10 / 39
ちょっとしたデートの月曜日
しおりを挟む翌月曜日。
昼休みのうちにバイト先に電話し無理を言って休みにしてもらった。幸いめったに休んだりしないおかげで店長に何か言われることもなくすんなりと話は終わった。
授業が終わりさっそく向かおうとすると当然の様にリョータに捕まる。
「さつき~そんなに急いでどこに行くのかなぁ~?朝からソワソワしてるし?」
「い、いや別に、ちょっと用事があってね」
挙動不審な動きで僕ににじり寄ってくるリョータとは目を合わさずに鞄を持って教室から出ようとしたのだが、
「・・・お前、彼女できただろ?」
「えっ?そんなわけないじゃないかー」
驚くほどの速さで教室の入り口に立ち塞がったリョータに棒読みで返す僕。
「彼女か?彼女なんだな?可愛いのか?可愛いいんだな?この学校か?いや急いで帰るとこを見るとよその学校か?もしかしてバイト先か?いやいやバイト先のお客さんか?・・・ナンパ?ないか。それで同級生?年下?年上?」
お前怖いよ。目が血走ってるぞ。
「そうだね、ご想像の通り、彼女だよ。年上。OK?じゃあまた明日ね」
「皐月様!お友達紹介して下さい!」
大丈夫か?コイツ・・・異様なまでにキレのあるお辞儀をして血走った目で見られるといくらなんでも本当に怖いぞ。
「え~、まぁ聞いとく」
明らかにおかしなことになっているリョータにそう言い残して僕は教室を出る。
教室の入り口では、リョータが1人で妄想の世界に入っていた。
誰か止めてやってくれ。僕じゃ無理だ。
いつもの公園、時間は5時半すぎ僕はベンチに座って彼女を待っていた。いつも通り、犬の散歩をする人や仕事帰りの人、学生が行き交っている。
「皐月君、お待たせ。待たせちゃったかな?」
「えっ?あれ?」
何げなく行き交う人を見ていた僕は、急に声を掛けられてびっくりした。
そこには、いつものスーツ姿ではなく、ジーパンに白のサマーニット、髪を後ろで束ねてキャスケットを被った鈴羽が立っていた。
・・・可愛い。ヤバイめっちゃ可愛い。
「えっ?あれ?どうしたの?いつものスーツじゃないんだ」
「え~っせっかく皐月君のお部屋に行くんだから着替えてきたんだよ。おかしいかな?」
「う、ううん、すごく似合ってるよ。その・・・めっちゃ可愛いです」
僕の身長が170㎝くらいで鈴羽は僕より少し低いくらいの身長がある。スラッとしていてスタイルがいいからジーパンがすごく似合う。
「うふふ、ありがと。じゃいこっか?」
そう言って鈴羽は僕の手を握り、どっち?という感じで首を傾げる。
あっち。僕はそんな鈴羽に少し見惚れて慌てて家の方に歩き出す。
公園から駅のほうへ向かいながら横を歩く鈴羽を見る。
正直、鈴羽は美形だ。クールな印象を受ける顔立ちに切長の目と高身長なスタイル、仕事柄か歩く姿勢は美しく、振り返って見ている男性が結構いる。
「ん?どうかした?」
「えっ、いや、別に、ほら僕の家は駅向こうだからどうする?駅地下から行く?」
「ん~駅地下かな?ほらまだ時間早いし皐月君と歩きたいなって、ちょっとしたデートじゃない?」
そう言って鈴羽は繋いだ手をぎゅっと握って僕に身を寄せる。
えっと、鈴羽さん?色々あたってますよ?主に胸とか・・・胸とかね。
僕等は、側からみればイチャイチャしやがって!リア充爆発しろ!的な感じで駅地下に入っていった。
駅地下は6時頃ということもありかなりの人で混み合っていた。
「この時間だと買い物してる人と仕事帰りの人で混むんだよね」
「そうね、地下にはあんまりこないから知らなかったけど・・・すごいわね」
この時間の駅地下のスーパーや惣菜屋さんは戦場である。ちょうど夕方のタイムサービスが始まるくらいで、おばさま方が駆け回っている。店側もマイク放送とかで煽るからおばさま方が右往左往していて見ている分には中々楽しいものがある。
絶対に参加したりはしないけどね。
鈴羽と他に服屋さんを覗いたり、色々店をひやかしつつ1時間程ぶらぶらしてから僕の部屋に向かうことになった。
「えへへ、楽しみだなぁ~皐月君のお部屋~彼氏のお部屋~」
「いやぁ普通の部屋だよ?」
「違うよ、好きな人の部屋に行くことが嬉しいんだよ」
頬をぷくっと膨らませてこちらを見上げる彼女も一々可愛くて。
幸せを感じながら僕等は僕の家に到着したのだった。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
フローライト
藤谷 郁
恋愛
彩子(さいこ)は恋愛経験のない24歳。
ある日、友人の婚約話をきっかけに自分の未来を考えるようになる。
結婚するのか、それとも独身で過ごすのか?
「……そもそも私に、恋愛なんてできるのかな」
そんな時、伯母が見合い話を持ってきた。
写真を見れば、スーツを着た青年が、穏やかに微笑んでいる。
「趣味はこうぶつ?」
釣書を見ながら迷う彩子だが、不思議と、その青年には会いたいと思うのだった…
※他サイトにも掲載
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる