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お祭り
しおりを挟む空から音が聞こえる。
それは意識していなくても勝手に耳に侵入してきて、僕の鼓膜を占領する。
その時だけは、周りの話し声も、賑やかな太鼓の音色も聞こえなくなる。
わたあめを片手に、田舎なのにまるで都会のように明るい賑やかな道を歩きながらその音を聞くと、今年もこの季節がやってきた事を実感するのだ。
普段は見れない浴衣姿の彼女と並んで歩けるこの日は、僕にとっても、彼女にとっても大事な日に違いない。
「次はなんの出店に行こっか?」
そう言いながら無邪気に笑う君は、このお祭りのどんな明かりよりも眩しかった。
「ダイエットするって言ってなかったっけ?」
そう少しばかり揶揄う。
「もう、意地悪言わないでよ。今日はいいの!」
少し不機嫌になった彼女を見て僕も笑う。周りの賑やかさも少し増したような気がした。
「こうやって二人で地元のお祭りにくるのも最後かな」
彼女が寂しそうに呟く。僕は高校を卒業したら上京する予定だ。
「お盆には帰ってくると思うから、そうしたらまた一緒にこれるよ」
「東京が楽しくて帰ってこないかもね」
彼女がさっきの仕返しとばかりにそう言った。
「可愛い彼女が待ってるんだから絶対帰ってくるよ」
「そうだと言いけど!」
こんなたわいもない会話をしているうちにも、空の上では様々な色の花火が上がっては消えてを繰り返していた。
「綺麗だね」
「そうだね」
先程までとは打って変わって口数が減った二人。
「好きだよ」
「僕もだよ」
いつの間にか繋いでいた手の力を少し強めて、また歩き出す。
「好きだよ」
「知ってるよ」
彼女の声は小さく、掠れていたのに、周りが静寂に包まれているかのように鮮明に聞こえた。
18の夏。
また空に花火が上がった。
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