Dark past

sasanoha

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 あの日、人が………
 目の前で、燃えて…その周りの建物も、物も、全部…
 焦げていた…





 「また思い出した…最悪だ。」
 仕事をしていると、ふと頭に浮かぶ、あの記憶。思い出す度、後悔と罪悪感が込み上げて、仕事どころではなくなってしまう。
 「まあ…いつまでも苦しんでる場合じゃないよな。やっぱり。」
 俺はこうなったら、とりあえず開き直るようにしている。過去なんてどうせ過ぎ去ったものだ、今更後悔しても意味は無い、と。


 「それにしても…まあ無惨にやられたな、可哀想に…」


 目の前には、死体。
 ここは、とある事件の現場。俺はその処理をする人間だ。
 「とんでもねぇ顔してんな…」
 そう呟く。そして、顔に布を被せて体を運ぶ。
 この仕事も慣れたものだ。最初こそ躊躇ったが、そこまで体力的にしんどいって訳でもないし、死体も…
匂いはキツいが、心が痛むことはあまりなくなった。

 「じゃあな」
 この死体ともお別れだ。火の中に投げ入れ、骨の髄まで燃え尽きたことを確認するまで、俺はずっと寄り添ってやる。

 「遺族も可哀想だ…まあ、こんな事しちまったからな。なるべく悔いなく逝ってくれ。」


 「もう終わった?」
 「まだだ。まだ証拠が残ってる」
 「えー…もういいよ。そんな謎の信念通さなくたって…時間の無駄だよ。」

 「ダメだ。最後の最後まで見届けてやった方が…」
 「いーや、もうそんな犯罪者に慈悲なんて与える方がダメ。」

 俺が︎処理してやったこの死体は、かつて人を殺した、殺人犯の死体だ。

 「人を何人も殺して…そして、何も感じないでのうのうと生きてるなんて、慈悲を与える隙なんてないでしょ?」

 「でも、きっと何か後悔とか、罪悪感とか感じてるはずだ。そういう感情は大切にしてやりたい」

 「……そっか。やっぱ、優しいよね、魁斗って。」

 「…そんなことは、ありえない。」

 「少なくとも、私よりかはずっと。」


 俺たちは復讐屋だ。依頼を受けて、業に対して相応の報いを受けさせる。
 いじめならいじめ、浮気だったら浮気、詐欺だったら詐欺…
 殺人なら死。

 この仕事で俺たちは生きていられる。俺も、不死身のこいつも……

 「…また、なにか悪い夢でも見たの?」

 こいつは西崎という。マフラーが大好き。

 「いや。特に何もなかったが?」

 「そっか。それなら安心。」


 「…やっぱり、思い出してないんだな…………」




 そう呟いて、今日は帰った。
 また明日の、仕事の為に。
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