ひだまりを求めて

空野セピ

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第六章 国家軍組織ベルトア

成立

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 「要件を戻して良いかね?」

 ラーバは咳払いすると、マッドとティミーは慌てて姿勢を正し、ラーバに視線を向ける。
 ベルスが不愉快そうな表情をしているのが気掛かりだが、マッドとティミーはなるべく気にしないようにした。

「ルグート村も、水害の被害に遭っているという報告を受けている。ルネスの町は水害でほぼ壊滅状態になったらしいな」
「ルネス......あの時の町か」

 マッドはヴェノルと出会った後に辿り着いた町を思い出した。
 町に着いた時には既に町は壊滅的な状況だった。
 
 もし、本当に天変地異や異常気象が多発しているなら──。

「このままだと、色々な町で同じ事が起こったりするのか?」

 マッドの問い掛けに、ラーバは首を縦に振る。

「可能性は大いにある。しかし、それらの原因は我々にも解明出来ていないんだ」
「どういう事だ?」

 ラーバは静かに立ち上がり、窓がある壁まで歩き、窓の外を見詰めながら静かに口を開く。

「各地で色々な事が起こっているのは事実だ。しかし、それらは突発的に起こりうる。事態が起こっている時に何かしらの力が動いているかを実際に確認する事が困難なんだ。何も見えないんだよ。根本とするモノが」
「何も、見えない......」

 ラーバの言葉に、マッド達は呆然とする。
 確かに、ルグート村の水害も、レンが引き起こしたように見えた。
 しかし、本当にレンが引き起こしたのではないのなら。

「確かに、突発的に起こったよな」
「うん。急に水が流れ込んできて......」
「根本的な物は、見えなかっただろう?」

 マッドとティミーは当時を思い返すが、確かに根本的な物は何も見ていない。
 大規模過ぎて、見えていなかっただけかもしれないが......。

「大体水害を起こす程の水を操るには国家直属陽術士でも無理な事だ。少なからず、人間にそこまでの陽力が備わっていたら、国家重要監視下人物にもなりうる」
「監視下人物って、そんな、大きな力を持っているだけでそんな事」
「野ざらしにしておくと、何をしでかすか分からないからな。そうなる前にこちらで保護する場合もある」
「保護......どうしてそんな事を」

 マッドが聞き返そうとした瞬間、ベルスが軍刀を床に刺し、大きな金属音が鳴り響く。
 ラーバとヴェイト以外の人物は、一斉にベルスを見上げた。

「今、国家重要監視下人物の話が重要か? テメェらが聞きに来た事はこんな事じゃねぇだろ」
「そ、そりゃそうだけどよ。気になるだろ。そんな人物がいるとか」
「そんなモン滅多にいやしねーよ。良いから大総統閣下の話を折るな。こっちだって忙しい中話聞いてやってんだからよ」
「よせベルス。軍刀を下げろ」

 ラーバが手を少し上げると、ベルスは舌打ちをしながら軍刀を仕舞い、面倒臭そうに溜息を吐く。
 やれやれとラーバは席に戻り、深く椅子に腰掛けるとマッド達を一人一人凝視した。

「海底都市は、リアナ海峡の真ん中付近にある。今、あの近海は魔物の巣窟になっている。たどり着く前に、お前達が魔物の餌になるやもしれんぞ」
「魔物? そんなのぶった斬れば良いに決まってるだろ」

 マッドの答えに、ラーバは目を細め小さく笑みを浮かべた。

「簡単に言ってくれるな。あの近海の巣窟は陽力を持った魔物が無限に湧いて出てくる。お前達四人だけで何が出来ると言うのだね?」
「そっ、そんなのやってみないと分からないだろ!」

 マッドは勢い良くラーバに掴みかかろうとするが、ウォックに首襟を引っ張られ、強く引き戻されてしまった。
 文句を言いたげなマッドを横に、ウォックはラーバに強い視線を送る。

「大総統閣下。ベルトア軍の管轄であれば、貴方達軍人達は何度か海底都市に出入りしている筈ですよね? それなら、どうやったら海底都市に行けるか教えて頂けませんか」
「海から行けば良かろう。お前なら出来るだろう?」
「そうでは無い。何か、海以外で海底都市に行ける方法が有るのかと聞いているのです」

 ウォックの言葉に、ラーバはニヤリと笑みを浮かべる。
 その笑みは何処か好戦的な表情に見え、ウォックは負けじとラーバを睨み返した。

「ふっ......やはり勘が良いなお前は。流石バーレスト夫妻の息子だけある」
「それはどうも」
「それに、威勢の良い奴等ばかりだ。面白いメンバーだな」

 ラーバは苦笑いしながら頭を押さえ、深く息を吐く。
 ヴェイトは呆れるようにラーバに視線を送り、目を細めて口を開いた。

「大総統閣下。客人を弄ぶのは良い加減にして頂きたいのですが。貴方の悪い癖ですよ」
「あぁ。すまない。だが、威勢が良い奴等なのは分かった。良いだろう。お前達に海底都市に行く許可を与えよう。但し、条件が」

 バン!!!!

 ラーバが話している最中に、大きな音を立てて扉が開かれる。
 ノックも無しに勢い良く開かれた扉に、その場にいる全員が視線を向ける。

「何者だ!」

 ベルスとヴェイトがラーバの前に立ち銃口を向けると、一人の女性軍人が息を切らしながらその場にへたり込んでしまった。

「だ、大総統、閣下......」
「プリム⁉︎ お前、なにして」
 
 走ってきたのか、深緑の髪が乱れていて、何度も深呼吸しながらもプリムと呼ばれた女性軍人はゆっくりと立ち上がり、何とか呼吸を整えようとした。
 突然の来客にマッド達も目を見開き、プリムに視線を向ける。

「な、何だぁ?」
「さ、さぁ。でも、何か急いで来た感じがするね」

 マッドとティミーは不思議そうに顔を見合わせると、プリムは慌ててベルスとヴェイトの前に走って行き、ヴェイトの軍服を乱暴に掴んだ。

「お、おい、どうしたプリム。そんなに顔色を悪くして。良くここまで迷子にならなかったな」
「はっは~ん。さてはお前、また装置を爆発させたな?」

 ヴェイトは心配そうに、ベルスは意地悪っぽく笑うと、プリムは首を大きく横に振り、蒼白い顔で不安そうに青の瞳を揺らしながら大きく口を開いた。

「大変なんです! 隣町サーヴァに、巨大な魔物が二匹も入り込んだんです! 町はパニックになっていて、死傷者も出ています! 至急、応援要請が必要です! 誰か、急いで応援に来て下さい!」
 
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