君の名前

あや

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君の名前

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 退屈な日常は人の感情を殺すと思う。

 事実、僕は会社と家のルーティンという変わりばえのない日々を過ごしているが、最近笑ったり、怒ったり、泣いたりと、感情を表に出すことがめっきり減ったと思う。
 数少ない友人だっているし、家族だって優しい

 自慢じゃないが彼女も居たことがある。しかし30代も半ば、人生の3分の1以上は過ぎたであろう年月を過ごしたが、僕の人生は退屈だと薄々感じていた

 ドラマティックな展開も、映画のような出会いも、ハラハラドキドキするような戦いがあるわけでもない

 僕のような人間は新作のゲームの発売日や給料日に思いを馳せ、人生に少しのアクセントをつけるだけで精一杯だ

 だけどもそれは最近までの話

 1カ月ほど前の夜、僕がいつも通り家の近くのコンビニで買い物していたとき彼女に出会って変わった

 きっかけは彼女が落とした財布を拾った所から始まる

 財布が落ちている場所が誰もいないような場所なら話しも変わるかもしれないが、目の前で落としたのなら僕も人間だ、流石に声を掛けた

 その日は彼女から礼を言ってもらい、特に何も無く家路についた

 退屈な人生の中でこのような出来事は稀なので、僕も良い事をしたなと、家に帰るまでの道のりで少し誇らしげだったのは覚えてる
 その次の日、また同じコンビニで彼女を見かけた

 彼女も僕の存在に気付いたらしく、お互い少しはに噛みながら会釈をした

 彼女の愛嬌のある笑顔に、年甲斐も無く少しキュンとしてしまった

 それからというもの、彼女とは度々コンビニで出会い、世間話ぐらいはする仲になった

 そんなに長く話すわけではないが、最近肌寒いですね、なんて他の人とするとどうでもいいような話でも彼女とだととても楽しいものだ、僕のつまらなかった人生に少し彩りが出てきたのだ

 今日も変わらずアラームで目覚める

 眠い目を擦り、ほぼ無意識にテレビをつけながら朝のコーヒーを啜る

 仕事に行くのがだるいなと毎日変わらず思っている事を考えながら朝の身支度を済ましていると、テレビの方からは自殺がどうだの、どこで殺人があっただの朝が気分が悪くなるようなニュースがやっている

 言っては悪いが所詮人ごとだし、僕には関係もないのですぐに目を逸らし身支度を再開する

 今日も彼女に会えるのかと思うと少し気分も上がってくる

 まるで学生時代のような恋をしている自分に少し照れながら会社に向かった

 その日の夜もいつものようにコンビニで買い物をしていたが、今日は彼女の姿は見えない

 少し残念だが彼女だって人間、来ない日ぐらいあるだろうと思いつつ、明日は会えるといいななんて考えながら帰る

 そういえばばそろそろ出会ってから一月も経つのに彼女の名前も連絡先も知らない
次に話した時に聞いてみよう

 そのままデートなんかに誘っちゃたりして、なんて妄想も膨らみ、人生に楽しみを見つけた事を喜びながら僕は家に向かった
しかし、それから彼女と出会う事はなかった

 引っ越したとか、違うコンビニに行っているとか色々理由は考えられるが、とにかく残念だ

 告白してもないのに振られた気分になり勝手に落ち込んでいたがしょうがない

 友達に話すネタでもできたと思いながらぼくは、またいつもと変わらぬ日常に戻っていった
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