Dark past

sasanoha

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 また、あの記憶が蘇ってきた。

 気がつくと、自分は火で囲まれて、逃げられない。

 目の前で、人が焼けている。

 自分はそれを見て……安心しているんだ。

 不思議で、奇妙で、訳が分からないが……

 確かに、俺が覚えていることだ。



 「西崎……………………」


 ……暗い。

 ここはどこだ?
 やけに暗い。床は冷たく、この空間が寒い。
 周囲に物はほとんど無く、俺か今座っている椅子と、目の前に比較的小さな机が一つ、そして椅子がもう一脚、置いてある。別に拘束されている訳ではない。だが、立って周りを確認する気力が無い。

 俺はさっき……いや…昨日?もっと前か?
 首を掴まれて、それで……

 それにしても、こんなにも暗いのに、自分の姿だけははっきりと見ることが出来る。環境光がない。よくよく考えたらおかしい。ここは地球では無いのか?

 そして、なんだか、やけに落ち着くような………

 「あれ、やっと目覚めた?」

 誰だ?
 いや……知っている人間だ。

 「…もしかして、まさか」

 「久しぶり。魁斗君」

 まさか出会うことになろうとは思わなかった。

 嘉寺 盟奈。よく覚えている。

 「ま、まあ……2年振りだな。」

 「そんな固くならないで?とりあえず落ち着きましょう。お茶でも飲む?」

 彼女はそういうと、もっているカップをそこに置いた。

 「なんか変なもの入ってないだろうな?」

 「そんな、入れるわけないでしょう?」

 「まあ、そうだよな」

 どうやら本当に入っていないようだ。彼女は本当のことを言っている。

 しかし当然、こんなところで茶でも飲める訳がない。

 「別に、茶出してくれるのはいいんだが、やっぱり…」

 「全然構わないわ。」

 察してくれたようだ。

 「私、魁斗君に謝りたい事があって」

 「謝りたいこと?」

 「…2年前の事、思い出してくれるかしら?」

 「2年前か…まあ、あまり忘れてはいないが。」

 「それは良かったわ。あの時は本当にごめんなさい。」

 「…少し、記憶が曖昧なんだが……」

 「いや、いいの。思い出さなくても。やっぱり、こんな暗い場所で嫌な話したら、もっと暗くなるものね。」

 嘉寺はどこかよそよそしい。それほどとんでもない事なのか?2年前の事っていうのは。


………今、心を読んでみたが、俺の記憶にはないことだ。
 しかし、どこか頭にチラつくような…
 もう少しで思い出せそうなんだが。

 「すまないが、全く何のことか分からない。」

 「え、本当に?なんだか不思議ね。あの事を忘れるなんて。」

 「あの事?」

 「あんまり、話したくはないけれど…聞きたいかしら?」

 「俺をここに連れてきたのは、それが目的じゃないのか?」

 「……後悔、してしまいそうで」

 後悔。口からその言葉が飛んでくる程、とてつもない禁忌に手を出していたのか?


 あの火事。あの幻は…何があって、燃えたのか…

 「それでもいい。」

 「分かったわ。話をしましょう。」

 そういって、嘉寺は目の前の椅子に座った。
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