ひだまりを求めて

空野セピ

文字の大きさ
27 / 108
第二章 旅立ちの決意

自責するティミー

しおりを挟む
「マッド! 無事じゃったか!」

「良かった……! 怪我は無い? 大丈夫?」

「大丈夫だ。フィルが治してくれた」

 服に血は滲んでいたが、フィルの治癒陽術のお陰でだいぶ楽になったマッドは小さく笑った。
 そして、直ぐにベッドの縁に座っているティミーに視線を送る。
 ティミーは身体を丸くし、ガタガタと震えていた。
 その様子に、マッドは近付きティミーと目線を合わせ、ティミーの顔を覗き込む。

「ティミー、大丈夫か? 怪我は……フィルに治してもらったんだな」

 マッドが優しく話しかけると、ティミーは何かが切れたようにポロポロと涙を流し始めた。

「おっ、おい、ティミー!?」

「マッド……ごめん……ごめんね……私のせいで、大怪我、しちゃって……」

「た、大した事ねぇよ。それに、フィルが治してくれたし」

 震えるティミーの肩に触れ、マッドは安心させようと微笑む。
 しかし、ティミーの瞳からは次々と涙が溢れ出していた。

「あの男が、水を呼び寄せたんでしょう……? あの男が、マッドを傷付けたんでしょう……?」

「……そうだな。アイツ、自分の事をレンと名乗ってた。アイツが消えてから直ぐに、水が押し寄せたんだ。それに、アイツ……」

 次の言葉を言おうとして、マッドは口を閉じた。
 その様子に、フィルは不思議そうな表情をする。

「何が有ったんだ?」

「……いや」

 言葉を詰まらせるマッドに、ティミーは小さく口を開いた。

「私の、せいなの……かな……あのレン、って人、何かを奪おうとしてた……でも、私、身に覚えが無くて……」

「ティミー、それは……」

 違う。と言えなかった。
 レンは言っていた。ティミーを殺してでも、必ず〈あるモノ〉を奪うと。

(このままじゃ、あのレンとかいう男は、またこの村を襲ってくる可能性がある。それに、ティミーだって……)

 マッドは無意識にティミーを抱き寄せた。
 その腕に力が入り、ティミーは思わずマッドの顔を見上げる。

「マッド……私、やっぱり狙われてるんだね」

「ティミー……」

 その言葉はとても小さく、震えていた。
 事情を飲み込めていない村長夫妻とフィルは戸惑いを隠せず、そのままマッドとティミーを見ている。
 マッドは小さく息を吐き、三人に視線を向けた。

「悪りぃ三人共。ちょっとティミーと二人きりにさせてくれないか」

 マッドの言葉に、フィルは小さく頷く。

「分かった。村長様。レミー様も、一度部屋から出ましょう」

「……そうじゃな。ワシらはフィルの治癒陽術で歩けるまで回復したから村の様子を見てくる。夕方前には戻るようにするよ」

「悪りぃな、フィル」

 フィルは村長夫妻を部屋から出し、自分も部屋を出ようとした時に、マッドとティミーの方を振り返った。

「マッド、ティミー。俺はお前達の決断を全て受け入れるからな。俺は何があってもお前達の味方だ。それだけは忘れるなよ」

 そう言い残し、フィルは扉を静かに閉めた。

 部屋にはマッドとティミーの二人だけになり、静けさが再び辺りを支配する。

(フィルの奴、察しがいいな)

 小さく笑うと、マッドは優しくティミーの背中を摩り、口を開いた。

「ティミー。お前まさか、自分のせいで村がこうなったとか考えてるんじゃねぇだろうな?」

 マッドの言葉に、ティミーは小さく頷き、肩を震わせた。

「そうだよ……私のせいだよ。だって、レンって人、私の何かを奪いに来たって言ってたじゃない! 私のせいで、マッドも大怪我しちゃったし、村長さん達だって……村だってこんなぐちゃぐちゃになっちゃったんだよっ!」

 ティミーは溜め込んでいた事を一気に爆発させた。
 震える声で、声を出して泣き上げる。
 マッドはそんなティミーを優しく抱きしめ、ずっと背中を摩り続けた。

「みんな、私のせいで傷付けた……! 私、何も分からないのにっ……でも、レンは確実に私を狙っていた! 私が全部悪いんだよっ……」

「……違うだろ。だって、ティミーは何もしてないじゃないか」

「でもっ……もしかしたらまたレンは私を襲って来るかもしれない! そしたら、またマッド達を傷付けるかもしれないし、今度こそ村だって壊滅しちゃうかもしれないっ……」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

処理中です...