水曜日の彼女

揣 仁希

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初めての味と月曜日

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「どうぞ。」
僕はドアを開けながら鈴羽を家に招き入れる。
「うわぁ結構広いのね、1人で暮らすには広すぎない?」
「うん、ちょっと持て余してるんだけど、管理会社の人が父さんの知り合いだったから少し安くしてくれたからね」
確かに僕の住む部屋は高校生が1人で暮らすには広すぎると思う。

「適当にくつろいでてね、お茶淹れてくるから」
「はぁい、・・・皐月君のお部屋・・・」
鈴羽は物珍しそうに部屋の中をキョロキョロと見ている。

リビングはフローリングにカーペットを敷いてあり、鈴羽が座っているローソファ、テーブルとテレビくらいしか大きな物は置いてない。
「はい、どうぞ」
鈴羽に紅茶を出しながら、隣に座る。

「男の子の部屋ってもっと散らかってるイメージがあったんだけど、シンプルな部屋なのね」
「ははは、必要最低限のものしか置いてないからね。それに散らかった部屋に招待するわけないだろ?」

それもそうねと、鈴羽は紅茶を飲みつつ僕にもたれかかってくる。

「あっちが皐月君のお部屋?」
「うん、まぁここと同じで机とベッドくらいしかないよ」
鈴羽から漂う香りにドキッとしながら僕は努めて平静を装ってこたえる。
だって、自分の家で彼女と2人きりなんだよ、色々と思うことがあるじゃない?

「あ~じゃあ僕は、夕飯の準備してくるね、2日目カレーとサラダとスープくらいでいい?」
「ええ、楽しみにしてるわ、皐月君の手料理」

僕はキッチンに行き昨日のカレーを温めながら改めて、鈴羽のことを考える。あんな綺麗な人が僕と付き合ってくれてるんだよな。僕のどこがいいんだろ?僕はずっと前から好きだったけど・・・彼女はどうなんだろ?
やめとこう、あまり考えると落ち込みそうだ。


「「いただきます。」」
「うん!美味しい!すごいすごい!皐月君料理上手なんだね~」
鈴羽は満面の笑顔でそう評価してくれる。
「ありがとう、そう言ってもらえると作った甲斐があったよ」
「他の料理とかも出来たりするの?」
「そうだね、大体大丈夫だと思うよ。3年も自炊してるといやでも色々作るから・・・好き嫌いもないしね」
実際、1人暮らしを始めたころはコンビニに随分とお世話になったけど家計が苦しくなるから作るようにしたんだけどね。

「へ~私もお料理頑張らないと・・・」
「鈴羽は料理は得意なほう?」
「えっ、まぁ、それなりには」
視線が宙を彷徨ってますよ、鈴羽さん。意外と料理は得意じゃないみたいだ。

「「ごちそうさまでした」」

夕飯後、洗い物を済ませて2人でソファに座りコーヒーを飲んでゆっくりする。幸せな空気が僕等を包む。
学校のこと、会社のこと、こないだの3人の話や僕の友人の話、取り立てて変わった会話じゃないけれど幸せだなぁって感じる。

「もうこんな時間なんだ・・・」
時刻は10時前、鈴羽がそう呟いて、そろそろ帰るねと立ち上がる。

「うん、明日も仕事だもんね、遅くなっちゃたね」
「ううん、大丈夫。またお部屋に来てもいいよね?」
「もちろん!いつでも大歓迎だよ」
「他の人にはそういことは言っちゃダメよ?」
「ははは、鈴羽にしか言わないよ」
玄関で靴を履きおえてから、鈴羽はこちらに振り返り

「皐月君・・・大好き」

ちょっと背伸びをして僕の唇にその可憐な唇を重ねた。

僕等は唇を重ねたまましばらく抱きしめあい、そして・・・

「皐月君、大好きだよ」
「僕も大好きだよ、鈴羽」
「ねぇはじめてのキスの感想は?」
「う~ん、カレー味?」

バカ・・・彼女はそう言って笑い僕等はもう一度唇を重ねた。


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