7 / 7
#4_1
しおりを挟むまた、あの記憶が蘇ってきた。
気がつくと、自分は火で囲まれて、逃げられない。
目の前で、人が焼けている。
自分はそれを見て……安心しているんだ。
不思議で、奇妙で、訳が分からないが……
確かに、俺が覚えていることだ。
「西崎……………………」
……暗い。
ここはどこだ?
やけに暗い。床は冷たく、この空間が寒い。
周囲に物はほとんど無く、俺か今座っている椅子と、目の前に比較的小さな机が一つ、そして椅子がもう一脚、置いてある。別に拘束されている訳ではない。だが、立って周りを確認する気力が無い。
俺はさっき……いや…昨日?もっと前か?
首を掴まれて、それで……
それにしても、こんなにも暗いのに、自分の姿だけははっきりと見ることが出来る。環境光がない。よくよく考えたらおかしい。ここは地球では無いのか?
そして、なんだか、やけに落ち着くような………
「あれ、やっと目覚めた?」
誰だ?
いや……知っている人間だ。
「…もしかして、まさか」
「久しぶり。魁斗君」
まさか出会うことになろうとは思わなかった。
嘉寺 盟奈。よく覚えている。
「ま、まあ……2年振りだな。」
「そんな固くならないで?とりあえず落ち着きましょう。お茶でも飲む?」
彼女はそういうと、もっているカップをそこに置いた。
「なんか変なもの入ってないだろうな?」
「そんな、入れるわけないでしょう?」
「まあ、そうだよな」
どうやら本当に入っていないようだ。彼女は本当のことを言っている。
しかし当然、こんなところで茶でも飲める訳がない。
「別に、茶出してくれるのはいいんだが、やっぱり…」
「全然構わないわ。」
察してくれたようだ。
「私、魁斗君に謝りたい事があって」
「謝りたいこと?」
「…2年前の事、思い出してくれるかしら?」
「2年前か…まあ、あまり忘れてはいないが。」
「それは良かったわ。あの時は本当にごめんなさい。」
「…少し、記憶が曖昧なんだが……」
「いや、いいの。思い出さなくても。やっぱり、こんな暗い場所で嫌な話したら、もっと暗くなるものね。」
嘉寺はどこかよそよそしい。それほどとんでもない事なのか?2年前の事っていうのは。
………今、心を読んでみたが、俺の記憶にはないことだ。
しかし、どこか頭にチラつくような…
もう少しで思い出せそうなんだが。
「すまないが、全く何のことか分からない。」
「え、本当に?なんだか不思議ね。あの事を忘れるなんて。」
「あの事?」
「あんまり、話したくはないけれど…聞きたいかしら?」
「俺をここに連れてきたのは、それが目的じゃないのか?」
「……後悔、してしまいそうで」
後悔。口からその言葉が飛んでくる程、とてつもない禁忌に手を出していたのか?
あの火事。あの幻は…何があって、燃えたのか…
「それでもいい。」
「分かったわ。話をしましょう。」
そういって、嘉寺は目の前の椅子に座った。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる