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第五章 港町での休息
楽観と不安
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ヴェノルは記憶を無くした時の事を気にしている様子は無く、寧ろこの状況を楽しんでいる様にも見えた。
記憶を失ったからこそ好奇心旺盛になった、と言うのも有るのかもしれない。
「なら、どうしてヴェノルはマッドとティミーに付いて来たんだ?」
ウォックは疑問に思っていた事をヴェノルに尋ねる。
するとヴェノルは、どこか曖昧そうな表情をしながら口を開いた。
「ん~とね、そのレンが森で襲って来てね、俺、レンと戦ってその時に言われたんだ。『何れ分かる。過去の事も。遅かれ早かれ』って。だから、レンを追えば何かを思い出すかもしれないと思って。だから2人に付いて来たんだよ」
「レンに言われた、か」
その言葉に、ウォックは何かが引っかかる感じがした。
何れ分かる。それは恐らく。
「もしかしたら、レンはヴェノルの過去を知っているのかもしれないな」
「えっ!?」
ウォックの言葉に、マッドとティミーは思わず立ち上がり身を乗り出す。
少し驚いたウォックは、2人に座るようにと促しつつ落ち着かせた。
「あくまでも推測に過ぎない。だが、過去を知っている、もしくは何かしら関わっていないとそんな事言わないだろ? だが、ヴェノルはレンの事全く覚えていなさそうだけどな」
そう言いつつヴェノルを見るも、ヴェノルはキョトンとしている。
自分の事なのに、あまり興味が無さそうだ。
その様子に、ウォックは思わず溜息を吐く。
「お前、本当に記憶を取り戻したいのか?」
「ん~? 確かに過去は気になるけど、俺は今が楽しければそれで良いと思ってるから。でも......」
ヴェノルは言葉を詰まらせ、コップに入った水を見詰める。
「でも、レンを見てると何かモヤモヤするんだ。だから......その原因も知りたいとは思ってる。それが過去に関係しているなら、知りたいなと思って」
何処となく真剣な表情をしながら、ヴェノルは言葉を吐く。
その表情は、いつもの元気な表情では無く、何処か大人びていた。
ヴェノルの表情に、ウォックは微かに笑みを浮かべる。
「お前がその気持ちを持ち続ける限り、きっと記憶を取り戻せるさ。だがな、それがどんなに辛い過去でも受け止めなきゃならない」
「ん~。難しい事はよく分からないなぁ。でも大丈夫! きっと思い出せるよ!」
ヴェノルはニコニコと皆んなに笑顔を見せる。
その様子に、マッド達は小さく笑った。
「本当、お前って楽観的なのな」
「うん。でも......ヴェノルが羨ましいな。私ももっと、あれだけ自然に元気に振る舞えたら良かったのに......」
そう言ってティミーは、自分の口を慌てて塞ぐ。
その言葉に、マッドとウォックは目を合わせた。
「やっぱり、な。ティミー、少し無理してたんだろ」
「な、何? マッド」
「とぼけんな。村を出てから妙に明る過ぎるとは思っていたが、無理してたんだろ」
「そ、そんな事......」
マッドの言葉に、ティミーは思わず肩を強張せた。
そのまま俯き、表情を悟られないように身を竦める。
その様子を気にしつつ、ウォックはマッドに続き更に言葉を繋げた。
「俺も、少し様子が気になっていたんだ。狙われている身としては、少し気が抜けているというか、緊張感が無いと言うか......。悪い意味で言っている訳では無いぞ。普通だったらもっと焦っていたり不安そうにするだろうから」
ウォックに指摘されるも、ティミーは俯いたままだ。
やはりな、と感じつつ、ウォックとマッドはティミーの言葉を待つ。
暫く沈黙が続いた後、ティミーは不安そうに口を開いた。
「本当は、物凄く不安だよ。不安で押し潰されそうな位に。ルグート村にレンが襲って来たのだって、私のせいだもの......。だから、毎日考えちゃうんだ......本当は、私がルグート村にいなければ......村長さんやマッド達は怪我しなかったし、村だってあんな風には......」
「ティミー、そんな事は」
そんな事はない。
マッドがそう言おうとした瞬間、ティミーは涙を浮かべながら声を上げた。
「マッドは分かってない! だって、私は本来ルグート村の住人じゃないもの! 私がいなければ、現にルグート村にレンは襲って来なかった筈だもの!」
記憶を失ったからこそ好奇心旺盛になった、と言うのも有るのかもしれない。
「なら、どうしてヴェノルはマッドとティミーに付いて来たんだ?」
ウォックは疑問に思っていた事をヴェノルに尋ねる。
するとヴェノルは、どこか曖昧そうな表情をしながら口を開いた。
「ん~とね、そのレンが森で襲って来てね、俺、レンと戦ってその時に言われたんだ。『何れ分かる。過去の事も。遅かれ早かれ』って。だから、レンを追えば何かを思い出すかもしれないと思って。だから2人に付いて来たんだよ」
「レンに言われた、か」
その言葉に、ウォックは何かが引っかかる感じがした。
何れ分かる。それは恐らく。
「もしかしたら、レンはヴェノルの過去を知っているのかもしれないな」
「えっ!?」
ウォックの言葉に、マッドとティミーは思わず立ち上がり身を乗り出す。
少し驚いたウォックは、2人に座るようにと促しつつ落ち着かせた。
「あくまでも推測に過ぎない。だが、過去を知っている、もしくは何かしら関わっていないとそんな事言わないだろ? だが、ヴェノルはレンの事全く覚えていなさそうだけどな」
そう言いつつヴェノルを見るも、ヴェノルはキョトンとしている。
自分の事なのに、あまり興味が無さそうだ。
その様子に、ウォックは思わず溜息を吐く。
「お前、本当に記憶を取り戻したいのか?」
「ん~? 確かに過去は気になるけど、俺は今が楽しければそれで良いと思ってるから。でも......」
ヴェノルは言葉を詰まらせ、コップに入った水を見詰める。
「でも、レンを見てると何かモヤモヤするんだ。だから......その原因も知りたいとは思ってる。それが過去に関係しているなら、知りたいなと思って」
何処となく真剣な表情をしながら、ヴェノルは言葉を吐く。
その表情は、いつもの元気な表情では無く、何処か大人びていた。
ヴェノルの表情に、ウォックは微かに笑みを浮かべる。
「お前がその気持ちを持ち続ける限り、きっと記憶を取り戻せるさ。だがな、それがどんなに辛い過去でも受け止めなきゃならない」
「ん~。難しい事はよく分からないなぁ。でも大丈夫! きっと思い出せるよ!」
ヴェノルはニコニコと皆んなに笑顔を見せる。
その様子に、マッド達は小さく笑った。
「本当、お前って楽観的なのな」
「うん。でも......ヴェノルが羨ましいな。私ももっと、あれだけ自然に元気に振る舞えたら良かったのに......」
そう言ってティミーは、自分の口を慌てて塞ぐ。
その言葉に、マッドとウォックは目を合わせた。
「やっぱり、な。ティミー、少し無理してたんだろ」
「な、何? マッド」
「とぼけんな。村を出てから妙に明る過ぎるとは思っていたが、無理してたんだろ」
「そ、そんな事......」
マッドの言葉に、ティミーは思わず肩を強張せた。
そのまま俯き、表情を悟られないように身を竦める。
その様子を気にしつつ、ウォックはマッドに続き更に言葉を繋げた。
「俺も、少し様子が気になっていたんだ。狙われている身としては、少し気が抜けているというか、緊張感が無いと言うか......。悪い意味で言っている訳では無いぞ。普通だったらもっと焦っていたり不安そうにするだろうから」
ウォックに指摘されるも、ティミーは俯いたままだ。
やはりな、と感じつつ、ウォックとマッドはティミーの言葉を待つ。
暫く沈黙が続いた後、ティミーは不安そうに口を開いた。
「本当は、物凄く不安だよ。不安で押し潰されそうな位に。ルグート村にレンが襲って来たのだって、私のせいだもの......。だから、毎日考えちゃうんだ......本当は、私がルグート村にいなければ......村長さんやマッド達は怪我しなかったし、村だってあんな風には......」
「ティミー、そんな事は」
そんな事はない。
マッドがそう言おうとした瞬間、ティミーは涙を浮かべながら声を上げた。
「マッドは分かってない! だって、私は本来ルグート村の住人じゃないもの! 私がいなければ、現にルグート村にレンは襲って来なかった筈だもの!」
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