10 / 10
紳士淑女の皆様へ
実験
しおりを挟む
白衣姿の女性と男女1人ずつの子供が歩いている。彼女らは隠し扉から地下への階段を降りていく。
子供らは彼女に懐いているように見え、彼女もまた母親のような顔持ちであった。
彼女と子供達はとある部屋に入っていく。
そこは何かの実験場のようだった。周りには何に使うのか分からない機械がゴウンゴウンと音を立て、大きなパソコンには絶えずデータが送信されている。
「実験記録No.2088」「精神喪失の回避について3」「精神性の結合による合成実験」そのような題名が多くを占めている。
子供は無邪気な目で
「お母さん、これなあに?」
などと彼女に聞いている。彼女は曖昧にそれらの疑問に応えながら壁際まで歩いていく。
「お母さん、どこに行くの?」
「とっても素敵な場所よ、お母さんの職場なの。」
そう言いながら彼女は壁際のボタンを押す。
ガコンと何かが外れる音がして部屋全体が下に降りていく。
やがてプシューと空気の抜けるような音と共にゆっくりと止まった。
子供らは素敵な場所に心躍らせ、一目散にエレベーターから出る。
そこには幾つものガラスケースがあった。
「何これ?」
少年はガラスの1つに顔をくっつけ、中を見た。無数の刺。人の全身からハリネズミのように生えている。恐怖のあまり少年はその場にへたり込む。
強化ガラスの奥には、顔から百足が生えている人間や体から昆虫の足が突き出ている人間、昆虫と同じ身体構造を持った人間、中には昆虫ですらない奇妙な肉の塊もあった。おおよそ子らが想像した夢の場所にいる存在とは最もかけ離れた者で溢れている。
「お母さん!?これ!これぇ!?」
「ああ、この子は失敗しちゃったの。」
そう言うと彼女は肉塊を格納しているガラスケースに付いている赤のボタンを押した。底が抜け、塊は地下へと落ちていく。
「ママ、ここ何?」
恐怖を顔に貼り付け少女が聞く。
「ここは夢の実験場よ。」
彼女は優しい笑顔で教える。彼女の白い肌はこの血と淀みの場所では一層映えるようだ。子供らの表情は固まり、今までの信用は急速に減って行く。
「大丈夫よ、そんな怖い顔しなくても。
貴方達は未来を背負う子供達の1員になるの。人よりも長く生きて、人よりも早く動いて、人よりも強靭な命を得るの。」
「こんな化け物になりたくない!!私は嫌っ!!」
そう叫ぶと少女は逃げ出す。
何度も倒れ、這いずりながらも女性が押した壁際のボタンに向かってはっていった。
周りの化け物共がガラスの向こうから
「ヘアァァああ!$€#3%%♪☆〆〆!!」
などと意味の分からない奇声を上げる。
その異形を強化ガラスにベッタリと張り付け逃げる子供に視線を向けている。
少女はスイッチのあった壁まで走ってきた。そして今更ながら気付いた、届かない、と。
「あ、ああああ!!」
少女は崩れ落ちた。そして失禁した。
コツコツとハイヒールの音が近づいてくる。
「貴方は逃げられないわ、ユナ。」
彼女は子が失禁し、作った水溜りに膝をつくと動けない子をギュッと抱きしめた。慈愛、彼女は子供達を愛している。彼女にとって子は自らの理解者であると同時に被験者でもあるのだ。
自分が狂っているとは知らぬ。
人と違う事が分からない。それを知るにはあまりに彼女は人と関わりを持たなかった。
「心配しなくても貴方はこの研究の素晴らしさを直ぐに理解できるわ。その身を持ってね。さっ、行きましょうか。」
少女は既に声すら上げず、抵抗もせずに彼女に抱きかかえられる。
3人は研究施設の奥に入った。大きなタンスのような形の機械が置いてある。彼女はその近くのベッドに2人を寝かせた。
「アレン、カブトムシは好き?そう、じゃあカブトムシを繋げてあげる。」
「ユナは、、、そうね希望がないみたいだし私が見繕うわ。」
タッチパネルのようなものを操作すると大きな機械から無数の腕が出てくる。
注射器、メス、謎のチューブ。多種多様な道具がその手には握られている。
これから痛みすら感じず、子らが気付いた時にはもう人では無くなっているのだ。漠然とした恐怖に苛まれながらも目蓋をゆっくりと閉じた。
もう人の夢は見ない。見るのは終わらない地獄だけだろう。
子供らは彼女に懐いているように見え、彼女もまた母親のような顔持ちであった。
彼女と子供達はとある部屋に入っていく。
そこは何かの実験場のようだった。周りには何に使うのか分からない機械がゴウンゴウンと音を立て、大きなパソコンには絶えずデータが送信されている。
「実験記録No.2088」「精神喪失の回避について3」「精神性の結合による合成実験」そのような題名が多くを占めている。
子供は無邪気な目で
「お母さん、これなあに?」
などと彼女に聞いている。彼女は曖昧にそれらの疑問に応えながら壁際まで歩いていく。
「お母さん、どこに行くの?」
「とっても素敵な場所よ、お母さんの職場なの。」
そう言いながら彼女は壁際のボタンを押す。
ガコンと何かが外れる音がして部屋全体が下に降りていく。
やがてプシューと空気の抜けるような音と共にゆっくりと止まった。
子供らは素敵な場所に心躍らせ、一目散にエレベーターから出る。
そこには幾つものガラスケースがあった。
「何これ?」
少年はガラスの1つに顔をくっつけ、中を見た。無数の刺。人の全身からハリネズミのように生えている。恐怖のあまり少年はその場にへたり込む。
強化ガラスの奥には、顔から百足が生えている人間や体から昆虫の足が突き出ている人間、昆虫と同じ身体構造を持った人間、中には昆虫ですらない奇妙な肉の塊もあった。おおよそ子らが想像した夢の場所にいる存在とは最もかけ離れた者で溢れている。
「お母さん!?これ!これぇ!?」
「ああ、この子は失敗しちゃったの。」
そう言うと彼女は肉塊を格納しているガラスケースに付いている赤のボタンを押した。底が抜け、塊は地下へと落ちていく。
「ママ、ここ何?」
恐怖を顔に貼り付け少女が聞く。
「ここは夢の実験場よ。」
彼女は優しい笑顔で教える。彼女の白い肌はこの血と淀みの場所では一層映えるようだ。子供らの表情は固まり、今までの信用は急速に減って行く。
「大丈夫よ、そんな怖い顔しなくても。
貴方達は未来を背負う子供達の1員になるの。人よりも長く生きて、人よりも早く動いて、人よりも強靭な命を得るの。」
「こんな化け物になりたくない!!私は嫌っ!!」
そう叫ぶと少女は逃げ出す。
何度も倒れ、這いずりながらも女性が押した壁際のボタンに向かってはっていった。
周りの化け物共がガラスの向こうから
「ヘアァァああ!$€#3%%♪☆〆〆!!」
などと意味の分からない奇声を上げる。
その異形を強化ガラスにベッタリと張り付け逃げる子供に視線を向けている。
少女はスイッチのあった壁まで走ってきた。そして今更ながら気付いた、届かない、と。
「あ、ああああ!!」
少女は崩れ落ちた。そして失禁した。
コツコツとハイヒールの音が近づいてくる。
「貴方は逃げられないわ、ユナ。」
彼女は子が失禁し、作った水溜りに膝をつくと動けない子をギュッと抱きしめた。慈愛、彼女は子供達を愛している。彼女にとって子は自らの理解者であると同時に被験者でもあるのだ。
自分が狂っているとは知らぬ。
人と違う事が分からない。それを知るにはあまりに彼女は人と関わりを持たなかった。
「心配しなくても貴方はこの研究の素晴らしさを直ぐに理解できるわ。その身を持ってね。さっ、行きましょうか。」
少女は既に声すら上げず、抵抗もせずに彼女に抱きかかえられる。
3人は研究施設の奥に入った。大きなタンスのような形の機械が置いてある。彼女はその近くのベッドに2人を寝かせた。
「アレン、カブトムシは好き?そう、じゃあカブトムシを繋げてあげる。」
「ユナは、、、そうね希望がないみたいだし私が見繕うわ。」
タッチパネルのようなものを操作すると大きな機械から無数の腕が出てくる。
注射器、メス、謎のチューブ。多種多様な道具がその手には握られている。
これから痛みすら感じず、子らが気付いた時にはもう人では無くなっているのだ。漠然とした恐怖に苛まれながらも目蓋をゆっくりと閉じた。
もう人の夢は見ない。見るのは終わらない地獄だけだろう。
10
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる