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#4_1
しおりを挟むまた、あの記憶が蘇ってきた。
気がつくと、自分は火で囲まれて、逃げられない。
目の前で、人が焼けている。
自分はそれを見て……安心しているんだ。
不思議で、奇妙で、訳が分からないが……
確かに、俺が覚えていることだ。
「西崎……………………」
……暗い。
ここはどこだ?
やけに暗い。床は冷たく、この空間が寒い。
周囲に物はほとんど無く、俺か今座っている椅子と、目の前に比較的小さな机が一つ、そして椅子がもう一脚、置いてある。別に拘束されている訳ではない。だが、立って周りを確認する気力が無い。
俺はさっき……いや…昨日?もっと前か?
首を掴まれて、それで……
それにしても、こんなにも暗いのに、自分の姿だけははっきりと見ることが出来る。環境光がない。よくよく考えたらおかしい。ここは地球では無いのか?
そして、なんだか、やけに落ち着くような………
「あれ、やっと目覚めた?」
誰だ?
いや……知っている人間だ。
「…もしかして、まさか」
「久しぶり。魁斗君」
まさか出会うことになろうとは思わなかった。
嘉寺 盟奈。よく覚えている。
「ま、まあ……2年振りだな。」
「そんな固くならないで?とりあえず落ち着きましょう。お茶でも飲む?」
彼女はそういうと、もっているカップをそこに置いた。
「なんか変なもの入ってないだろうな?」
「そんな、入れるわけないでしょう?」
「まあ、そうだよな」
どうやら本当に入っていないようだ。彼女は本当のことを言っている。
しかし当然、こんなところで茶でも飲める訳がない。
「別に、茶出してくれるのはいいんだが、やっぱり…」
「全然構わないわ。」
察してくれたようだ。
「私、魁斗君に謝りたい事があって」
「謝りたいこと?」
「…2年前の事、思い出してくれるかしら?」
「2年前か…まあ、あまり忘れてはいないが。」
「それは良かったわ。あの時は本当にごめんなさい。」
「…少し、記憶が曖昧なんだが……」
「いや、いいの。思い出さなくても。やっぱり、こんな暗い場所で嫌な話したら、もっと暗くなるものね。」
嘉寺はどこかよそよそしい。それほどとんでもない事なのか?2年前の事っていうのは。
………今、心を読んでみたが、俺の記憶にはないことだ。
しかし、どこか頭にチラつくような…
もう少しで思い出せそうなんだが。
「すまないが、全く何のことか分からない。」
「え、本当に?なんだか不思議ね。あの事を忘れるなんて。」
「あの事?」
「あんまり、話したくはないけれど…聞きたいかしら?」
「俺をここに連れてきたのは、それが目的じゃないのか?」
「……後悔、してしまいそうで」
後悔。口からその言葉が飛んでくる程、とてつもない禁忌に手を出していたのか?
あの火事。あの幻は…何があって、燃えたのか…
「それでもいい。」
「分かったわ。話をしましょう。」
そういって、嘉寺は目の前の椅子に座った。
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