婚約破棄したくない王子様は護衛騎士を溺愛する

Matcha45

文字の大きさ
1 / 10

突然

しおりを挟む
「我が名は、王の名代で参った宰相のベンジャミンと申す。今から読み上げる文章は、王命である。心して聞くように」

「……」

 私は実家に里帰りした際、偶然居合わせた関係で、父様と母様の隣で頭を垂れて宰相閣下の話を聞いていた。

「我が息子、第3王子のギルバード・シュテファンをクラウド侯爵家が3男、ジョゼフ・クラウドの婚約者とする」

「え……。私ですか?」

 宰相閣下は、こちらを睨むと「何か異議があるのかね?」と言った。

「いえ、その──私は男ですよ?」

「存じておる」

「これ、口を慎みなさい」

 父に窘められて、私はそれ以上の事を何も聞けなかった。

「以上だ。荷物をまとめて明日、登城するように」

「え、明日ですか? 明日は護衛の仕事が……」

「心配ない。城での護衛は、配置換えを伝えてある。明日、昼までに登城するように。では、失礼する」

 宰相閣下は、もうこれ以上ここにいる用はないといった感じで、入口から出ていった。父と母は呆然とした様子で、立ち尽くしている。

「何と言うことだ……」

 我に返った父が、頭を抱えながら近くにあるソファへ座った。

「何も聞いていなかったのですか?」

「当たり前だ。普通は根回しとかがあるはずなのだが……」

「ジョゼフ、貴方はなにか聞いていないのですか?」

 母の言葉に、私は首を横に振った。

「私は、何も……」

「一体、どういうことなんだ?」

 父は完全に混乱しているようだった。母は父の傍に来て、手を握っている。

「ジョゼフ、ギルバート殿下と面識はあるのか?」

「昨年、仕事で……。怪我をした騎士の代わりに3ヵ月間、ギルバート殿下の元で護衛をしておりました」

「それで恋仲に?」

「いえ、そんな関係では──でも、とても気さくな方でしたよ」

「……その時に、気に入られたのか?」

「たぶん、何かの間違いではないかと……」

「‥‥‥」

 父と母は顔を見合わせると、憐れむような目で私を見た。

「彼には、『男色家』という噂がある。逃げるなら、今だと思うが──どうする? もし、どうしても嫌ならば、他国へ逃がすことくらいは出来ると思うが……。申し訳ないが、それくらいの事しか今の私には出来ない」

 父が申し訳なさそうに項垂れていた。王命に背いたら、侯爵家は取り潰しになる可能性もなくはない。そんな苦労を父と母にさせるわけにはいかなかった。

「いえ、何かの間違いだと思います。婚約ですし、殿下と話し合ってみます」

「そうか……」

 父は渋面を作っていたが、ため息をつくと母と一緒に部屋へ戻っていった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。抱かれたら身代わりがばれてしまうので初夜は断固拒否します!

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。 しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです… 本当の花嫁じゃないとばれたら大変! だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり
BL
 帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。  着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。  凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。  撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。  帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。  独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。  甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。  ※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。 ★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!

魔王になんてぜったいなりません!!

135
BL
僕の名前はニール。王宮魔術師の一人だ。 第三騎士団長のケルヴィン様に一途な愛を捧げる十六歳。 僕の住むラント国に異世界からの渡り人がやってきて、僕の世界は変わった。 予知夢のようなものを見た時、僕はこの世界を亡ぼす魔王として君臨していた。 魔王になんてぜったいなりません!! 僕は、ラント国から逃げ出した。 渡り人はスパイス程度で物語には絡んできません。 攻め(→→→→→)←←受けみたいな勘違い話です。 完成しているので、確認でき次第上げていきます。二万五千字程です。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

『偽物の番』だと捨てられた不憫な第三王子、隣国の冷徹皇帝に拾われて真実の愛を教え込まれる

レイ
BL
「出来損ない」と捨てられた場所は、私の居場所ではありませんでした。 ラングリス王国の第三王子・フィオーレは、王族の証である『聖種の紋様』が現れなかったことで「偽物の番」と罵られ、雪降る国境へと追放される。 死を覚悟した彼の前に現れたのは、隣国アイゼン帝国の「冷徹皇帝」ヴォルフラムだった。

処理中です...