8 / 108
第一章 穏やかな日常
キノコ仕分け
しおりを挟む
「マッド君、いらっしゃい」
アミルは柔らかく微笑むと、水で濡れた手を拭きながら玄関まで歩いて来た。
ほのかに香ばしい匂いがマッドのお腹を鳴らし、マッドは苦笑しながらお腹に手を当てる。
「よっ、アミルさん。何かすげえ良い匂いがするんだけど?」
「ふふ、今、ルグート牛の甘辛煮を作っているのよ。後はウマイダケを入れて煮込めば完成なの。仕分けをお願い出来るかしら?」
「ああ。直ぐに分けてやるよ」
マッドの言葉に、アミルは嬉しそうに微笑んだ。
ルチアに背中を押されながら家の中に入り、台所へと向かう。
入った途端、玄関先まで漂っていた匂いが更に強くなり、マッドのお腹は更に大きな音で鳴った。
「あははは! マッド兄ちゃんのお腹すげー鳴った!」
「うるせーな! まだ昼飯食べて無いんだから仕方無いだろ!」
「あら、まだお昼食べて無いの? 折角だし、食べて行かない?」
アミルが微笑みながら話すと、マッドは手をヒラヒラさせながら首を横に振った。
「いや、ティミーの所で食べるから良いよ。昼飯誘われてるんだ」
「あら、そうなの? 何時もキノコの仕分けしてもらってるからお礼にと思ったのだけど……」
「大丈夫だって。その分、家族で沢山食べれば良いだろ」
マッドの言葉に、アミルは残念そうな表情をした。
「まあ残念……。でも、食べたくなったらいつでも言ってね」
「ん、サンキュ。じゃあ、茸分けるから」
マッドは軽く微笑むと、テーブルの上に置かれた沢山の茸の山を見た。
傘の色がクリーム色で、赤色の斑が所々にある茸を、マッドは二つのお皿に分けていった。
この茸は「ウマイダケ」と呼ばれていて、赤色の斑が特徴の茸だが、斑の大きさが大きいものと小さいものの二種類ある。
しかしその大きさの違いは僅かであり、斑が小さいものは「ドクイリダケ」と呼ばれていて、食べると猛毒が体を巡ってしまい、大変危険な茸でもある。
見た目は殆ど同じであり、僅かな斑の違いと匂いで見分けるしか方法は無く、見分けるにはそれ相応の視力と嗅覚、知力が必要とされている為、茸が大好きなマッドは茸を採ってきた村人から度々茸の仕分けを頼まれていた。
この茸を仕分け出来るのはルグート村ではマッドしか居ない為、茸仕分け人と呼ばれる程だった。
数分経ち、テーブルの上にあった茸の山は、マッドによって二つのお皿に分けられていく。
マッドは小さく息を吐き、ウマイダケが乗ったお皿をアミルに差し出した。
「終わったぜ。今回はドクイリダケが大半あったな」
「ありがとうマッド君。それでも、ウマイダケがこれだけあれば充分よ。これで美味しいキノコライスが作れるわ」
アミルは微笑むと、小さな袋をマッドに差し出した。
それを見るなり、マッドは小さく首を横に振る。
「悪いなアミルさん。ニルは貰わないぜ?」
「駄目よ。今日こそ貰って頂戴。いつもこっちがお願いしているんだから」
「気持ちだけで良いっての。どうせ金なんて使わないし、困ってもいないからいらねぇよ」
ニルとはこの世界の通貨で、一定の金額によって通貨のデザインが異なり、アミルが握る袋の中に入っているものは銅で出来たものだった。
アミルは無理矢理マッドに袋を押し付けるも、マッドはヒラリとかわし玄関へと向かった。
「良いから取っとけって。じゃあ、またな」
「ちょっと、マッド君!」
「マッドお兄ちゃん、帰っちゃうの?」
腰に軽い衝撃を感じ、振り返るとルチアが不満げな表情を浮かべながらマッドの腰にしがみついていた。
隣にいたアクスも、不満げな表情を浮かべ、頬を膨らましている。そんな二人の表情にマッドは苦笑した。
「そんな顔すんなって、また遊んでやるから」
「むー、約束だからね」
「マッド君、ありがとうね。次こそお礼させて貰うわよ。またいつでもお家に来てね」
「おう、邪魔したな」
アミルは笑顔で玄関まで見送ると、マッドはアクスとルチアの頭を軽く撫で、足早に家を後にした。
アミルは柔らかく微笑むと、水で濡れた手を拭きながら玄関まで歩いて来た。
ほのかに香ばしい匂いがマッドのお腹を鳴らし、マッドは苦笑しながらお腹に手を当てる。
「よっ、アミルさん。何かすげえ良い匂いがするんだけど?」
「ふふ、今、ルグート牛の甘辛煮を作っているのよ。後はウマイダケを入れて煮込めば完成なの。仕分けをお願い出来るかしら?」
「ああ。直ぐに分けてやるよ」
マッドの言葉に、アミルは嬉しそうに微笑んだ。
ルチアに背中を押されながら家の中に入り、台所へと向かう。
入った途端、玄関先まで漂っていた匂いが更に強くなり、マッドのお腹は更に大きな音で鳴った。
「あははは! マッド兄ちゃんのお腹すげー鳴った!」
「うるせーな! まだ昼飯食べて無いんだから仕方無いだろ!」
「あら、まだお昼食べて無いの? 折角だし、食べて行かない?」
アミルが微笑みながら話すと、マッドは手をヒラヒラさせながら首を横に振った。
「いや、ティミーの所で食べるから良いよ。昼飯誘われてるんだ」
「あら、そうなの? 何時もキノコの仕分けしてもらってるからお礼にと思ったのだけど……」
「大丈夫だって。その分、家族で沢山食べれば良いだろ」
マッドの言葉に、アミルは残念そうな表情をした。
「まあ残念……。でも、食べたくなったらいつでも言ってね」
「ん、サンキュ。じゃあ、茸分けるから」
マッドは軽く微笑むと、テーブルの上に置かれた沢山の茸の山を見た。
傘の色がクリーム色で、赤色の斑が所々にある茸を、マッドは二つのお皿に分けていった。
この茸は「ウマイダケ」と呼ばれていて、赤色の斑が特徴の茸だが、斑の大きさが大きいものと小さいものの二種類ある。
しかしその大きさの違いは僅かであり、斑が小さいものは「ドクイリダケ」と呼ばれていて、食べると猛毒が体を巡ってしまい、大変危険な茸でもある。
見た目は殆ど同じであり、僅かな斑の違いと匂いで見分けるしか方法は無く、見分けるにはそれ相応の視力と嗅覚、知力が必要とされている為、茸が大好きなマッドは茸を採ってきた村人から度々茸の仕分けを頼まれていた。
この茸を仕分け出来るのはルグート村ではマッドしか居ない為、茸仕分け人と呼ばれる程だった。
数分経ち、テーブルの上にあった茸の山は、マッドによって二つのお皿に分けられていく。
マッドは小さく息を吐き、ウマイダケが乗ったお皿をアミルに差し出した。
「終わったぜ。今回はドクイリダケが大半あったな」
「ありがとうマッド君。それでも、ウマイダケがこれだけあれば充分よ。これで美味しいキノコライスが作れるわ」
アミルは微笑むと、小さな袋をマッドに差し出した。
それを見るなり、マッドは小さく首を横に振る。
「悪いなアミルさん。ニルは貰わないぜ?」
「駄目よ。今日こそ貰って頂戴。いつもこっちがお願いしているんだから」
「気持ちだけで良いっての。どうせ金なんて使わないし、困ってもいないからいらねぇよ」
ニルとはこの世界の通貨で、一定の金額によって通貨のデザインが異なり、アミルが握る袋の中に入っているものは銅で出来たものだった。
アミルは無理矢理マッドに袋を押し付けるも、マッドはヒラリとかわし玄関へと向かった。
「良いから取っとけって。じゃあ、またな」
「ちょっと、マッド君!」
「マッドお兄ちゃん、帰っちゃうの?」
腰に軽い衝撃を感じ、振り返るとルチアが不満げな表情を浮かべながらマッドの腰にしがみついていた。
隣にいたアクスも、不満げな表情を浮かべ、頬を膨らましている。そんな二人の表情にマッドは苦笑した。
「そんな顔すんなって、また遊んでやるから」
「むー、約束だからね」
「マッド君、ありがとうね。次こそお礼させて貰うわよ。またいつでもお家に来てね」
「おう、邪魔したな」
アミルは笑顔で玄関まで見送ると、マッドはアクスとルチアの頭を軽く撫で、足早に家を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる