落ちこぼれ子女の奮闘記

木島廉

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ユリアとの再会

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ドメルのダンジョンを訪れた翌日。

リリスとフィリップ王子は数名の警護兵と共に、リースの地下神殿を訪れた。この地下神殿が最近ダンジョン化していると言う噂が立ち、軍と冒険者ギルドが中心になって調査し始めていると言う。
だがまだダンジョンと呼ぶには早いようで、地下1階では2体のゴブリン、地下2階では2体のスケルトン、地下3階では2体のレイスが出てきただけだった。そして地下4階。ドルキア帝国に建てられた神殿としてはここが最下層になるのだが、魔物は全く出てこなかった。

「拍子抜けだねえ。まだ開店準備中かい?」

フィリップ王子も少しつまらなさそうだ。

「さて、リリス。水の亜神との接点があるのなら、呼び出してみてくれ。」

フィリップ王子の言葉にうなづいて、リリスは立ち止まり、大きく叫んだ。

「ユリア~! 居るのならこっちに出て来てくれないかなあ! お願いがあるのよ~」

リリスの様子を見て王子は目が点になっていた。

「呼び出すと言っても友人を呼び出すような口調だね。何か儀式でもして呼び出すのかと思っていたよ。」

王子は呆れてしまったようだ。だが程なくリリスの前に淡いブルーの光が現われ、人の形になってこちらに近付いてきた。ユリアだ。

「どうしたのよ、リリス。会いに来てくれるのは嫌じゃないけどね。」

相変わらず掴みどころのないユリアだ。
これがユリアですとフィリップ王子に紹介しようとして、リリスは自分の周囲の異変に気が付いた。
王子や兵士が動かない。否、動けないのか?
目や口は動けそうだが身体はその場で硬直したままだ。しかも王子の周囲にあったロイヤルガードの気配も消えている。

「心配しなくても良いわよ。チョロチョロと動けなくしているだけだからね。話は出来るわよ。」

そう言いながらユリアはフィリップ王子に近付いた。王子の顔に緊張が走る。

「どこかで見たような顔だわね。」

王子の顔をまじまじと見つめるユリアに、王子は改めて尋ねた。

「あなたは水を司る亜神なのですか?」

「私の本体はアクア=エル=リヴァイタル。私はその本体のほんの一部よ。かけらと言うか髪の毛のような存在ね。」

髪の毛は謙遜だろうと思いつつ、ここでリリスは疑問に思っていた事を口にした。

「ユリア。あなた、もしかしてギースのダンジョンからダンジョンコアを奪い取ってきたの?」

「あらっ。あそこってギースって言う街だっけ? 20階層しかないダンジョンがあったから、ここなら良いかなって思って・・・・・」

やはりこいつの仕業だ。

「お陰で騒動が起きているのよね。」

「それって私に苦情を言いに来たの?」

ユリアの表情が少し曇った。ここで機嫌を損ねるのは拙い。リリスは首を横に振って、

「違うわよ。その件とは別。近隣のダンジョンでこれを手に入れたんだけど・・・」

そう言いながらリリスは懐から淡いブルーの宝玉を取り出して、ユリアの目の前に差し出した。
その途端にユリアの顔のこわばりが緩んだ。

「あらっ! 懐かしいわね。これって私が創った宝玉じゃないの。」

あれれ、そうなんだ。

「ユリアが創ったものなの?」

「そうよ。私は時たま起きて世界を巡回する時があるのよ。これは1000年近く前に創ったものだわ。私に色々と要求する生意気な青年がいて、そいつに試練を与えたの。でも無事にクリアしたので褒美に創ってあげたのよ。喜んでいたわ、その子。そう言えば・・・」

そう言いながらユリアはフィリップ王子の顔を再びじっと見つめた。

「そうだわ。あんたってあの青年に似ているのよね。名前は・・・・・。そうだ! ウルバヌス。ウルバヌス=グリージアと名乗っていたわね。」

ユリアの言葉に王子は驚きの表情で口を開いた。

「ウルバヌス大帝はドルキア帝国の始祖の名です。」

ユリアの目が懐かしそうにしているように感じられる。

「それであの子の面影があるのね。」

ユリアがリリスから宝玉を手に取ってじっと見つめた。

「長年放置していたから私の魔力が枯渇しているわ。これを元通りにして欲しくてここに来たのね。」

ユリアの言葉にリリスはうんうんと強くうなづいた。

「そうなのよ。水の亜神の息吹を吹き入れて欲しいのよ。」

「息吹ね。そう言う設定と表現をしていたけど、要するに私の魔力を少し注ぐだけなのよね。」

多少自虐気味に話すユリアだ。

「良いわよ。でも無条件では駄目。」

「ではどうすれば?」

王子の言葉にユリアはニヤッと笑った。

「私が演出をしてあげるわ。大体あんた達ってそう言う儀式めいたものが好きだからね。」

「私の本体を祀っている神殿はあるの?」

「王都にあります。」

「それならそこでやるわよ。この宝玉を置いた台座を3人の神官が囲んで祈りを捧げなさい。そうすれば私が本体の姿で現れて宝玉に魔力を注いであげる。日時は・・・3日後の正午ね。国王や王族や諸侯を集めなさい。リリス、あんたも来るのよ。」

私も行くの?
他国の神殿なんだけど・・・。

リリスの疑問を気にしつつ、王子はユリアに確認した。

「3日後ですか? 準備の為の時間がありませんね。」

「突然啓示が降りたとでも言えば良いのよ。」

ユリアはそう言うとくるりと向きを変え、リリスに近付いた。

「リリス。この地下神殿の周囲にお店を出す土地を確保しておきなさい。本格的にダンジョン化したら人が集まってきて繁盛するわよ。」

そんな事、この場で言う事じゃないでしょ。それにダンジョン化が進んでいないようだけど・・・。

疑問に満ちたリリスの表情を読み取って、ユリアは説明を始めた。

「今はまだダンジョンコアのテイムが充分に進んでいないのよ。沢山魔物を造りたいんだけど、まだ充分に言う事を聞いてくれなくてね。あと少し時間が掛かりそう。」

「えっ! ダンジョンコアってテイム出来るものなの?」

「力づくで隷属させるのも芸が無いので、徐々に時間を掛けてテイムしているのよ。まあ、私の意のままに動くようになるのも時間の問題だわ。」

唖然とするリリスに背を向けてユリアは手を振り、神殿の奥に向かって行った。じゃあまたねと言う言葉を残して。

ユリアが消えてしまった直後に王子や兵士達も身体の拘束が解けて、自由に動けるようになった。

「まるで夢を見ていたようだ。」

王子はそう言いながら兵士達に指示を出し、リリスと共に神殿から地上に向かった。





翌日からリリスは魔法学院での学校生活に戻った。だがサラはまだ入院中で学生寮に戻ってこない。封印が解かれた際の影響で魔力の回路に支障があるようで、リハビリをしていると言う。担任のロイド先生の話では復学までにまだ1週間ほど時間が掛かるそうだ。

その間、毎日のように夜になるとフィリップ王子の使い魔がやってくる。初日は若干ウザいと感じたリリスだが、サラが居ないので寂しさを紛らわすには良い相手かも知れない。そう思って話をしているうちに何となく打ち解けてきたようにも感じていた。

取り留めも無い話が大半だが、さすがにドルキア王国の王都の神殿での儀式の前日になると、そのための準備で忙しそうだった。

「リリス。明日の式典には君も参加してもらう。これはユリアからの要請でもあったからね。」

「でもドルキアの王都ですよ。私が行って良いのですか?」

「魔法学院には明日休学の連絡をしておくよ。妹も参加する為に学院を休むからね。」

これって学院側は不審に思わないのかしら?

そう思いつつもリリスは明日の身支度を考えていた。

「私はドレスアップして参加するんですか?」

リリスの話を聞いて王子の使い魔の小人はぷっと吹き出した。

「それは出来ないよ。他国の貴族の娘だからねえ。」

「君には神官の衣装で参加してもらう事にしている。儀式を後方で見ていてくれれば良い。」

それなら良いわ。
フィリップ王子の配慮に感謝して、リリスは明日の身支度を始めた。








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