ひだまりを求めて

空野セピ

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第五章 港町での休息

ルグート村での出来事

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 階段を降りて1階の喫茶店へ向かうと、昼時の為かそれなりの客で賑わっていた。
 しかし、空席はいくつか有る様で、ウォックは店員に声をかける。

「すみません。4人なのですが」

「はい、かしこまりました。あちらの窓際の席へどうぞ」

 店員に案内され、マッド達は窓際の席へ移動する。
 日差しが差し込み、軽く日向になっていてマッドは目を細めた。

「お、いい席じゃん。どれどれ、メニューはっと」

「わぁ、美味しそう。何にしようかな」

 マッドとティミーはメニューを広げ、何を食べるか選び始めた。
 その横で、ヴェノルはお店の壁紙を指差し、ウォックの袖を引っ張りブンブンと振り始める。

「ねぇウォック! あれ食べたい! 特大オムライス!」

「お前、ふざけるな高いだろ!」

「やーだー! あれが良い! あれじゃなきゃお腹いっぱいにならないよ!」

「だからお前は食い過ぎなんだよ!」

 先程あれだけ怒られたヴェノルは、懲りていないのか再度ウォックに駄々を捏ねる。

「ま、まぁまぁ。ヴェノル、後でパンケーキ沢山焼いてあげるからそれで我慢して? お金無くなっちゃうと夜ご飯食べられなくなっちゃうよ?」

 困っているウォックを見兼ねたのか、ティミーはヴェノルにおやつの提案をする。
 ヴェノルは少し考えた後に、首を大きく縦に振った。

「うん! それだったら良いよ! 仕方ないからこの中からご飯選ぶよ」

「はぁ......。ティミー、すまない」

「う、うん。私は大丈夫だけど」

 きっとウォックの方が大丈夫ではない。
 度重なるヴェノルの駄々捏ねに、疲れている様子が伺えた。

「よし、みんな食いたい物決まったか?」

「うん! 私は大丈夫。マッドは?」

「俺も決まったぜ」

「じゃあ呼ぶか」

 ウォックは近くにいた店員を呼び、各自食べたい物を注文していく。
 一通り注文が終わり店員が去っていくと、ウォックは気持ちを切り替え、マッドとティミーに視線を向けた。

「さて、飯が来る前に少し話をまとめておきたい」

「分かってるって。俺達の村で何があったか詳しく聞きたいんだろ?」

「あぁ。出来るだけ詳しく聞かせてくれ」

 ウォックの言葉に、マッドとティミーは顔を合わせ小さく頷く。
 当時の事を思い出しながら、マッドは口を開いた。

「まず、昨日お前の家で話した通り、俺とティミーの故郷であるルグート村に、突然レンって言う男が襲いかかって来たんだ。本当に、突然だったんだぜ」

「その時に、何か変わった事は無かったか? 何でも良い。例えば、何かの前兆とか」

「その、レンが襲ってくる前に私とマッドは村の外の森にいたんだけど、その帰り道で川がいつもより増水していて、流れが早かった......位かな。後、牧場の動物達が少し静かだったかも」

 レンに襲われた日の行動を、朝から思い出しながらマッドとティミーは話す。
 あの日は途中でティミーと合流して、村に帰った筈だ。

「それで、村に戻ったらレンって奴に襲われた感じか?」

「あぁ。村に戻ったら村の中が異様に静かでよ。フィルが......友人が最初、黒い影を見たって話して、魔物と勘違いして村人達を家の中に避難させてたみたいだが」

「それで、村長さん達がいないから探しに行ったら、急にレンに襲われたの。マッドと戦って、それで......」

 そこまで言って、ティミー言葉を詰まらせた。
 その表情は強張っていて、思わず俯いてしまう。

(......私の、何かを狙っている。でも、一体何......?)

「ティミー?」

 ティミーの様子の変化に気付き、ウォックは声を掛ける。
 ティミーは顔を上げようとせず、小さく震え出した。

「ご、ごめんなさい......その、私」

「ティミー、無理するな」

 震えるティミーの肩に、マッドは優しく左手を置いた。
 少しでも不安が拭えるならと、そのまま優しく肩を摩る。

「ごめん、ありがとうマッド」

 ティミーは顔を上げ、笑みをマッドに見せる。
 しかし、それが無理に作っている笑顔だとマッドとウォックは直ぐに察した。
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