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……僕はまだ、母さんの代わりにはなれていないってことか。
悔しさという感情が、突如として現れた……。
「母さんの豚汁……か」
――その夜、僕は布団の中で天井を見つめていた。
寝返りを打っても、目を閉じても、夕星の涙が頭から離れない。
母さんの豚汁とは違う……その言葉が、胸の奥を締めつけ続ける。
台所に立てば、すぐにでも再挑戦できる。
けれど、どう作ればいいのかがわからなかった。
母さんの背中を思い出そうとしても、煙のように揺らめいて消えていく。
……母さん、母さんは一体……どんな味付けをしていたの? どんな食材を使っていたの?
僕だって、会いたいよ……。
そう考えていたら、涙が頬を伝っていった。
枕が湿っていくのを感じて、寝返りを打つ。
もう片方の頬からも涙が伝っていき、結局枕はびしょびしょになってしまった。
……あれ、いつの間にか、夢の中に。
あれは、母さん?
いや、でも靄がかかっているようで、実態が掴めない。
台所に立っているのはわかるんだけど、手元なんて全く見えやしなかった。
その隣に立っているのは……僕と夕星かな?
何かを切ったり、鍋で煮込んだりしているのが見える。
もしかして……豚汁? あの夕星の笑顔……絶対そうだ。
クソ、全然様子が見えない。
どうしてシルエットはハッキリとわかるのに、工程と食材はまるで浮き出てこないのだろう……。
母さんを亡くして、五年が経った。
そうか……母さんの記憶が薄れてしまっている……それがいけないのか。
ごめんね、母さん。
夕星のために、頑張って思い出すから……。
悔しさという感情が、突如として現れた……。
「母さんの豚汁……か」
――その夜、僕は布団の中で天井を見つめていた。
寝返りを打っても、目を閉じても、夕星の涙が頭から離れない。
母さんの豚汁とは違う……その言葉が、胸の奥を締めつけ続ける。
台所に立てば、すぐにでも再挑戦できる。
けれど、どう作ればいいのかがわからなかった。
母さんの背中を思い出そうとしても、煙のように揺らめいて消えていく。
……母さん、母さんは一体……どんな味付けをしていたの? どんな食材を使っていたの?
僕だって、会いたいよ……。
そう考えていたら、涙が頬を伝っていった。
枕が湿っていくのを感じて、寝返りを打つ。
もう片方の頬からも涙が伝っていき、結局枕はびしょびしょになってしまった。
……あれ、いつの間にか、夢の中に。
あれは、母さん?
いや、でも靄がかかっているようで、実態が掴めない。
台所に立っているのはわかるんだけど、手元なんて全く見えやしなかった。
その隣に立っているのは……僕と夕星かな?
何かを切ったり、鍋で煮込んだりしているのが見える。
もしかして……豚汁? あの夕星の笑顔……絶対そうだ。
クソ、全然様子が見えない。
どうしてシルエットはハッキリとわかるのに、工程と食材はまるで浮き出てこないのだろう……。
母さんを亡くして、五年が経った。
そうか……母さんの記憶が薄れてしまっている……それがいけないのか。
ごめんね、母さん。
夕星のために、頑張って思い出すから……。
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