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風の女神4
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リースの地下神殿のダンジョンから戻って来た日の夜。
リリスは自室でベッドの中に居た。
ユリアによって強制的に転移され、更にウィンディの出現により話がこじれてしまったが、その後ユリアは無事にリリスとイライザを学生寮に戻してくれた。
イライザは学生達の父母が宿泊するためのゲストルームに泊まり、明日にも帰国する予定である。
早々と寝息を立てているサラの様子を気にしながらも、リリスはウィンディとのやり取りを思い出していた。
アリサの存在がどうしても気になる。
恐らく日本からの転移者だったのだろう。
どうせなら同じ時代に巡り合いたかった。
そう思っていると、突然解析スキルが発動された。
『風属性の魔法が具現化しました。ステータスに反映されます。』
そう言えばそんな事もあったわね。
リリスは改めて自分のステータスを開いてみた。
**************
リリス・ベル・クレメンス
種族:人族 レベル24
年齢:14
体力:1500
魔力:4300
属性:土・火・風
魔法:ファイヤーボール レベル5+++
ファイヤーボルト レベル7+++
アースウォール レベル7
加圧 レベル5+
アースランス レベル3
硬化 レベル3
エアカッター レベル3
エアバースト レベル3
(秘匿領域)
属性:水・聖・闇(制限付き)
魔法:ウォータースプラッシュ レベル1
ウォーターカッター レベル1
ヒール レベル1+ (親和性による補正有り)
液状化 レベル15 (制限付き)
黒炎 レベル2 (制限付き)
黒炎錬成 レベル2 (制限付き)
スキル:鑑定 レベル3
投擲 レベル3
魔力吸引(P・A) レベル3
魔力誘導 レベル3 (獣性要素による高度補正有り)
探知 レベル4++ (獣性要素による高度補正有り)
毒生成 レベル4+ (獣性要素による高度補正有り)
解毒 レベル4+ (獣性要素による高度補正有り)
毒耐性 レベル4+ (獣性要素による高度補正有り)
火力増幅(加護と連携可能)
火力凝縮(加護と連携可能)
亜空間シールド(P・A)(加護と連携可能)
減圧(重力操作)レベル5+
調合 レベル2
魔装(P・A) (妖精化)
魔金属錬成 レベル1++(高度補正有り)
属性付与 レベル1++(高度補正有り)
スキル特性付与 レベル1++(高度補正有り)
呪詛構築 (データ制限有り)
瞬間移動(発動に制限有り)
覇竜の遺志を継ぐ者
解析
最適化
**************
風属性がステータスの可視領域に入っているわよ。
『それは最初からそう言う仕様なのです。秘匿領域を嫌っていると言った方が良いかも知れません。』
嫌っているって誰が?
『この属性を提供してくれた方です。』
ああ、ウィンディの事ね。
目立ちたいって言う事なのかしら?
『風属性はいずれ火属性と連携する高位魔法を取得した際に役立ちますので、この領域にあった方が自然ですね。』
そうなのかなあ。
でもこれで6属性が揃っちゃったわね。
高位魔法の取得も容易になるって本当なの?
『それはあくまでも伝承です。』
ええっ?
そんな風に聞いたわよ。
『6属性を揃えた人族は過去に記録がありませんので。』
『もっとも、既に人族から離脱しつつあるようなので、過去の記録には当てはまらないかも知れませんが・・・』
そんな事言わないでよ。
まるで魔物になりつつあるようじゃないの。
『語弊がありましたね。離脱ではなく超越です。』
それって言葉の綾ってやつよね。
あまり変わらない気がするんだけど、まあ良いわ。
ご苦労様でした。
リリスは解析スキルの労をねぎらいながら、その発動を解除した。
明日の昼休みにエアカッターを試してみよう。
そう思いながらリリスは眠りに陥っていく。
だが、再びその眠りが妨げられた。
突然真っ白な部屋に呼び出されてしまったのだ。
夢なのか現実なのかは定かではない。
亜空間と言えばそうなのかも知れないが、時折呼び出されるパターンだ。
起こさないでよぉ~。
眠い目を擦りながらリリスは白い空間の中央にある椅子に座った。
真っ白なテーブル越しに座っているのは、白い衣装に身を包んだロスティアである。
座長と言う呼び名の方が似合っているのかも知れないが、今回は単独で登場したようだ。
「起こしてしまって悪かったね。」
「だが儂としてもお前に伝えておきたい事があるのでな。」
ロスティアはそう言うとリリスの頭をじっと眺めた。
「ウィンディに風属性を植え付けられたようだね。アイツのやる事はいつも先走っているからなあ。」
「植え付けられたって・・・ロスティア様の願った事ではなかったの? ウィンディの言葉から私はそう理解していたんだけど・・・」
リリスの言葉にロスティアは、あご髭を撫でながらうんうんと頷いた。
「リリスが6属性を揃えたら、儂の実体化も進むと考えたのだろう。儂としてはそれほど急ぐつもりは無かったのだがな。」
ロスティアの言葉にリリスは違和感を持った。
ロスティアがウィンディに頼んだのではなかったのか?
リリスの疑問を察してロスティアは口を開いた。
「風の亜神は煽るのが習性なのだよ。奴が煽るのは火の亜神だけではない。」
「全てのものを加速させる。それが風の亜神の役割だ。奴はあらゆる事象のブースターなのだよ。」
そう言う事なのね。
ロスティア様もその実体化を煽られたって事なのね。
「でも6属性を揃えても本当に高位魔法が取得しやすくなるの?」
「まあ、それは事実だ。そのお陰でお前も光魔法を手に入れ易くなる。そのうちそう言う環境が整えば、取得する事もあるだろう。」
う~ん。
今直ぐにどうなるって話でもなさそうね。
「それとは別に、6属性を揃えた事で、今まで予想もしなかった様な状況に遭遇する事もあるだろう。まあ、それに対する対応はリリスなら万全だとは思うが・・・・・」
「そんなに脅かさないで下さいよ!」
リリスの叫びにロスティアは失笑した。
「まあ、それほどに心配する事は無い。いつも通りのお前で居れば良いと思うぞ。」
それって励ましになっていない!
そう叫ぼうとしたリリスの口を遮るように、ロスティアは手を振って消えていった。
一方的に話して消えていくなんて・・・。
それで私に何を伝えたかったの?
自分がウィンディに依頼したわけじゃないって弁解したかったのかしら?
不満が募るリリスだが、その不満を上回るように眠気が襲ってきた。
リリスはそのまま深い眠りに陥ってしまった。
翌日の昼休み。
リリスはウィンディから付与された風属性の魔法を試してみる為に、学舎を出てケイト先生から管理を任されている薬草園に向かった。
だが薬草園に着いた途端に、カバンの中からブーンと言う振動音が伝わって来た。
カバンの中で点滅を繰り返しているのは、以前マキに手渡していた緊急連絡用の魔道具である。
あれっ?
マキちゃんからだ。
どうしたんだろう?
リリスはそのまま薬草園の片隅の小屋で椅子に座り、魔道具が示す座標に使い魔のピクシーを召喚させた。
その使い魔と五感を共有すると、目の前に白い祭司の衣装を着たマキが清楚な笑顔で立っていた。
周囲は石造りの壁で覆われていて、周囲には他の祭司の姿も見える。
どうやらここは王都の神殿のゲストルームのようだ。
「急に呼び出してごめんね、リリスちゃん。この時間ならお昼休みかと思って・・・」
「うん。お昼ご飯を食べ終わったところよ。それでどうしたの?」
マキの表情を見る限り、それほど緊急を要する状況ではなさそうだ。
ちょっとした用件で呼び出したのかも知れない。
それならそれでも良いんだけど・・・。
そう思ったリリスだが、マキは少し口ごもって直ぐに話そうとしない。
若干遠慮しているような様子だ。
「実は・・・他国の神殿に1週間ほど出張する事になったの。それで少し心細いのでリリスちゃんに付いて来て貰おうと思って・・・」
随分急な話だ。
「1週間なんて無理よ。私も授業があるからね。休日に同行するとしても2日が限度よ。」
「うんうん。それは分かっているわ。」
マキはそう言いながらうふふと意味深な笑顔を見せた。
「でもリリスちゃんが特別休暇を申請出来る行先だから大丈夫よ。」
えっ?
意味が分からないわ。
「それで行先って何処なの?」
「イシュタルト公国よ。リリスちゃんも行った事があるんでしょ?」
イシュタルト公国!
先日行ったばかりじゃないの。
「魔法学院の生徒会同士で行き来しているって聞いたわよ。」
「それって誰から聞いたのよ?」
「神殿の管理者からよ。小さな国だから情報は直ぐに共有されるんだって。」
マキはそう言うとえへへと笑った。
「実はもうすでに、向こうの魔法学院からこちらの魔法学院に、リリスちゃんの招請を申請したって言ってたわ。勿論形式だけだけどね。」
「それで明後日の午後には出発したいの。良いかしら?」
随分段取りが良いわねえ。
だがそう思ったものの、リリスも気になる事がある。
ウィンディに聞いたアリサと風の神殿の件だ。
事情を聴き、特に断る理由も無いので、リリスはマキからの依頼を快諾した。
そして迎えた2日後の昼。
出迎えに来た馬車に乗り、リリスは王都の神殿に向かった。
一応生徒会同士の交流と言う設定なので、リリスは学生服のままである。
王都の神殿前の広場でリリスを出迎えたマキは、リリスの着ている学生服の裾に触れながら羨ましそうな表情を見せた。
「私も学生服を着てみようかしら。」
「マキちゃん。それって単なるコスプレになっちゃうわよ。」
リリスの言葉にマキは更ににじり寄って来た。
「リリスちゃんは現役のJKだから余裕だよねえ。」
「今晩泊まる宿舎の部屋で、試着させてよぉ。」
どうやら本気でコスプレしたいと思っているようだ。
リリスは呆れながらもマキの願いを聞いてあげる事にした。
広場に同行する数名の兵士と事務官が集結し、一行は転移の魔石でイシュタルト公国の神殿に移動した。
転移先のイシュタルト公国の神殿は、それなりに立派な神殿だった。外壁には上質な石材を多用し、精緻なレリーフが至る所に施されている。
内部も質素ではあるが上品な造りで、誰でも心が癒されるような雰囲気に仕上がっていた。
だがマキから聞いた話では祭司が不足していると言う。
更に祭司達の聖魔法の力量不足も課題なのだそうだ。
「マキ殿には公国の祭司達に聖魔法の指導をしてもらう予定です。これも両国の交流を深める良い機会ですからな。」
そう言ってマキに若干のプレッシャーを掛けているのは、事務官のネイビス卿である。この男はミラ王国の上級貴族であり、外交関係を担当する文官の一人だ。大柄で小太りで、如何にも上級貴族らしい雰囲気と立ち居振る舞いだが、意外にも人当たりの良い人物である。
出迎えたイシュタルト公国の祭司達と挨拶を交わし、リリスとマキはゲストルームに案内された。
このゲストルームはリビングとベッドルームの二部屋に分かれていて、どちらも上品な内装を施されている。
気持ちがゆったりとするような心地良い内装だ。
この日は特別にスケジュールは組まれていない。
夕食までゆっくりしていてくれと言う事なのだろう。
「私は早速仕事に取り掛かるのでこれにて失礼。」
そう言ってネイビス卿は同行の兵士達とイシュタルト公国の宮殿に向かった。
一方リリスとマキは広いゲストルームのリビングの片隅にあるソファに座り、部屋の中の至る所に置かれた高級そうな調度品を眺めながら、お互いの近況報告をし始めた。
マキの近況はそれほどに変わった事は無かったと言う。
だがリリスはマキと共有すべき話がある。アリサと風の神殿の件だ。
リースの地下神殿のダンジョンでウィンディから聞いた話を、リリスは事細かにマキに話し始めた。
マキはその話を聞きながら度々驚きの声をあげた。
「ヒョードーってもしかして兵藤って事ですか?」
ゲストルームにはリリスとマキしかいないので、言葉遣いが先輩後輩の関係に戻ってしまった。
お互いにタメ語で良いのにとリリスは思ったのだが。
「多分・・・そうね。」
「・・・兵藤アリサ。私、その名前のコスプレーヤーが居たのを覚えていますよ。ゴスロリを好んで着ていた人ですよね。」
マキは遠い記憶を呼び出すような仕草をした。
「コスプレ会場で行方不明になって、騒ぎになった事があったんですよ。私その時のイベントに参加していたので・・・」
マキちゃんって色々なところに顔を出していたのね。
「でもそれって私と紗季さんが召喚される半年ほど前の事ですよ。それなのに召喚された時代が500年も違っていたなんて・・・・・」
そう言いながらマキは黙り込んでしまった。
その暗鬱な表情を見ながらリリスはふと呟いた。
「召喚ってそう言うものなのよ。いつの時代に召喚されるか、こちら側には分からないからね。」
「それって理不尽ですよね。」
「うん。理不尽なものなのよ。」
リリスの言葉にマキはう~んと唸って再び黙り込んだ。
自分達が異世界に召喚された経緯が頭の中を錯綜する。
それもまた理不尽と言えば理不尽な体験だった。
少し間を置いてマキは思い出したように口を開いた。
「そう言えば明日の午前中に、風の神殿に案内してくれるそうです。風の神殿もこの国では大事にしているそうなので。霊廟があって代々の祭司も祀られているそうですよ。アリサさんもそこに祀られているかも。」
そうなのね。
マキから話を聞きながらリリスはふと疑問を持った。
そう言えばアリサさんって幸せな余生を送ったのかしら?
それに関してはウィンディから何も聞いていなかったからだ。
その日はゲストルームに運ばれてきた食事を堪能し、二人はそれぞれのベッドで眠りに就いた。
眠りに就く前にマキがリリスの学生服を拝借して、コスプレを堪能した事は言うまでもない。
翌日の朝。
リリスとマキは神殿での朝の祭祀に同席した後、若い女性の祭司の案内で風の神殿を訪れた。
この女性はルルと言う名の小柄で利発そうな祭司で、20歳になったばかりだと言う。
神殿を出て歩く事、約10分。
一行は風の神殿に辿り着いた。
それは元居た神殿よりも大きく、頑丈に造られていた。
がっしりとして重厚な造りで、外壁にレリーフなどの装飾は無い。
質素な造りだがその存在感が迫ってくる。
それだけこの国の民や為政者達が大切にしてきたのだろう。
風の神殿のエントランスで一行を出迎えてくれたのは、グルブと言う名の初老の男性の神官だった。
この神官は風属性の高位魔法の術者でもあるそうだ。
互いに挨拶を交わすと、グルブは通路を歩きながら、風の神殿を公国が大切にしてきた経緯を説明してくれた。
それはあらかじめウィンディから聞いていた内容と大半が重複していた。
だがそうは言っても聞き流すのは失礼だ。
適当に相槌を打ちながら、リリス達は通路の奥のホールに入った。
広いホールの中央には風の女神の巨大な彫像が立っている。
高さは5m以上もあるだろうか。
その顔は優し気な表情で、勿論ウィンディの顔ではない。
アリサの顔つきを模しているのだろう。
そう考えると現代的な女性の顔立ちに見えなくも無い。
「歴代の神官を祀る霊廟がホールの奥にあります。そちらにご案内しましょう。」
グルブの案内でホールの奥に進むと、そこには装飾を施した重厚な門があり、それが霊廟の入り口だと言う。
アリサさんの墓所もあるのかしら?
そう思ってリリスはその門を通り、霊廟の中に入った。
厳かな雰囲気の霊廟だが、決して薄暗くは無い。
明るく清潔な気配が満ちている。
その広い空間に整然と小さな霊廟が並んで配置されているので、まるで集団墓地のような造りだ。
「先ずは風の神殿の中興の祖と呼ばれるアリサ様の霊廟にご案内しましょう。」
そう言ってグルブが案内したのはやはり小さな霊廟だった。
その霊廟の前に色々な供物が並べられ、生花も飾られている。
だがその霊廟に近付いた途端にリリスは不思議な違和感を覚えた。
それは傍に居たマキも同じである。
グルブの動きが次第にゆっくりになり、ついに動かなくなってしまった。
それと共に周囲が紫一色に変わっていく。
これって何なの?
何かが襲撃してくるの?
驚きのあまり言葉も無く呆然としているマキと顔を合わせながら、リリスは不安に満ちて身構えたのだった。
リリスは自室でベッドの中に居た。
ユリアによって強制的に転移され、更にウィンディの出現により話がこじれてしまったが、その後ユリアは無事にリリスとイライザを学生寮に戻してくれた。
イライザは学生達の父母が宿泊するためのゲストルームに泊まり、明日にも帰国する予定である。
早々と寝息を立てているサラの様子を気にしながらも、リリスはウィンディとのやり取りを思い出していた。
アリサの存在がどうしても気になる。
恐らく日本からの転移者だったのだろう。
どうせなら同じ時代に巡り合いたかった。
そう思っていると、突然解析スキルが発動された。
『風属性の魔法が具現化しました。ステータスに反映されます。』
そう言えばそんな事もあったわね。
リリスは改めて自分のステータスを開いてみた。
**************
リリス・ベル・クレメンス
種族:人族 レベル24
年齢:14
体力:1500
魔力:4300
属性:土・火・風
魔法:ファイヤーボール レベル5+++
ファイヤーボルト レベル7+++
アースウォール レベル7
加圧 レベル5+
アースランス レベル3
硬化 レベル3
エアカッター レベル3
エアバースト レベル3
(秘匿領域)
属性:水・聖・闇(制限付き)
魔法:ウォータースプラッシュ レベル1
ウォーターカッター レベル1
ヒール レベル1+ (親和性による補正有り)
液状化 レベル15 (制限付き)
黒炎 レベル2 (制限付き)
黒炎錬成 レベル2 (制限付き)
スキル:鑑定 レベル3
投擲 レベル3
魔力吸引(P・A) レベル3
魔力誘導 レベル3 (獣性要素による高度補正有り)
探知 レベル4++ (獣性要素による高度補正有り)
毒生成 レベル4+ (獣性要素による高度補正有り)
解毒 レベル4+ (獣性要素による高度補正有り)
毒耐性 レベル4+ (獣性要素による高度補正有り)
火力増幅(加護と連携可能)
火力凝縮(加護と連携可能)
亜空間シールド(P・A)(加護と連携可能)
減圧(重力操作)レベル5+
調合 レベル2
魔装(P・A) (妖精化)
魔金属錬成 レベル1++(高度補正有り)
属性付与 レベル1++(高度補正有り)
スキル特性付与 レベル1++(高度補正有り)
呪詛構築 (データ制限有り)
瞬間移動(発動に制限有り)
覇竜の遺志を継ぐ者
解析
最適化
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風属性がステータスの可視領域に入っているわよ。
『それは最初からそう言う仕様なのです。秘匿領域を嫌っていると言った方が良いかも知れません。』
嫌っているって誰が?
『この属性を提供してくれた方です。』
ああ、ウィンディの事ね。
目立ちたいって言う事なのかしら?
『風属性はいずれ火属性と連携する高位魔法を取得した際に役立ちますので、この領域にあった方が自然ですね。』
そうなのかなあ。
でもこれで6属性が揃っちゃったわね。
高位魔法の取得も容易になるって本当なの?
『それはあくまでも伝承です。』
ええっ?
そんな風に聞いたわよ。
『6属性を揃えた人族は過去に記録がありませんので。』
『もっとも、既に人族から離脱しつつあるようなので、過去の記録には当てはまらないかも知れませんが・・・』
そんな事言わないでよ。
まるで魔物になりつつあるようじゃないの。
『語弊がありましたね。離脱ではなく超越です。』
それって言葉の綾ってやつよね。
あまり変わらない気がするんだけど、まあ良いわ。
ご苦労様でした。
リリスは解析スキルの労をねぎらいながら、その発動を解除した。
明日の昼休みにエアカッターを試してみよう。
そう思いながらリリスは眠りに陥っていく。
だが、再びその眠りが妨げられた。
突然真っ白な部屋に呼び出されてしまったのだ。
夢なのか現実なのかは定かではない。
亜空間と言えばそうなのかも知れないが、時折呼び出されるパターンだ。
起こさないでよぉ~。
眠い目を擦りながらリリスは白い空間の中央にある椅子に座った。
真っ白なテーブル越しに座っているのは、白い衣装に身を包んだロスティアである。
座長と言う呼び名の方が似合っているのかも知れないが、今回は単独で登場したようだ。
「起こしてしまって悪かったね。」
「だが儂としてもお前に伝えておきたい事があるのでな。」
ロスティアはそう言うとリリスの頭をじっと眺めた。
「ウィンディに風属性を植え付けられたようだね。アイツのやる事はいつも先走っているからなあ。」
「植え付けられたって・・・ロスティア様の願った事ではなかったの? ウィンディの言葉から私はそう理解していたんだけど・・・」
リリスの言葉にロスティアは、あご髭を撫でながらうんうんと頷いた。
「リリスが6属性を揃えたら、儂の実体化も進むと考えたのだろう。儂としてはそれほど急ぐつもりは無かったのだがな。」
ロスティアの言葉にリリスは違和感を持った。
ロスティアがウィンディに頼んだのではなかったのか?
リリスの疑問を察してロスティアは口を開いた。
「風の亜神は煽るのが習性なのだよ。奴が煽るのは火の亜神だけではない。」
「全てのものを加速させる。それが風の亜神の役割だ。奴はあらゆる事象のブースターなのだよ。」
そう言う事なのね。
ロスティア様もその実体化を煽られたって事なのね。
「でも6属性を揃えても本当に高位魔法が取得しやすくなるの?」
「まあ、それは事実だ。そのお陰でお前も光魔法を手に入れ易くなる。そのうちそう言う環境が整えば、取得する事もあるだろう。」
う~ん。
今直ぐにどうなるって話でもなさそうね。
「それとは別に、6属性を揃えた事で、今まで予想もしなかった様な状況に遭遇する事もあるだろう。まあ、それに対する対応はリリスなら万全だとは思うが・・・・・」
「そんなに脅かさないで下さいよ!」
リリスの叫びにロスティアは失笑した。
「まあ、それほどに心配する事は無い。いつも通りのお前で居れば良いと思うぞ。」
それって励ましになっていない!
そう叫ぼうとしたリリスの口を遮るように、ロスティアは手を振って消えていった。
一方的に話して消えていくなんて・・・。
それで私に何を伝えたかったの?
自分がウィンディに依頼したわけじゃないって弁解したかったのかしら?
不満が募るリリスだが、その不満を上回るように眠気が襲ってきた。
リリスはそのまま深い眠りに陥ってしまった。
翌日の昼休み。
リリスはウィンディから付与された風属性の魔法を試してみる為に、学舎を出てケイト先生から管理を任されている薬草園に向かった。
だが薬草園に着いた途端に、カバンの中からブーンと言う振動音が伝わって来た。
カバンの中で点滅を繰り返しているのは、以前マキに手渡していた緊急連絡用の魔道具である。
あれっ?
マキちゃんからだ。
どうしたんだろう?
リリスはそのまま薬草園の片隅の小屋で椅子に座り、魔道具が示す座標に使い魔のピクシーを召喚させた。
その使い魔と五感を共有すると、目の前に白い祭司の衣装を着たマキが清楚な笑顔で立っていた。
周囲は石造りの壁で覆われていて、周囲には他の祭司の姿も見える。
どうやらここは王都の神殿のゲストルームのようだ。
「急に呼び出してごめんね、リリスちゃん。この時間ならお昼休みかと思って・・・」
「うん。お昼ご飯を食べ終わったところよ。それでどうしたの?」
マキの表情を見る限り、それほど緊急を要する状況ではなさそうだ。
ちょっとした用件で呼び出したのかも知れない。
それならそれでも良いんだけど・・・。
そう思ったリリスだが、マキは少し口ごもって直ぐに話そうとしない。
若干遠慮しているような様子だ。
「実は・・・他国の神殿に1週間ほど出張する事になったの。それで少し心細いのでリリスちゃんに付いて来て貰おうと思って・・・」
随分急な話だ。
「1週間なんて無理よ。私も授業があるからね。休日に同行するとしても2日が限度よ。」
「うんうん。それは分かっているわ。」
マキはそう言いながらうふふと意味深な笑顔を見せた。
「でもリリスちゃんが特別休暇を申請出来る行先だから大丈夫よ。」
えっ?
意味が分からないわ。
「それで行先って何処なの?」
「イシュタルト公国よ。リリスちゃんも行った事があるんでしょ?」
イシュタルト公国!
先日行ったばかりじゃないの。
「魔法学院の生徒会同士で行き来しているって聞いたわよ。」
「それって誰から聞いたのよ?」
「神殿の管理者からよ。小さな国だから情報は直ぐに共有されるんだって。」
マキはそう言うとえへへと笑った。
「実はもうすでに、向こうの魔法学院からこちらの魔法学院に、リリスちゃんの招請を申請したって言ってたわ。勿論形式だけだけどね。」
「それで明後日の午後には出発したいの。良いかしら?」
随分段取りが良いわねえ。
だがそう思ったものの、リリスも気になる事がある。
ウィンディに聞いたアリサと風の神殿の件だ。
事情を聴き、特に断る理由も無いので、リリスはマキからの依頼を快諾した。
そして迎えた2日後の昼。
出迎えに来た馬車に乗り、リリスは王都の神殿に向かった。
一応生徒会同士の交流と言う設定なので、リリスは学生服のままである。
王都の神殿前の広場でリリスを出迎えたマキは、リリスの着ている学生服の裾に触れながら羨ましそうな表情を見せた。
「私も学生服を着てみようかしら。」
「マキちゃん。それって単なるコスプレになっちゃうわよ。」
リリスの言葉にマキは更ににじり寄って来た。
「リリスちゃんは現役のJKだから余裕だよねえ。」
「今晩泊まる宿舎の部屋で、試着させてよぉ。」
どうやら本気でコスプレしたいと思っているようだ。
リリスは呆れながらもマキの願いを聞いてあげる事にした。
広場に同行する数名の兵士と事務官が集結し、一行は転移の魔石でイシュタルト公国の神殿に移動した。
転移先のイシュタルト公国の神殿は、それなりに立派な神殿だった。外壁には上質な石材を多用し、精緻なレリーフが至る所に施されている。
内部も質素ではあるが上品な造りで、誰でも心が癒されるような雰囲気に仕上がっていた。
だがマキから聞いた話では祭司が不足していると言う。
更に祭司達の聖魔法の力量不足も課題なのだそうだ。
「マキ殿には公国の祭司達に聖魔法の指導をしてもらう予定です。これも両国の交流を深める良い機会ですからな。」
そう言ってマキに若干のプレッシャーを掛けているのは、事務官のネイビス卿である。この男はミラ王国の上級貴族であり、外交関係を担当する文官の一人だ。大柄で小太りで、如何にも上級貴族らしい雰囲気と立ち居振る舞いだが、意外にも人当たりの良い人物である。
出迎えたイシュタルト公国の祭司達と挨拶を交わし、リリスとマキはゲストルームに案内された。
このゲストルームはリビングとベッドルームの二部屋に分かれていて、どちらも上品な内装を施されている。
気持ちがゆったりとするような心地良い内装だ。
この日は特別にスケジュールは組まれていない。
夕食までゆっくりしていてくれと言う事なのだろう。
「私は早速仕事に取り掛かるのでこれにて失礼。」
そう言ってネイビス卿は同行の兵士達とイシュタルト公国の宮殿に向かった。
一方リリスとマキは広いゲストルームのリビングの片隅にあるソファに座り、部屋の中の至る所に置かれた高級そうな調度品を眺めながら、お互いの近況報告をし始めた。
マキの近況はそれほどに変わった事は無かったと言う。
だがリリスはマキと共有すべき話がある。アリサと風の神殿の件だ。
リースの地下神殿のダンジョンでウィンディから聞いた話を、リリスは事細かにマキに話し始めた。
マキはその話を聞きながら度々驚きの声をあげた。
「ヒョードーってもしかして兵藤って事ですか?」
ゲストルームにはリリスとマキしかいないので、言葉遣いが先輩後輩の関係に戻ってしまった。
お互いにタメ語で良いのにとリリスは思ったのだが。
「多分・・・そうね。」
「・・・兵藤アリサ。私、その名前のコスプレーヤーが居たのを覚えていますよ。ゴスロリを好んで着ていた人ですよね。」
マキは遠い記憶を呼び出すような仕草をした。
「コスプレ会場で行方不明になって、騒ぎになった事があったんですよ。私その時のイベントに参加していたので・・・」
マキちゃんって色々なところに顔を出していたのね。
「でもそれって私と紗季さんが召喚される半年ほど前の事ですよ。それなのに召喚された時代が500年も違っていたなんて・・・・・」
そう言いながらマキは黙り込んでしまった。
その暗鬱な表情を見ながらリリスはふと呟いた。
「召喚ってそう言うものなのよ。いつの時代に召喚されるか、こちら側には分からないからね。」
「それって理不尽ですよね。」
「うん。理不尽なものなのよ。」
リリスの言葉にマキはう~んと唸って再び黙り込んだ。
自分達が異世界に召喚された経緯が頭の中を錯綜する。
それもまた理不尽と言えば理不尽な体験だった。
少し間を置いてマキは思い出したように口を開いた。
「そう言えば明日の午前中に、風の神殿に案内してくれるそうです。風の神殿もこの国では大事にしているそうなので。霊廟があって代々の祭司も祀られているそうですよ。アリサさんもそこに祀られているかも。」
そうなのね。
マキから話を聞きながらリリスはふと疑問を持った。
そう言えばアリサさんって幸せな余生を送ったのかしら?
それに関してはウィンディから何も聞いていなかったからだ。
その日はゲストルームに運ばれてきた食事を堪能し、二人はそれぞれのベッドで眠りに就いた。
眠りに就く前にマキがリリスの学生服を拝借して、コスプレを堪能した事は言うまでもない。
翌日の朝。
リリスとマキは神殿での朝の祭祀に同席した後、若い女性の祭司の案内で風の神殿を訪れた。
この女性はルルと言う名の小柄で利発そうな祭司で、20歳になったばかりだと言う。
神殿を出て歩く事、約10分。
一行は風の神殿に辿り着いた。
それは元居た神殿よりも大きく、頑丈に造られていた。
がっしりとして重厚な造りで、外壁にレリーフなどの装飾は無い。
質素な造りだがその存在感が迫ってくる。
それだけこの国の民や為政者達が大切にしてきたのだろう。
風の神殿のエントランスで一行を出迎えてくれたのは、グルブと言う名の初老の男性の神官だった。
この神官は風属性の高位魔法の術者でもあるそうだ。
互いに挨拶を交わすと、グルブは通路を歩きながら、風の神殿を公国が大切にしてきた経緯を説明してくれた。
それはあらかじめウィンディから聞いていた内容と大半が重複していた。
だがそうは言っても聞き流すのは失礼だ。
適当に相槌を打ちながら、リリス達は通路の奥のホールに入った。
広いホールの中央には風の女神の巨大な彫像が立っている。
高さは5m以上もあるだろうか。
その顔は優し気な表情で、勿論ウィンディの顔ではない。
アリサの顔つきを模しているのだろう。
そう考えると現代的な女性の顔立ちに見えなくも無い。
「歴代の神官を祀る霊廟がホールの奥にあります。そちらにご案内しましょう。」
グルブの案内でホールの奥に進むと、そこには装飾を施した重厚な門があり、それが霊廟の入り口だと言う。
アリサさんの墓所もあるのかしら?
そう思ってリリスはその門を通り、霊廟の中に入った。
厳かな雰囲気の霊廟だが、決して薄暗くは無い。
明るく清潔な気配が満ちている。
その広い空間に整然と小さな霊廟が並んで配置されているので、まるで集団墓地のような造りだ。
「先ずは風の神殿の中興の祖と呼ばれるアリサ様の霊廟にご案内しましょう。」
そう言ってグルブが案内したのはやはり小さな霊廟だった。
その霊廟の前に色々な供物が並べられ、生花も飾られている。
だがその霊廟に近付いた途端にリリスは不思議な違和感を覚えた。
それは傍に居たマキも同じである。
グルブの動きが次第にゆっくりになり、ついに動かなくなってしまった。
それと共に周囲が紫一色に変わっていく。
これって何なの?
何かが襲撃してくるの?
驚きのあまり言葉も無く呆然としているマキと顔を合わせながら、リリスは不安に満ちて身構えたのだった。
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