ひだまりを求めて

空野セピ

文字の大きさ
23 / 108
第二章 旅立ちの決意

黒い影を追って

しおりを挟む
 フィルの言葉に、マッドとティミーは顔色を変える。

「魔物って、一体何匹入ったんだ」

「村の人達は? 急いで避難させないと」

「落ち着け! まだ、村に被害は出てない」

 焦りと不安を隠せないマッドとティミーに、フィルは落ち着くように促した。
しかし、その表情は硬く、顔色も悪い。

「被害は出ていないんだが、森の奥にいるような魔物じゃ無かった。いや、アレは魔物と言えるのか……」

「落ち着けフィル。お前が一番落ち着いてねぇだろ」

 マッドはフィルの両方を掴み、深呼吸する様に促す。
 マッドの言葉通りにフィルは深呼吸をすると、落ち着いたのかマッドとティミーを交互に見た。

「黒い影……黒い影が突然村の外から入り込んで来たんだ。でも誰かを傷付けているわけでも無い。念の為、牧場の奴等と協力して皆、家の中に入る様に言って周っているんだが……」

「それで人が疎らだったのか……」

「フィル、村長さん知らない? 家にいなかったんだけど」

 ティミーは不安そうにフィルを見上げる。
 しかし、フィルは首を横に振った。

「すまないが、俺は見ていない。だが、黒い影に気付いて自衛団と一緒に黒い影の所に行っているのかもしれない」

「その黒い影ってのは、どこにいるんだ?」

 マッドの言葉に、フィルは北の方角を指す。

「デカイ風車小屋があるほうに向かった。だが、今もそこにいるかどうか」

「俺、行ってみる。村長も異変に気付いて黒い影の所に行ってるのかもしれねぇ」

「わ、私も行く!」

 ティミーはマッドの袖を掴んだ。村長夫妻を心配しているのだろう。
 マッドはフィルに木の実を預け、ティミーの方へと振り返る。

「何があるか分からねぇ。危ないと感じたら直ぐ逃げろよ」

「うん! フィルはそのまま他の皆に家へ入るように促して!」

 マッドとティミーは、黒い影の所に行く気満々だ。
 そんな二人に、フィルは小さく笑い、フッと息を吐く。

「頼もしいな。こっちは任せろ。それはそうとマッド」

「何だよ」
 フィルは真剣な眼差しでマッドを見た。

「お前のほうこそ、無理はするなよ」

「解ってる。行くぞティミー!」

「うん!」

 マッドとティミーは、北の方へと走って行った。
 姿が見えなくなり、フィルは更に不安な表情となる。

「……マッドは、命懸けでティミーを護ろうとするだろうからな。たとえ、結界が張れなくても」

 フィルの呟いた言葉は、誰にも聞こえる事は無かった。



 北の方角を目指し、マッドとティミーは走って行った。
 村人達は、フィルが呼び掛けてくれたお陰か、殆どの人が家の中に入っている様子だ。
 今の所村が荒らされた形跡は無く、マッドは少しホッとしている。

「この辺は大丈夫みたいだな」

「黒い影って、何なんだろう。そんな魔物、見た事無いよね」

 走りながらマッドとティミーは当たりの様子を伺うも、特に変わった様子は無いが、黒い影を見つける事は出来なかった。

 程なくして、風車小屋へと辿り着いた。

「はぁ、だいぶ北の方に来たが」

「何も、いないよね……」

 足を止め辺りを見回すも、村人達は家の中へ避難している為誰もいない。
 不気味な程の静寂さに包まれ、マッドとティミーは小さく息を飲む。


 ――すると、突如。

 バンッ!!

「なっ、何だ!?」

「見てっ、風車小屋がっ!」

 突如、大きな音を立て風車小屋から煙が上がる。
 慌ててマッドとティミーは風車小屋へ駆け寄ると、そこには村長夫妻が、血を流して倒れていた。

「レミーおばさん! 村長さん!」

 ティミーは顔色を変えて、村長夫妻へと駆け寄り、二人の近くに座り込んだ。
 傷の様子を見ると、レミーは左腕から血を流していて、村長は頭と胸から血を流していた。
 ティミーは慌てて村長夫妻の傷口にハンカチとガーゼを強く当てるも、直ぐに血を吸い上げ赤く染まってしまう。

「くっ……ティミー、逃げなさい」

「レミーおばさん! 喋っちゃ駄目!」

「私は大丈夫だから……それより、ロダンを」

レミーは苦しそうに声を上げ、ティミーは更に焦りを隠せなくなっていた。

「マッド、どうしよう! このままだと二人共っ……」

「ティミー落ち着け! レミーおばさんは大丈夫だ。そこまで血も出てねぇ。村長の止血を優先した方が良い。頭からの出血が一番やべぇぞ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

処理中です...