Game of the KILLER QUEEN

南蛮 義卿

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紳士淑女の皆様へ

2年

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そこは王都中央の貴族や金持ちが住む区画。かつての繁栄の面影がまだ薄く残っている。我が物顔で歩いていた貴族らは現実から目を背け、恐怖に家に閉じこもるか、薬で夢の続きを見るか、
そんな夢見心地な人々の間を颯爽と1人の男は歩いていた。その足取りはしっかりとしていて、紺色のスーツはシワ1つ無い。ネクタイはナイフとフォークが切り結ぶような形で配置されている少し派手なもの。
大きなバッグを抱え、1つの家の前に立つとドアノッカーを叩き、白い手紙を見せる。
貴族らの家は基本魔法による施錠がされていて、招待状無しに入ることはできないのだ。
彼は家に入ると居間では無くキッチンに向かい、オーブントースターを開けると中に黒い手紙を入れ、タイマーを11に合わせる。するとグニャリと空間が歪み、次の瞬間には一本道になっていた。道なりに歩くと、そこには豪勢なサロンが広がっていた。

「やあ、イレブンシェフ。少し遅かったね。」

「申し訳ないファーストキラークイーンいつもの道に憲兵がいてね、少し遠回りをしてしまった。
ところで熟女の肉を使ったクリームシチューなんてどうだい?柔らかさの中に少し癖があってこれがまた、、、」

「分かった落ち着け、後で聞くとするよ。」

そう言うとキラークイーンと呼ばれた女性はパンと手を叩くと

「じゃあ定例会始めようぜい。」

軽い口調でそう言った。
12人の男女がワインを掲げ、乾杯をする。
その後全員談笑を始める。誰も彼もが禁忌を謳歌し楽しむ。
誰もこの光景を見ても彼らが殺人、拷問、食人を行っているとは思うまい。
ある者はを、ある者は新しいを、またある者はを。
この倶楽部は皮肉なことにこの国最後の文明人の社交場であった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

青年が歩いていた。
革製のブーツで荒れ果てた石畳の床を踏みしめ、血で汚れた黒のマントを翻す。
亮介にかつての活気は無く、目だけが爛々と光っている。
顔についた返り血を拭おうともせずただ黙々と歩く。
血と錆で汚れた剣はまともに手入れされていない。
彼の後ろには5人の同じく黒いマントを着た憲兵が疲労困憊の様子で彼に何とかついて行こうとしている。
彼はこの2年で最上位狩人になった。
2年の間憲兵団という組織もある程度の変革が為された。
魔獣や犯罪戦争など日夜戦闘状態の憲兵は兵の消耗が激しい。
そのくせ兵の補給は出来ないので消耗するだけである。
新兵の消耗を減らすことが必要になったのは必然であった。
即ち効率では無く安全性が必要とされたのだ。

黒馬倶楽部と自称する殺人集団に王都は2年と経たずその煌びやかな鎧を着けた膝を屈した。
かつて知識人と技術者、商人らによって文字通り世界の中心であった王都は今やその名残すら残らず。
後に残ったのは薬と性欲、粗悪な密造酒そして狂気である。
繁栄の象徴であった歴代王の石像は下品な落書きに塗れ、外を出歩くのは薬中トリップしてる奴らか浮浪者。
平和主義の連中は仲良く串刺しにされ、
怪しげな宗教や実験やら長い年月を掛けて作られてきた倫理は2年で忘れ去られたようだ。
王国が崩壊したのは黒馬倶楽部の発足(と推測される)日から僅か2年だった。
最初に王が家臣らにスープの具材として振る舞われた。
次に決定権を持つ大貴族らの謀反や行方不明、殺害が相次ぎ、最後に残った王家も滅ぼされ、国は指導者を失った。
周辺諸国は劇物を孕んだ王国に触れようともせず、結果ちっぽけな領主達による国取り合戦が起こった。かつて周辺の侵略者から国を守護した壁は人々を囲む檻へとその役目を変え、かつて太陽の国と呼ばれた王国は鉄血の止まぬ国となった。
憲兵団はそんな狂騒に秩序を与えんと奔走する最後の元公的機関だ。
魔獣、犯罪、そして元凶黒馬倶楽部

それでも戦うんだ。キラークイーンを殺す為に。亮介は疲れ切った頭でぼんやりと考えていた。大切な人の記憶も既に靄がかかり始めている。
「お前らは何の為に戦うんだ。」
亮介は新兵らにそう尋ねたことがある。
国を取り戻したい、秩序をもたらす、正義。誰も彼もが上っ面の理想を声高に叫んだ。そんなものは永久にこの場所には戻らないだろう。
ここは仏教で言う修羅道だ。
ひたすらに目的もなく戦う。目的なんてものは夢物語に過ぎない。きっとその目的とやらが達成された時は達成者以外全員が屍になった時だけだろう。
分かっているさ。俺達は亡者に踊らされているんだってことくらい。
それでも光は戻らない。黒い炎は消える気配が無い。だがいつかこの炎に焼かれようとも、俺はこの炎を手放そうとは考えられない。この炎が俺が生きる目的なのだから。
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