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「黒島、宮館双葉って、どう思う?」
「宮館さん? い、いや……どうって」
「とぼけるなよ。めっちゃ可愛くないか? もしかして黒島、そういうの興味ない?」
「いや、ないわけないだろ。確かに可愛いよな」
「だよなー。付き合いてぇー」
一番最初に仲良くなった北沢は、女とギャンブルが好き。
あんまり女子ウケは良くなさそうだけど、話しやすくてノリが良かった。
あと、意外と優しい。
高校の時は軽音楽部でバンドをやっていたらしく、見た目も含めて全てが『確かにやってそう』と思えるほど、典型的なチャラさを感じられた。
「いや、黒島よ? 俺なんかカメラなんて興味の『きょ』の字もないのに、宮館さんを追って来ちまったんだから」
「そうなのか、すごい執念だな」
「バカ、執念じゃない。作戦だ」
「ああ、確かに。最初インスタントカメラを持ってきた時はビビったわ。強制ではないけど、一応ちゃんとしたのを買った方が良いと思ったし」
「そういうのは後回しにしてたからな。今となっては反省してるよ」
最初に会った時から、北沢は面白いやつだと思った。
仲良くなるのに時間はかからず、すぐにテンポの良い掛け合いができるほどになった。
だけど、宮館双葉の話が出た時だけは、心臓が高鳴った。
カメラサークルに入って、双葉と最初に会話をした時から、俺の心は双葉に奪われてしまっていたから……。
「黒島君、そのカメラ見せて」
「え? あ、ああ、いいよ」
色白で透明感丸出し。髪はストレートのブラウンベージュで、鼻筋が通っているのが特徴的だ。唇が大きく、笑う時は口角を上げて大きく笑ってくれる。
まさにハーフ美人みたいな女性だった。
最初に双葉から名前を呼ばれて、まだ使いこなせていないカメラを貸した時から、すでに心臓は悲鳴を上げていた。
「私もミラーレス買おうかな。今一眼レフだからさ、こういう手軽なやつも欲しいんだよね」
大した知識がないのも相まって、「そうなんだ」としか返せなかった。
口をパクパクさせながら、何か言わないとと焦っている自分が恥ずかしい。
「っていうか、黒島君と初めて話したよね?」
「……そ、そう言えばそうだね! よ、よろしく……」
本当はずっと意識していたのに、『そう言えば』なんて誰が言っているんだと、自分が自分で可笑しく思えた。
気にする素振りも見せない双葉は「うん! よろしく!」と言って、白い歯を見せて笑ってくれる。
高嶺の花が話しかけてくれたことで、幸せになった。
高校の時、一度は恨んだ神様を許すことにした。
――友達と呼んでも違和感はないくらいの関係になって、半年くらいか。
すっかり大学生活や一人暮らしにも慣れてきた時に、とあるイベントが企画される。
「宮館さん? い、いや……どうって」
「とぼけるなよ。めっちゃ可愛くないか? もしかして黒島、そういうの興味ない?」
「いや、ないわけないだろ。確かに可愛いよな」
「だよなー。付き合いてぇー」
一番最初に仲良くなった北沢は、女とギャンブルが好き。
あんまり女子ウケは良くなさそうだけど、話しやすくてノリが良かった。
あと、意外と優しい。
高校の時は軽音楽部でバンドをやっていたらしく、見た目も含めて全てが『確かにやってそう』と思えるほど、典型的なチャラさを感じられた。
「いや、黒島よ? 俺なんかカメラなんて興味の『きょ』の字もないのに、宮館さんを追って来ちまったんだから」
「そうなのか、すごい執念だな」
「バカ、執念じゃない。作戦だ」
「ああ、確かに。最初インスタントカメラを持ってきた時はビビったわ。強制ではないけど、一応ちゃんとしたのを買った方が良いと思ったし」
「そういうのは後回しにしてたからな。今となっては反省してるよ」
最初に会った時から、北沢は面白いやつだと思った。
仲良くなるのに時間はかからず、すぐにテンポの良い掛け合いができるほどになった。
だけど、宮館双葉の話が出た時だけは、心臓が高鳴った。
カメラサークルに入って、双葉と最初に会話をした時から、俺の心は双葉に奪われてしまっていたから……。
「黒島君、そのカメラ見せて」
「え? あ、ああ、いいよ」
色白で透明感丸出し。髪はストレートのブラウンベージュで、鼻筋が通っているのが特徴的だ。唇が大きく、笑う時は口角を上げて大きく笑ってくれる。
まさにハーフ美人みたいな女性だった。
最初に双葉から名前を呼ばれて、まだ使いこなせていないカメラを貸した時から、すでに心臓は悲鳴を上げていた。
「私もミラーレス買おうかな。今一眼レフだからさ、こういう手軽なやつも欲しいんだよね」
大した知識がないのも相まって、「そうなんだ」としか返せなかった。
口をパクパクさせながら、何か言わないとと焦っている自分が恥ずかしい。
「っていうか、黒島君と初めて話したよね?」
「……そ、そう言えばそうだね! よ、よろしく……」
本当はずっと意識していたのに、『そう言えば』なんて誰が言っているんだと、自分が自分で可笑しく思えた。
気にする素振りも見せない双葉は「うん! よろしく!」と言って、白い歯を見せて笑ってくれる。
高嶺の花が話しかけてくれたことで、幸せになった。
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