 結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの? もう、みんな、うるさい! 私は私。好きに生きさせてよね。 この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。 彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。 私の人生に彩りをくれる、その人。 その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。 ⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。 ⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。

心のすきまに【社会人恋愛短編集】

山田森湖
恋愛
仕事に追われる毎日、でも心のすきまに、あの人の存在が忍び込む――。 偶然の出会い、初めての感情、すれ違いのもどかしさ。 大人の社会人恋愛を描いた短編集です。

課長と私のほのぼの婚

藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。 舘林陽一35歳。 仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。 ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。 ※他サイトにも投稿。 ※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。

君に恋していいですか?

櫻井音衣
恋愛
卯月 薫、30歳。 仕事の出来すぎる女。 大食いで大酒飲みでヘビースモーカー。 女としての自信、全くなし。 過去の社内恋愛の苦い経験から、 もう二度と恋愛はしないと決めている。 そんな薫に近付く、同期の笠松 志信。 志信に惹かれて行く気持ちを否定して 『同期以上の事は期待しないで』と 志信を突き放す薫の前に、 かつての恋人・浩樹が現れて……。 こんな社内恋愛は、アリですか?

処理中です...