無能と追放された俺、死にかけて覚醒した古代秘術を極めて最強になる

仲山悠仁

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1章 追放

08 森の異変

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森の空気が、急に冷たくなった気がした。

「……止まりなさい」

フレアが小さく手を上げる。
声は落ち着いているようで、わずかに震えていた。

俺は言われた通り足を止め、周囲を見渡す。

ガサッ。

茂みが揺れた瞬間、灰色の影が飛び出した。

「えっ……!? グレイウルフ……!」

鋭い牙。
黄色い瞳。
筋肉の張った四肢。

Eランク冒険者でも油断すれば死ぬ魔物だ。

フレアは一歩前に出て剣を構える。
構えは綺麗だが、肩がわずかに強張っている。

(……大丈夫。訓練通りにやれば倒せる……落ち着け……)

自分に言い聞かせるように息を整えた。

グレイウルフが地を蹴り、フレアへ飛びかかる。

金属がぶつかる音が響いた。

「くっ……!」

押し込まれながらも、フレアは必死に踏ん張る。
というより、
訓練で覚えた動きを必死に再現している――そんな感じだった。

そのとき。

ガサッ、ガサガサッ……!

背後の茂みが、次々と揺れ始めた。

「……嘘でしょ……」

フレアの顔が青ざめる。

「2……3……4……5……!?
 5匹……!?
 こんな浅い場所にグレイウルフの群なんて……ありえない……!」

「そんなに珍しいのか?」

フレアは唇を噛んだ。

「珍しいどころじゃないわ。
 グレイウルフは本来、森の奥に縄張りを作る魔物よ。
 浅い場所に群れで出るなんて……森で何か異変が起きてるんだわ……」

その言葉に、胸の奥がざわつく。

(……森で何かが起きている?)

考える暇もなく、2匹目のグレイウルフが飛びかかってきた。

狙いは――俺。

「避けてっ!!」

フレアの叫びが響く。

牙が俺の喉元へ迫る。

その瞬間、世界がゆっくりになった。
ブラッドベアを倒したあの時と同じだ。

風の流れ。
筋肉の動き。
牙の軌道。

全部が、はっきり見える。

(……ああ、見える)

気づけば、剣を振り上げていた。

――次の瞬間、
グレイウルフは血を噴き出し、地面に崩れ落ちた。

「……え?」

フレアが目を見開く。

俺は自分の剣を見つめた。
一瞬すぎて、自分でも理解が追いつかない。

残りの3匹が、低く唸りながら包囲してくる。

フレアは息を整え、俺の隣に立った。
手は震えているが、目は逃げていない。

「……アレックス。
 さっきの動き……どうやったの?」

「なんでこんなに動けるのか、自分でもよくわからないんだ……」

フレアは一瞬だけ俺を見て、すぐ前を向いた。

「……後で聞くわ。
 今は、2人で生き残ることだけを考えるわよ」

声は震えていたが、
その背中は確かに頼もしかった。

3匹のグレイウルフが同時に飛びかかる。

森の浅い場所で起きた異常な遭遇。
その裏に潜む“何か”を、
このときの俺たちはまだ知らなかった。

(……さっきの感覚。
 見えた瞬間、どう動けばいいか分かった……気がする)

胸の奥に、説明できないざわつきだけが残っていた。

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